超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

心霊現象の科学

2007-01-06 | 読書ガイド
111番目。ゾロ目になったところで、読書ガイドはお休みとしたい。
最後は、日本超心理学会の初代会長の著書としよう。

●小熊虎之助『心霊現象の科学』芙蓉書房(1974)

本書は小熊虎之助先生(1888-1978)の主著であり、「心霊科学の問題」
(1918)を改訂出版した「心霊現象の科学」(1924)の、新装版である。

小熊先生は東京帝国大学で哲学・心理学を学び、早くから心霊現象の科学
的究明に意欲をもたれていた。大学では、福来助教授の変態心理学の講義
も受講していたそうである。本書では、欧米でさかんになってきた心霊研究
が扱っている対象を精査し、「偽心霊現象」と「真実の心霊現象」に分けて
論じており、懐疑的態度をもった研究の草分けとみることができる。

小熊先生は1922年明治大学に赴任され、1957年に法学部教授として退官
されるまで35年間、心理学を講じられていた。1968年に発足した日本超心理
学会の会長に就任した。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jspp2/japanese/aboutus/about_us.html

※明日からは論文ガイドを始める。

幽霊にさわられて―禅・心霊・文学

2007-01-05 | 読書ガイド
110番目は日本の文学者による本。

●三浦清宏『幽霊にさわられて―禅・心霊・文学』南雲堂(1997)

三浦氏は、前項の後藤氏の後任で日本心霊科学協会の常任理事
に就任した文学者で、後藤氏と同様の明治大学の理工学部教授
として、英語を教えていた。

三浦氏は、1988年に『長男の出家』で第98回芥川賞を受賞した。
本書は、おもに受賞以降の10年間に執筆されたエッセイを集めた
ものである。

タイトルを見たときは「幽霊にさらわれて」だと勘違いして、宇宙人
による誘拐事件を題材にした小説かと思ったのだが、さにあらず、
交霊会に参加して実際に(?)幽霊に触られたことを含む体験報告
であった。禅の考え方を通して心霊を見つめる視点は新鮮に感じた。

三浦氏には『イギリスの霧の中へ―心霊体験紀行』(南雲堂1983)
というエッセイ集もあり、文庫化(中公文庫1989)もされているが、
こちらは芥川賞受賞以前の作品。

心霊科学と自然科学

2007-01-04 | 読書ガイド
読書ガイドに戻ろう。
109番目は日本の研究者の本。

●後藤以紀『心霊科学と自然科学』日本心霊科学協会叢書
 出版科学総合研究所(1982)

著者の「表の顔」は、前工業技術院長、前情報処理学会長、
明治大学名誉教授で、日本のコンピュータのパイオニアのひとり。
http://www.ipsj.or.jp/katsudou/museum/pioneer/i-goto.html

「裏の顔」は、日本心霊科学協会の常任理事をながらく務めた
心霊研究者。本書は日本心霊科学協会の機関紙『心霊研究』
に掲載された後藤氏の記事をとりまとめたもの。

海外の心霊研究の調査報告や、自らが企画して行なった交霊会
の報告からなる。66ページには、心霊現象を心理学的な方法で
解明しようとする「超心理学」は、成果が限られている。あたかも
海上に顔を出した氷山の一角を見ているにすぎない。海中の氷を
見るには「心霊研究」が必要だという趣旨で、超心理学に比べた
心霊研究の優位性を主張している。

科学者が第一線を退いたあとに、怪しい研究をするというパターン
がよく見られるが、後藤氏はそれには当たらない。上の主張をした
ときは、明治大学の教授時代、本書の最後に収録されている記事
は35歳のとき、まだアカデミックの職につく前のものである。

覚醒のメカニズム~グルジェフの教えの心理学的解明

2006-12-29 | 読書ガイド
超心理学研究のひとつの到達点を暗示する著作。
108番目。

●チャールズ・C・タート『覚醒のメカニズム~グルジェフの教えの心理学的
 解明』吉田豊訳、大野純一監訳、コスモス・ライブラリー(2001)

14番で紹介した超心理学界の重鎮が、およそ20年後に書いた本。両方の
本のカバーに示されているタートの顔写真を比べると、重ねた齢に応じて
深まった議論が期待できる。

