超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

PK抑制体験の現象学

2008-03-02 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-7)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(7)PK抑制体験の現象学

ヒースは、PK体験者に、どんなときにPKが抑制されるかを
聞いたところ、おおむね発揮促進要素とは逆に、対象との
感情的な距離があり、自我意識が強く、思考が働いており、
重苦しさがあり、プロセスへの信頼が欠如し、開放的でなく、
否定的な影響力があるときと報告されている。

抑制では、とくに「環視者の敵意」の要素が注目されるが、
被験者の防衛機制が起動されるので、能力が抑制されて
しまうのだろう。また、探求心が、抑制と促進の双方に報告
されたが、強い探究心はプロセスの信頼を低下させる一方、
探究心がまったくないと、対象とつながれないのだろう。

ヒースは、遠隔視や虫の知らせなど、まだ現象学的にあまり
調査されていない体験項目も、今後の研究が必要と言う。

(21世紀の超心理学=終わり)

アスリートの現象学

2008-03-01 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-6)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(6)アスリートの現象学

1994年にアレッシイは、スポーツ競技で「ゾーンに入る」体験をした
アスリートについて、そのときの内観の現象学的研究を報告している。

・痛みも不快もなく自然に連れて行かれる感じ
・完全な没入感や明瞭な集中感
・恐怖や障壁や否定的な思考の克服
・高度な力や忍耐、エネルギーの高揚、能力の高まり
・心身の融合
・時間感覚や視覚の変容
・空間感覚や聴覚の変化を伴う次元超越感
・予兆、暗黙知、直観
・段階を踏んで自然に進行
・心地よい満足感

マーフィ&ホワイトは「ゾーンに入る」感じはPK体験と似ていると
議論している。またスポーツ訓練法は武術鍛錬と共通点があり、
変性意識状態の活用など、超心理の促進法ともよく類似している。

※邦訳あり『スポーツと超能力』⇒読書ガイド(58)


PK体験の現象学

2008-02-28 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-5)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(5)PK体験の現象学

ヒースは、PK体験者のうちの2人がESPの体験をしており、
かつPKとESPの体験は同じであると報告したことから、双方の
体験報告の類似性を過去の記録にさかのぼって調べた。

それによるとPK体験の構成要素はすべてESP体験にも現れて
いた。それらは、変性意識、つながり、解離、思考の停止、感情
の感知、エネルギー感、身体感覚の高まり、意識集中、プロセス
への信頼、体験の受容、既知感、プロセスの支配、影響力。


ESP体験の現象学

2008-02-27 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-4)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(4)ESP体験の現象学

たとえば1996年にリードが、他者に心霊的なコンタクトをしたと感じた
通常人について現象学的研究を報告している。

第1のコンタクト段階で、光のイメージや暖かさ、風、さらに対象との
結合パワーなどを感じている。一部の人々は、この段階で、いったん
壁のイメージを感じたのちにそれが消えている。

第2段階では、軽微な解離や、注意や意識の集中があり、創造的な
感覚を抱く。

第3段階では、幻想の世界やつながった体験がある。一部の人々は
心がさまよう感じを報告するが、コンタクトへの抵抗反応かもしれない。


臨死体験の現象学

2008-02-26 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-3)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(3)臨死体験の現象学

たとえば、臨死体験で神聖なる存在に出会った10人の現象学的研究を
1998年にウエストが報告している。それによると、次のような
構成要素がある。

肉体から抜け出してまた戻ってくる。高いパワーに満ちた無限の体験をし、
神のもとで愛や喜びを感じる。絶対的な真理や英知を体験し、個人的な
メッセージを受けて人生が変わる。

こうした体験は一様に、言語に尽くせぬものであるらしく、体験者の語り
には困難がつきまとう。


チャネリングの現象学

2008-02-25 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-2)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(2)チャネリングの現象学

意識的にチャネリングをする霊媒9人の現象学的研究を
1996年にバレットが報告している。また、霊媒によって
呼び出された霊体についても記述している。

チャネラーの報告には、つながった感覚や直観的な情報取得、
遊離感、とぎすまされた感じ、肯定感など、超心理体験との
類似点が多くある。


シンクロニシティの現象学

2008-02-24 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-1)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法
(1)シンクロニシティの現象学

