超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

過去遡及的記憶想起促進実験の大規模追試

2013-05-16 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(1)>

ベムの予感実験のうち、過去遡及的記憶想起促進実験について、
大規模な追試が行なわれ、昨年末に次の論文で発表された。

Galak, et al., Correcting the Past: Failures to Replicate Psi,
Journal of Personality and Social Psychology, 100(3) pp.407-425, 2012.

まず、追試の対象である、ベムが行なった過去遡及的記憶想起促進実験
を解説しよう。なお、有意確率pは0.05よりも小さく0により近いほど有意、
効果サイズdは0で偶然平均(効果なし)、0.5をこえるあたりから「大きな
効果」という、だいたいの目安である。

実験概要:
基本実験では、学生100人の参加者に対して48の単語(食品、動物、
職業、衣料品の各ジャンルから12単語ずつ選定)を固定した順番で
3秒ずつ呈示するので、それぞれイメージするように教示する。
その後、参加者は覚えている単語を思い出してタイプするように
求められる(覚えるように言われていないので驚く)。その作業が
終わったならば、各ジャンルから6単語ずつ無作為に選定した24単語
が画面にランダムな順番で3秒ずつ呈示される。次に、その24単語
がランダムに一度に表示され、参加者はその中から6つの食品単語を
クリックして(クリックすると文字が赤くなる)、6つの空欄にその
スペルを打ち込む。それが終わると画面の単語の順番が変わり、
こんどは6つの動物単語をクリックしてスペルを打ち込む。同じこと
を職業単語と衣料品単語でも繰り返す。
改良実験では、学生50人に対して、記憶時の単語をジャンルごと
順番に呈示することにしたうえ、作業時には、各単語をイメージして
タイプするように要求して行なった。
仮説:
一般に何度も見たり作業したりした、なじみある単語は覚えやすい。
過去遡及的記憶想起促進実験では、事後的であっても将来呈示される
作業単語の記憶想起が促進され、事前により多く想起されると考える。
結果:
基本実験は(p=0.029, d=0.19)で、有意な小さな効果であった。
新奇性追求尺度が高い人ほど、過去遡及的記憶想起促進が起きる有意な
相関があった。その高得点者にかぎった分析は(p=0.0003, d=0.57)で
きわめて有意で(やや大きな効果)、低得点者では偶然期待値であった。
改良実験は(p=0.002, d=0.42)で、きわめて有意(dが2倍)だった。
新奇性追求尺度が高い人ほど過去遡及的記憶想起促進が起きるという
相関はなかった(高得点者も低得点者もともに得点が高かった)。

本追試論文では、以上のベムの実験を、7つの実験で追試している。
また、これまで行なわれた追試を総合的にメタ分析している。


間奏曲(70)ベム実験の追試論文

2013-05-15 | 間奏曲
「間奏曲(63)ベム論文が刊行される」で触れられている追試について、
より徹底的な報告が2012年12月に発刊された次の論文でなされています。

Galak, et al., Correcting the Past: Failures to Replicate Psi,
Journal of Personality and Social Psychology, 100(3) pp.407-425, 2012.

趣旨:3000人を超える追試による結果は、偶然期待値に留まった。
この内容について、細かく報告する。