催眠(9章)が有効に働くように、我々は合意的トランス(10章)という一種の
催眠状態にあり、自動機械と化している(少なくともそうした社会的圧力の
もとにある)。さあ、目覚めに向かってワークを実践しよう・・・
これだけ聞くと、自己啓発セミナーやカルト宗教の宣伝に聞こえてしまうが、
その危険をあえておかしながら、トランスパーソナルな心理学的検討を行なう。

超心理学の知見はわずかに瞑想や祈りの効果(20章)のところにあるだけ
だが、タートの状態特異科学のヴィジョンと、それを目指す思いが伝わってくる。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-5.htm

パート2は心理学の知識が少ないと読みにくいかもしれない。斜め読みくらい
で先に進み、また後で読み返す程度の気持ちで読むのがよいかも。

心霊大全―20世紀の超自然現象世界

2006-12-28 | 読書ガイド
前項の本でも触れられていた、マスメディアで大活躍した
あの人の遺作。107番目。

●中岡俊哉『心霊大全―20世紀の超自然現象世界』
 ミリオン出版(2000)

半世紀にわたる著者の活躍をまとめた分厚い本。全国各地また
世界各地から集めた怪しい話が、満載。最後のほうのTV業界の
話はおもしろい。著者が川口浩よりずっとマトモな人間であった
ことがよくわかった。

また、この本には付録でCD-ROMがついており、幽霊の足
音(?)とか、特選の心霊写真などが、吟味できる。結構笑える
ものが多いが、クロワゼの例の遺体発見番組や、心霊治療や
念写など、今となってはかなり価値ある映像も収録されている。


心霊写真は語る

2006-12-27 | 読書ガイド
106番目は、心霊写真を論じる本。

●一柳廣孝(編著)『心霊写真は語る』青弓社(2004)

心霊写真は、念写と違って、偶然に起きた現象を後から理由づける
ために、超心理学の研究対象となりにくい。しかし、本書は心霊写真
を文化現象と位置づけ、それが流行する背景や、それが担う役割を描
いてみせる。超心理現象の発現が、心理-社会的状況と不可分である
ことからすると、こうした視点を知っておくことには大きな価値があろう。

内容は章ごとに8名の著者の分担執筆である。
・写真論としての心霊写真論(前川修)
・ヴァナキュラー・モダニズムとしての心霊写真(長谷正人)
・心霊写真を信じる心への心理学的アプローチ(小泉晋一)
・心霊写真の発生(奥山文幸)
・回帰する恐怖(吉田司雄)
・精神医療と心霊写真(今泉寿明)
・口承文化のなかの心霊写真(戸塚ひろみ)
・「眉唾写真」の魅力(小池壮彦)

編者の一柳氏は、16番に次いで2度目の登場。
日本心霊科学協会の評議員でもある。
http://www.shinrei.or.jp/yakuin.html

奇跡のスタンフォード・テクニック

2006-12-26 | 読書ガイド
超常現象を扱う月刊誌には1982年から『ムー』がしぶとく生き残っている。
その名を冠した単行本のシリーズ「ムーブックス」では、面白いお話の本
がたくさん刊行されているが、ときには超心理学者の研究報告もある。
105番目。

●ラッセル・ターグ&キース・ハラリー『奇跡のスタンフォード・テクニック』
 アルバトロス・フォーラム訳、学研ムーブックス(1984)

25番に紹介した『マインド・リーチ』以降のSRIの研究活動実績がわかる。
122ページに記述されている、物品透視を使った未来透視法は興味深い。

ところで、今月号の『ムー』の特集は「驚異の超能力リモート・ヴューイング」
と題してマクモニーグルなどの超能力捜査官が掲載されている。今晩の
日本テレビにもマクモニーグルが登場していた。明後日28日夜23時からの、
ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル「特集:サイエンス・ワールド」の
<テレパシー>にも登場するようだ。

超能力の子供たち―彼らの語ることを静かに聞け

2006-12-25 | 読書ガイド
104番目は、子供に見える超能力現象について。

●サミュエル・ヤング『超能力の子供たち―彼らの語ることを静かに聞け』
 渋谷晴雄訳、日本教文社(1981)

ジャーナリストである著者が聞き知った、子供に現われた特異現象の事例
を報告している。

そもそも大人より子供にその種の現象が起きやすいのだろうか、が疑問だ。
子供は一般に、よく言うとファンタジストで、悪く言うとウソツキである(無邪気
な子供とは作られた幻想であると心理学の実験が示している)。それゆえ、
その種の現象の「報告」が多くなりがちである。同時に大人の側もその種の
現象が子供に起きやすいと思いがちになって、事実認識も偏るのである。