ユングのシンクロニシティ(非因果的連関)の現象学的研究を
1998年にハンソンとクリーノが報告している。

円滑にうまくいく体験の、28人の記述から、次の16の意味
構成要素を抽出した。括弧内は体験比率。

あるきっかけをもとに(100%)、願望/必要性/目的(100%)へ、
情報収集しながら(100%)、達成に向けて行動し(100%)、意味
付与され(100%)、期待どおりの結果になる(100%)。一部の人
は、変化への抵抗を感じ(70%)、支配を受け入れ(45%)、変化
までの時間経過があり(22%)、内的な動機づけを感じ(61%)、
同期した出来事に合い(56%)、危険を感じ(96%)、思考体験や
超越体験をし(46%)、忠誠や信用を感じ(43%)、将来予測(57%)
をしている。

総じて、自発的超心理体験には、個人的意味要素がもっとも
重要である。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/5-8.htm


パメラ・ヒースの現象学的方法

2008-02-23 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(15-0)>

第15章:パメラ・ヒースの現象学的方法

麻酔医であり、超心理学のフィールドワーカーでもあるパメラは、内観
報告によって、超心理体験の心理的(意味的)側面を探究する方法を
模索している。彼女は、ESPとPKは同一のプロセスであり、現象学的
方法によってそれらが抑制される構図などが究明できる、と主張する。

ただ内観報告に依存する現象学的方法は、先入観や一面的な見方に
より偏りが生じる。そこで、テキストの内容分析の方略には、ジオルジに
よる、次の4段階を提唱している。
・テキストを最初から最後まで何度も読み、全体の意味要素を把握する。
(この意味要素は文脈に依存しながら全体を構成する材料である。)
・繰返しの表現はとくに注意深く読み、そのつど意味の変化を感じ散る。
・意味要素のそれぞれを、心理学的な洞察によって見直していく。
・個々のテーマを織り合わせるように、意味要素を全体的に統合する。
出来上がった報告は、明瞭な体験描写として理解できるものとなる。

関連:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/psi/6-3.htm


シャーマン効果仮説

2008-02-22 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(14-4)>

第14章:マクレノンの儀式治癒理論
(4)シャーマン効果仮説

第4の仮説は「シャーマン効果仮説」であり、シャーマンの儀式が
心理-生理学的な問題の解決になるとしている。

とくにシャーマン症候群の人々は、儀式によって解離や催眠状態を
誘発し、問題の解決に向かう。それがまた、特異現象の信奉を増強
させるという循環的な(正のフィードバック)構造をもつ。

以上4つの仮説によって支えられる儀式治癒理論が、狩猟採集社会
での儀式の実質的な意義を説明できると考えられる。現代社会でも
青少年の世界観の安定に影響力があるのだろう。

※この理論にどこかで聞いたようなデジャヴを感じたが、思い出した。
 哲学者の須原一秀が『超越錯覚』(新評論1992年)で議論している、
 超越感の防衛機制と同種だ。須原は学生のレポートからこの考えを
 独自に引き出している。

特異体験=信奉仮説

2008-02-21 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(14-3)>

第14章:マクレノンの儀式治癒理論
(3)特異体験=信奉仮説

第3の仮説は「特異体験=信奉仮説」であり、特異体験が起源になり
超常現象の信奉が形成されるとする。

超常現象の信奉は、それが文化的に先に形成されているので、それを
背景にして特異体験がなされると考えられがちである。信じているから
幻覚が見えてしまうという説だが、じつはそうではなく、体験している
人が、体験ゆえに信奉しているのだ。

というのは、マクレノンの調査によると、特異体験は文化によらず一定の
現象が体験されている。つまり、特異体験はかなり生理学的要因である
ようだ。ただ、その体験をするのは人口の一部分(その中心はシャーマン
症候群の人々)であり、それらの体験報告と根強い信奉が社会全体に
どの程度影響するかは、それぞれの社会によりまちまちである。


