「
47NEWS」の「
前田元検事に懲役1年6月の実刑 特捜部証拠改ざん事件」( 2011/04/12 12:45 )
厚生労働省の元局長村木厚子さん(55)が無罪となった文書偽造事件で押収したフロッピーディスクのデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事前田恒彦被告(43)に、大阪地裁は12日、「審理の紛糾や、上司から叱責を受け信頼を失うことを恐れ、データを改変しており悪質だ」として懲役1年6月の実刑判決を言い渡した。
検察側は同罪の最高刑の懲役2年を求刑していた。関係者によると、前田元検事は「厳粛に受け止める」と話しており、控訴しないとみられる。
判決理由で中川博之裁判長は「データが事件の見立てに整合しないことを知りつつ村木さんを逮捕した」と指摘。改ざんについて「主任検事の重圧があったにせよ、検察官の行為として常軌を逸している」と批判した。
さらに、ディスクについて「村木さんの主張を裏付ける重要な証拠」と評価し、「このような改変がまかり通れば真相解明はかなわず、刑事司法の根幹を破壊しかねない。刑事裁判史上例を見ない犯罪」と厳しく非難した。
大阪地裁は12日、押収したフロッピーディスクのデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事前田恒彦被告に実刑判決を言い渡した、と報じられています。
私は以前、「
フロッピーディスクデータ改竄問題にみる司法の質」において、
これでは、司法に対する社会の信頼は、失われてしまうかもしれません。この問題についても、今後、私なりに考えてゆきたいと思います。
と書いたものの、その後この事件について何も書いていなかったので、
今日、すこし書いておこうと思います。
「
愛媛新聞社 ONLINE」の「
特集社説 元検事に実刑判決 「個人の犯罪」に矮小化するな」( 2011年04月13日(水))
大阪地裁は、厚生労働省の元局長が無罪となった文書偽造事件で証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事の前田恒彦被告に、懲役1年6月の実刑判決を言い渡した。
「現職の検察官が担当事件の客観証拠の内容を検察官に有利な方向に改変した、わが国の刑事裁判史上例を見ない犯罪」―判決の断罪は、厳しい。押収したフロッピーディスクのデータを、事件の見立てに合わないからと勝手に改ざんした前田被告の行為はもちろん、到底許されるものではない。
法と証拠に忠実であらねばならない検察官が証拠改ざんという犯罪行為に手を染め、刑事司法への国民の信頼を根幹から揺るがした罪は重い。被告は控訴しない方針と伝えられるが、まずは妥当な判決と言えるだろう。
しかし、事件を機に検察の体質に厳しい目が注がれ、法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」が生まれ、一時は組織の解体まで議論された経緯を考えれば、個人の資質の問題として矮小(わいしょう)化すべきでないことは明らか。検察関係者は、前田被告への判決が出ても「まだ何も終わっていない」ことを肝に銘じ、組織全体のうみを出し切って真相究明に努めてもらいたい。
今回、被告は起訴内容を全面的に認め、争わなかった。「関係者のみなさまに申し訳ない。検察の伝統を私の行為が破壊した」「(上司を)できればかばいたい」など、内向きの発言も目立ち、反省の方向性に疑問を感じざるを得なかったが、審理は2回にとどまり、詳細な動機や背景も語られることなく、スピード結審した。
一個人の裁判として見れば不自然とまでは言えない。しかし、一番知りたかった「今回のようなずさんな、違法な取り調べが組織的に常態化していたのではないのか」という疑問は、何も解明されないまま。身内の論理で幕引きを急いだ感は否めない。
最高検は今回の裁判で、改ざん後に当時の上司2人が、改ざんを故意から過失にすり替え隠蔽(いんぺい)したと主張したが、判決は隠蔽の有無には触れなかった。検察組織のあり方や捜査手法について言及がなかったのも物足りない。上司2人は犯人隠避罪で起訴されたが、今後、最高検と徹底抗戦する構え。この「後半戦」も注視する必要がある。
江田五月法相は、先週新たに、特捜部が取り扱う事件で取り調べ全過程の録音・録画(可視化)試行を指示した。最高検が既に自ら示した「部分可視化試行」を不十分と退けた形。「検討会議」の提言も含め、検察は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだろう。今回の判決は、改革・再生のラストチャンスかもしれない。
前田恒彦被告は「起訴内容を全面的に認め、争わなかった」が、「身内の論理で幕引きを急いだ感は否めない」と報じられています。
ここで注目すべきは、
「関係者のみなさまに申し訳ない。検察の伝統を私の行為が破壊した」「(上司を)できればかばいたい」など、内向きの発言も目立ち、反省の方向性に疑問を感じざるを得なかったが、審理は2回にとどまり、詳細な動機や背景も語られることなく、スピード結審した。
という部分だと思います。これについて、産経ニュースは次のような報道をしています。
「
産経ニュース」の「
【押収資料改竄】実刑判決に村木さん「検察庁は特殊な組織だと思う」」( 2011.4.12 12:50 )