厳密な超心理実験では、年齢による差は出ていない。年齢よりも、性格や
態度の違いが大きく出ている。また、子供時代の現象の出方が反社会的に
なりがちなのが、大人になって社会に応じた現象の出方をするようになる
ので、現象報告が減るとも考えられる。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/4-4.htm

喪失と獲得~進化心理学から見た心と体

2006-12-24 | 読書ガイド
前項のペンローズは、アリゾナ大学の意識科学国際会議に参加して
話題になったが、その国際会議では、超心理学のセッションが設け
られていて、会議参加者に超心理のシンパも多そうだ。
しかしもちろん、懐疑論者もいるので、紹介しよう。
103番目。

●ニコラス・ハンフリー『喪失と獲得~進化心理学から見た心と体』
 垂水雄二訳、紀伊国屋書店(2004)

ハンフリーは霊長類学者で、チンパンジーなどの集団を形成するサル
は「天性の心理学者」である(他者の行動について考えるから)と表現
したので有名。意識科学国際会議の講演では、講演後も学生とおぼ
しき大勢の質問者で取り囲まれ、ほとんど芸能人のようだった。

本書では、ありのままの記憶を失ったために、概念の抽象化能力が
生まれたなどと、生物進化のプロセスでは「喪失」が思わぬ「獲得」に
つながったと事例をあげて主張している。

本書の第13章「人間性と超自然信仰」では、信じてしまうことの進化
論的意義(あるいは問題)の分析がある。超心理学もやみくもな信仰
の例にあがっている。本屋で立ち読みする方は第10章「信仰治療と
プラシーボ効果の進化心理学」での議論が下地になっているので、
10章を読んでから13章に至るのがお薦めである。

心は量子で語れるか

2006-12-23 | 読書ガイド
量子力学の話題が続いたので、量子力学を学ぶ文献を推薦しよう。
102番目。

●ロジャー・ペンローズ『心は量子で語れるか』中村和幸訳、講談社
 (1998)⇒翌年には、ブルーバックスにもなっている。

ペンローズは、ビッグバン宇宙論で有名な理論物理学者・数学者。
現状のコンピュータは古典的物理学の原理で動作しているため、心を
もつ機械は作れないと、『皇帝の新しい心』で主張して話題になった。
彼の世界観は、物理界と心理界とイデア界の三元論だ(『心の影』)。

本書では、量子力学と現代物理学の最先端が難しい数式を使うこと
なく解説されている。105ページの多くの爆弾の中から不発弾を、どの
爆弾も爆発させず(爆発する確率を極めて低く保ったまま)に発見する
方法がおもしろい。さらに192ページのリベットらの実験における意識が
0.5秒遅れて機能すると見られる点についての批判も興味深い。我々の
会話はちっとも遅れてないではないかという。彼は、心にまつわる部分
での時間の進行を問題視するのである。予知やESP現象など超心理と
の接点も大いに想像できそうである。

断片と全体~ホリスティックな世界観への実験的探究

2006-12-22 | 読書ガイド
101番目は、前々項で現われた物理学者ボームの著書。

●デヴィット・ボーム『断片と全体~ホリスティックな世界観への実験的探究』
 佐野正博訳、工作舎(1985)

断片的世界観に支配された人間は、世界や人間自身をこの世界観にふさわ
しいように破壊しようと試みるようになる。あげくの果てにすべてのものがこう
した世界観に対応するように見えはじめるのである。人びとは、自らの断片的
世界を正当化する、もっともらしい証拠を探しだす。ついに断片化は、人びとの
意志や欲望から独立した自律的な存在であるかのように受け取られることに
なる。断片化をもたらしたのは、断片的世界観に従って行為している人間なの
だ、という事実が見過ごされてしまうのである。(pp.16-17)

ボームは「隠れた変数」理論で、量子力学のより実在的解釈を提唱した。それと
ともに、世界全体の一体的見方の重要性を、強く主張している。カプラに比べる
とかなり慎重な論の進め方であり、地に足がついた議論という印象である。

