超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

自己はどのように脳をコントロールするか

2006-10-20 | 読書ガイド
節目の50番目は、18番に続いて2人目のノーベル賞受賞学者の著書。

●ジョン・エックルス『自己はどのように脳をコントロールするか』
 大野忠雄/齋藤基一郎訳、シュプリンガー・フェアラーク東京(1998)

エックルスは大脳生理学者で1963年のノーベル医学生理学賞を、神経
細胞の抑制性結合の発見で受賞した。1997年に94歳で亡くなるのだが、
本書は最後の著作。

エックルスは早くから、自分は二元論者であると表明し、脳を研究して
そこに心の働きを見いだそうとする唯物論的アプローチを批判していた。
エックルスにとっての脳の研究は、心の物への働きかけの端緒を探す
挑戦である。その点では、42番に紹介した脳波の発見者ハンス・ベンダー
と似たような動機である。ベンダーはテレパシーが起きる原理を探して
脳研究に挑んだ。

エックルスの説では、自己は「念力で」脳をコントロールするというに
等しい。つまり自分の指が思い通りに動くこと自体が「念力」なのだ。
となると、外的世界の事物を念力で動かすのは、まちがって脳の外に
心の働きが及んだにすぎない、と解釈されよう。

本書では、第3章までで脳と心にまつわる諸理論がまとめられていて
役に立つ。第4章から神経回路と量子事象のかかわり方が仮設され、
第6章で、エックルスの提唱するサイコンという、心的事象の要素が
導入される。サイコンと神経細胞が心的世界と物的世界を橋渡すとし、
その後の章は、進化の途上で意識が現われた説明にあてられる。

超心理学者には、エックルスのような心身二元論者が多い。
(唯物論者も皆無ではないが)
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-3.htm