大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)事件で証拠隠滅罪に問われた元主任検事、前田恒彦被告(43)に懲役1年6月(求刑懲役2年)の実刑判決が言い渡されたことを受け、元厚生労働省局長の村木厚子さんは「前田元検事は『申し訳ない』と責任を感じて反省しているように述べているが、国民に対して責任を感じているのではなく、検察庁という自分が所属していた組織に迷惑をかけたことを申し訳ないと言っているとしか思えない。検察庁というのは特殊な組織だと思う」とコメントした。
村木さんの弁護人は「刑事裁判にはいろいろな争い方があり、そこで『真相解明』ができるとは限らないことを改めて感じた。『真相解明』はメディアが多角的にやるしかない。それでも、元特捜部検事という立場の人が、検事として取り扱った事件の処理で実刑に処せられたことの歴史的意味は大きい」としている。
たしかに、村木さんの言うとおり、
「前田元検事は『申し訳ない』と責任を感じて反省しているように述べているが、国民に対して責任を感じているのではなく、検察庁という自分が所属していた組織に迷惑をかけたことを申し訳ないと言っているとしか思えない。検察庁というのは特殊な組織だと思う」
とも考えられます。
しかし、私は、これは「検察庁にかぎった話ではない」と思います。ほとんどすべての組織において、「組織内部 (身内) に対して」申し訳ない、という態度になる人が多いのではないでしょうか。すくなくとも、弁護士の世界では、そのような傾向があると考えられます。
弁護士の世界では「身内」である弁護士 (仲間) に対して「申し訳ない」という態度がみられる、と私が考える根拠を、以下、記します。
私は以前、ブログ「
弁護士こぐまの日記」を開設しておられる「こぐま弁護士」さんのブログに、コメントを書き込んだことがあります。「こぐま弁護士」さんが依頼者は弁護士の苦労をわかってくれない、と嘆いておられたので、
大変ですね。だけどそれはまだ「まし」ですよ。私は、もっと大変な経験をしましたよ。
私は弁護士から、突然、「今まで築き上げてきたものを失いたくないんだ!!」と怒鳴られ、嫌がらせをされたことがあります。
その弁護士さんからは、「このことは誰にも言うな」とも脅されましたよ。
相手は一弁の湯山孝弘弁護士ですが、湯山弁護士は「なりたて」の弁護士ではない以上、当然、私の権利行使に対して従うべき法律上の「義務」があることは知っているはずなのですが…。
といったことを書き、「わかってくれない」と嘆かずにがんばってください、といったことも書き添えたところ、
「こぐま弁護士」さんは、「すっ、すみません」と書いた記事(エントリー)をアップし、その記事(エントリー)において、
「特定の方」について書くのは非常識である。このような書き込みは、弁護士として認めることはできません。コメント欄を閉鎖します。コメント欄を管理する時間を捻出するのも困難です。
などと書いたうえで私のコメントを削除し、コメント欄を閉鎖されたのです。
私は「特定の方」、つまり「一弁 (第一東京弁護士会) の湯山孝弘弁護士」に対して、公表してもよいか「確認したうえで」書き込んだので、私の書き込みには「問題はない」と考えていますが、
こぐま弁護士さんは、
「なぜ、私の書き込みが問題なのか」を教えてくれない
まま、現在にいたっています。
湯山弁護士の言動は、「脅迫罪」または「強要罪」にあたる可能性があり、「こぐま弁護士」さんが「弁護士として、認めることはできない」のは湯山弁護士である、と考えるのが普通ではないかとも考えられます。
しかし、「こぐま弁護士」さんは「すっ、すみません」と書いたうえで、私を非難 (または批判) していることから、「こぐま弁護士」さんは、
湯山弁護士の言動に問題はない。しかし、
湯山弁護士の言動を書き込む行為には問題がある
とお考えになられたのだと思います。
かりに湯山弁護士の言動に「問題はない」とすれば、「こぐま弁護士」さんは、「なぜ、私のコメント書き込みを削除したのか」がわからないわけです。なぜなら、
湯山弁護士という「特定の方」が「問題のない言動」をした、と私が書き込んだにもかかわらず、「こぐま弁護士」さんは、「このような書き込みは、弁護士として認めることはできません」と書いた
ということになるからです。
とすれば、「こぐま弁護士」さんは
一弁の湯山孝弘弁護士という「特定の方」の言動には「問題がある」と判断したが、「問題を起こした」湯山弁護士という「特定の方」に対して「すっ、すみません」と謝罪したうえで、湯山弁護士の「問題行動」についての書き込みは「弁護士として認めることはできない」と判断した
ということになります。
ここから読み取れるのは、「弁護士の世界」も「検察庁」と同様、
「身内」である弁護士 (仲間) に対して「申し訳ない」という態度がみられる
ということです。
報道には、「上司2人は犯人隠避罪で起訴されたが、今後、最高検と徹底抗戦する構え。この「後半戦」も注視する必要がある」とありますが、
問題があるのは、検察庁だけではなく、弁護士界をも含めた「法曹界全体」ではないかと考えられます。したがって、
弁護士増員をも含めた「司法制度改革」は継続しなければならない
と (私は) 考えます。
■関連記事
「
弁護士自治を弱めてもよいかもしれない」
「
弁護士業界は病んでいるのかもしれない」
「
「こぐま弁護士」 さんの主張について」
「
削除要求のあった事実の公表と、名誉毀損」
「
弁護士による「詭弁・とぼけ」かもしれない実例」
「
こぐま弁護士を怒鳴りつけたのは誰か」
「
表現の自由と、個人情報保護・名誉毀損について」
「
日弁連会長の「懲戒請求をどんどん出して下さい」発言について」
「
橋下徹弁護士が懲戒処分 (光市母子殺害事件弁護団事件)」
「
こぐま弁護士を怒鳴りつけたのは弁護士ではないか」