ボームの他の著書には、『現代物理学における因果性と偶然性』(東京図書)、
『全体性と内蔵秩序』(青土社)、『量子論』(みすず書房)がある。

訳者の佐野氏は科学技術史の専門家。職場の同僚なのでよく会議で同席する。

タオ自然学

2006-12-21 | 読書ガイド
100番目は、前項で現われた物理学者カプラが注目される端緒となった本。

●フリッチョフ・カプラ『タオ自然学』吉福伸逸・田中三彦・島田裕巳・中山直子
 訳、工作舎(1979)

この本の意図しているところは、東洋の知慧を西洋の科学精神の本質的な
調和を示し、今までの科学のイメージを一新することである。そして、現代
の物理学が科学技術をはるかに超えたものであり、物理学の道(タオ)は、
スピリチュアルな知識と自己実現へと向かう心のある道(タオ)たり得ること
を明らかにしていく。(p.27)

老荘思想を中心とした東洋思想と現代物理学の相補性を指摘するものであり、
本文中に禅に触れる箇所も多く、本来ならば、日本人が行なうにふさわしい
種類の仕事であったように思える。ユングの思想にも東洋思想の影響が強く
出ているが、超心理の理論構築には東洋思想がヒントになるのだろう。

カプラの著書には、さらに『ターニング・ポイント』(1984)、『新ターニング・
ポイント』(1995、前版を抄訳にしたもの)がある(いずれも工作舎)。

科学と意識シリーズ(全5巻)

2006-12-20 | 読書ガイド
99番目は、意識科学の草分けの会議報告。

●『科学と意識シリーズ(全5巻)』竹本忠雄監訳、たま出版(1984-)
1)量子力学と意識の役割
2)神経-心理-生理学と意識の諸状態
3)意識における霊魂の顕現
4)意識の遍歴
5)科学と意識

1979年にゴルドバで開かれた会議の記録であり、たとえば、第1巻では
ジョセフソン、カプラ、ボームが講演し、あの遠隔視のパソフが討論に
参加している。

超心理学を含めた領域を意識科学としてとらえる動きはその後大きくなり
アメリカでは、アリゾナ大学で1994年から隔年で国際会議を開催しており
今年で7回目となる。奇数年には世界各地で小国際会議が開催されており、
1999年には、保江邦夫氏らにより東京の国連大学でTokyo99が開催された。
http://www.consciousness.arizona.edu/


擬似科学と科学の哲学

2006-12-19 | 読書ガイド
98番目は、前項で哲学的話題が出たところで哲学の本を。

●伊勢田哲治『擬似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会(2003)

疑似科学とされるものを題材にして科学哲学を学ぶ内容である。
疑似科学とされるものには、占星術、超能力、代替医療、創造論が
あがっている。一見すると懐疑論の本に見えるがそうではない。
疑似科学とされるものについての著者の理解が深く、正確であり、
科学と非科学との境界設定を考える、科学者必見の書となっている。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/8-2.htm

超能力は、第3章の「目に見えないものも存在するのか?」で扱われ、
超心理学の科学性の議論とともに科学的実在の概念の理解が進む
ようになっている。超心理学については、大雑把にいうと、科学的
体裁は整っているが、現象をおこす確実なレシピが作られない限り
科学とはならない、と重要な指摘がなされている。

しかし、今まさに超心理学者は、そうしたレシピを開発しつつあるのだ。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/3-4.htm

隠された心の力~唯物論という幻想

2006-12-18 | 読書ガイド
97番目は、超心理学の心理分析。

●笠原敏雄『隠された心の力~唯物論という幻想』春秋社(1995)

まずは天才的能力を発揮する神童の話から入る。著書自身のケースで、
コミュニケーションがとれず重度の知的障害と思われていた9歳の女児
が、4次式の定積分を式の変形をすることなしにいきなり答えを書いた
例の図が圧巻(p25)。続いてサイ現象の一通りの解説になる。

そして著者の心理療法に見られた、能力の隠蔽、超常現象に対する抵抗
が述べられる。その視点から唯物論を見ると、超常現象をはじめとする
人間の心の力に対する無意識的な感情的抵抗の結果として、必然的に
生まれた観念論と推定される(p186)。超常現象が真に認められるために
は、その感情的抵抗がある種の「治療法」によって解かれる必要がある。

また、神ないしそれに近い存在は、人間が、自らの心の持つ力を否定する
目的で作りあげた概念であり、唯物論信仰と宗教信仰が心の力の否定と
いう点で表裏一体の関係にあるという。

もうおなじみの笠原氏は心理カウンセラーで「心の研究室」を主宰している。
http://www.02.246.ne.jp/~kasahara/