超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

封印は解かれるか

2012-08-29 | 封印された科学
封印された科学(12)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本のあとがきでは、封印を解くための方向性が示される。

また付録では、超心理学の主要用語の解説、日本語で読める主要文献
70冊のリスト、統計学の基礎知識の解説が収録されている。

超心理学のハンドブック的な本に仕上がっている。
なお、店頭には本日から並んでいる模様。


オカルト論議は信念論争

2012-08-27 | 封印された科学
封印された科学(11)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の終章では、信念対立ばかりが浮き彫りにされて、科学的
実証の観点がないがしろにされやすい傾向を指摘している。

その背景には、多くの人々が信念を重視することがある。そして、
その重視の理由は、識別の認知作用の負荷が高いので、「識別の
努力をするくらいなら、多数意見を信じておくことにしよう」と
する、認知的倹約原理が発動されるからである。

こうした人間や社会の傾向性から、この科学は「封印」されると
結んでいる。


霊魂仮説について考える

2012-08-26 | 封印された科学
封印された科学(10)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第10章では、懐疑論者のカール・セーガンも一目おいた
生まれ変わり事例の研究をとりあげ、その事例を肯定的に認めた
としても、霊魂仮説を認めない立場(超心理学的仮説)がありうる
ことを指摘する。

超心理学者は霊魂仮説を信じる者ではないこと、にもかかわらず
両者を同一視する誤解があること、霊魂仮説には問題が多いこと
が、次々に論じられる。

筆者は、霊魂という個物を身体という箱に閉じ込めるような思想
を「詰めこみ理論」と呼んで排除し、かわりに「拡がり理論」を
提案する。それにより、心の理解や超心理現象の理解が進むと
見込んでいる。


意識に共鳴する機械

2012-08-25 | 封印された科学
封印された科学(9)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第9章では、物理的な乱数発生器の挙動が、周囲の人々
の心理状態と呼応する可能性が指摘される。

スポーツ観戦や映画鑑賞の場面や、世界的なイベントや事件に
応じて乱数記録実験が行われており、奇妙なデータが蓄積されて
いる。この現象を十分に説明する理論は提案されてはいない。

しかし、興味深い理論のひとつに情報システム理論が紹介される。


予知――物理学への挑戦

2012-08-22 | 封印された科学
封印された科学(8)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第8章では、未来の予知が現在の透視と同程度に
起きること、両方の超心理現象が似た働きである可能性を
指摘する。

最近の超心理学では、予感(無意識の予知)を検出する
実験がはやっている。予知は物理的にありえないとされて
いるので、それが起きることが明らかであれば、超心理
現象が明白に示せる。しかし、それは現状の物理学理論
に反することになり、物理学への挑戦になる。


心の法則をもとめて

2012-08-21 | 封印された科学
封印された科学(7)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第7章では、超心理現象の背後でかかわっている
心理学的要因を総括している。ヒツジ・ヤギ効果、実験者効果
に関する知見から、現象を引き出すには、心理-社会学的な
環境づくりが重要であると指摘される。

実験環境や実験状況のみならず、実験者の心理もかかわると
なると、管理統制実験がかなり難しくなる。その実態を把握
せずに機械的に追試実験をしても超心理現象は再現されず、
疑いばかりが深まるという構造的問題を抱えている。

超心理現象の究明以前に、複雑な心理-社会現象を究明する
科学的方法の発展が望まれる。


マスメディアの光と影

2012-08-19 | 封印された科学
封印された科学(6)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第6章では、エスパーが主人公のドラマを脚色する際に
著者がかかわった裏話をもとに、超心理学がマスメディアに
どのように扱われるのかを考える。

バラエティ番組の舞台裏の批判、心理学者が科学者の中でもっとも
超心理学に否定的である実情などが語られる。


能力者と称する人々

2012-08-18 | 封印された科学
封印された科学(5)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第5章では、ナターシャや御船千鶴子の例をとりあげ、
能力者と称する人々の実験に一定の経過パターンがあり、その
結果、実験が避けられてしまう傾向が描かれる。