解離=特異体験仮説

2008-02-20 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(14-2)>

第14章:マクレノンの儀式治癒理論
(2)解離=特異体験仮説

第2の仮説は「解離=特異体験仮説」であり、解離傾向が特異
体験を誘発しているとする。

調査によると解離傾向の高い人々や、催眠感受性が高い人々が、
超常現象を体験しやすい。解離や催眠に加え、超常信奉や神秘
傾向、それに創造性、認知境界の薄さなどの尺度が連動している。
これらが総じて高い人々を「シャーマン症候群」と呼ぼう。

シャーマン症候群が心理的問題を抱えている場合、儀式の実践に
よってそれが治癒できるのではないだろうか。認知的開放性や
暗示性が低い(シャーマン症候群でない)患者には、この方法は
効かないだろう。


トラウマ=解離傾向仮説

2008-02-19 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(14-1)>

第14章:マクレノンの儀式治癒理論
(1)トラウマ=解離傾向仮説

儀式治癒理論は大きく4つの仮説で構成される。

第1の仮説は「トラウマ=解離傾向仮説」であり、小さいころの虐待
やネグレクトによるトラウマを回避するため、解離や催眠状態を誘発
していると考える。

解離とは、自己概念の希薄化、統一的意識状態からの遊離などで
特徴づけられる状態である。催眠とは、分析的思考や周辺への意識
が低下して集中力が高まっている状態で、おうおうにして、感覚や
知覚の変容が起きる。

トラウマ=解離傾向仮説では、こうした状態が身についていると
進化的に有利に生存できたとする。1つには、一度に多くの種類の
課題をこなす(たとえば、戦いながら助けを求める)には、複合的認知
処理を行わねばならないが、解離傾向が助けになったと思われる。

2つ目に、虐待を受けていると「自分ではないと感じた」という報告
が多いように、解離が効果的な防衛機構になっている。3つ目に、
世代間の葛藤によって劣位に立たされやすい年少者たちの精神的
支えとなっている。

この仮説は、幼少体験と特異体験の相関性を予測し、ヒーラーや
能力者と呼ばれる人々は、より多くの、上述のような幼少体験を
もっていると推測する。つまり、そうした調査で検証可能である。


マクレノンの儀式治癒理論

2008-02-18 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(14-0)>

第14章:マクレノンの儀式治癒理論

ジェームズ・マクレノンは、自発的な超心理現象を説明するための
理論として、より本流科学に受け入れ可能な「儀式治癒理論」を
提案している。この理論によると、儀式による治癒は、人類がもつ
心理的解離傾向の形成と同期しており、3万年前あたりの進化
プロセスに起源がある。超心理体験、体脱体験、トランス状態、
宗教などは、いずれもそれに関連しており、どこの狩猟採集民も
シャーマニズムを一様にもっていたことを説明する。この理論は
心理学、超心理学、人類学、医学に大きく貢献するだろう。

この理論は、アーウィンのモデル<21世紀の超心理学(12-5)>
とも対応しており、その「空想傾向」を「解離および催眠傾向」に
読み替えると同様に理解できる。


ウーフィットによる超心理学における言語分析

2008-02-17 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(13)>

第13章:ウーフィットによる超心理学における言語分析

ロビン・ウーフィットは、会席実験やガンツフェルト実験などで録音された
会話を的確に分析することで、実験の精度を向上できる、と主張して、
会話の特徴を記録する特殊記法を開発している。

※すでに論文ガイド<PA2006(21・22)>で紹介済み


超心理現象の信奉の問題

2008-02-15 | 21世紀の超心理学
<21世紀の超心理学(12-5)>

第12章:超心理の懐疑論に対するストームの社会-経験的考察
(5)超心理現象の信奉の問題

アーウィンは、超心理現象に対する信奉の要因について4つの説を
調査にもとづき検討した。
(A)社会の周縁に位置する人々が信じている。
(B)大きな世界観の中に組み込まれているので信じる。
(C)誤った認知のために信じてしまう。
(D)心理-社会的な不適応を解決するために信じる。
その結果、(A)は支持されず、(B)(C)はやや支持され、(D)は
かなり支持された。とくに支配不能事象への支配幻想が鍵になっている。

要因モデル:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~metapsi/data/symp001.htm

また、超心理学の実証的データゆえに信じる割合いはごくわずかである。
信奉の背景をよく認識したうえでの、社会的活動が肝要である。