一般に能力者に対する厳密な実験は、彼(女)らにとってハードル
が高く、努力に値しないものになりがちである。確実で安定した
現象を求めることが、封印につながる一要因となっている。

超心理学の開祖であるJ・B・ラインが一般人を相手にした実験に
こだわったのには、それなりの理由があるのだ。


奇術師たちのアリーナ

2012-08-16 | 封印された科学
封印された科学(4)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第4章では、超心理現象の懐疑論者だけでなく、超心理学者
にも奇術師がかなり多い現状が示される。奇術トリックがわかることで
超心理現象がトリックでないと判断でき、研究にはずみがつく傾向が
見て取れる。

また、奇術師を対象にした調査では、ESPの信奉がかなり高く、奇術
愛好家はファンタジー好きで、それがESP信奉につながりやすい構造
も指摘される。

超常現象の信奉が不安の軽減につながっている傾向も指摘でき、肯定
派は不安を抱えて信奉したい人が集まっているという認識が成立する。
それが、真摯な懐疑的研究の存在を覆い隠す働きをしてしまっている。


超能力の実在をめぐる懐疑論争

2012-08-15 | 封印された科学
封印された科学(3)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第3章では、超能力の実在をめぐる論争が紹介される。
良質な懐疑論争は少なく、あるかなしかの水かけ論に終始しがち
である。懐疑論者を自称する人々の中には、実態を十分に調べず
古いデータや他人の粗い議論を引用して、超能力の否定論を展開
している。

そのかたくなな否定論者は、超能力はありえないとか、超能力の
主張者は虚偽か幻覚にとらわれているなどの、固定観念にとらわ
れている。否定論議のどこが問題かを、文献を具体的に引用して
指摘している。

統計を駆使したまともな議論を展開する文献は目立たず(そうした
本は売れず)、やみくもの肯定論やかたくなな否定論を展開する
文献が幅を利かす状態が、研究実態を社会から隠す(封印する)
傾向を生んでいる。


米軍の超能力スパイ作戦

2012-08-14 | 封印された科学
封印された科学(2)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第2章では、米軍の超能力スパイ養成を目標とした
スターゲイト・プロジェクトと、そこで活躍したジョー・
マクモニーグルの遠隔視実験の模様と、スターゲイト・
プロジェクトの幕引き時において超心理学が不当に扱われた
事情とが描かれている。

遠隔視実験は評価の厳密性に欠ける割に効果が大きくなく、
ガンツフェルト実験と類似した方法に変化していった。

軍事スパイ活動に対して、超能力が実用化できるレベルに
至らなかったことは否めない。


テレパシーの証拠をつかんだ

2012-08-13 | 封印された科学
封印された科学(1)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の第1章では、筆者が参加したガンツフェルトの模擬
テレパシー実験の模様、ホノートンが報告したテレパシーと
見られる「大当たり」事例、ホノートンとハイマンの論争と
その顛末が紹介されている。

ガンツフェルトのテレパシー実験では、30年間の実験結果
から、厳密な環境でも、偶然4分の1の確率のところ3分の1
の頻度で当たる実績がある。その結果、偶然失敗実験10回
のうち1回の割合で、テレパシーらしき効果が見られる。

批判者のハイマンは実験環境の厳密性を認めるが、追試実験
の実績を見ようと判断を留保した。その後の追試実験の結果
でも効果が見られたのだが、ハイマンは留保したままだ。


PA年次大会開催中

2012-08-12 | 封印された科学
封印された科学(0)
紀伊國屋書店『超心理学~封印された超常現象の科学』

この本の序章では、筆者が参加したPA(超心理学協会)の年次大会
や、筆者が滞在したライン研究センターの様子が描かれ、超心理学の
研究コミュニティの概要がわかる。

なお、本年のPA年次大会は、奇しくも現在ノースカロライナ州
ダーラムのライン研究センターで開催中である。
日本からは、小久保氏、清水氏が参加されている。

http://www.parapsych.org/

マクモニーグル氏やベム氏などの、そうそうたるメンバーも集まって
いるようだ。