言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

ルービノミクス

2011-04-23 | 日記
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.165 )

 クリントンの当選は、サプライサイド経済学に対して有権者が最終的に「ノー」を突きつけたものと当時は受け止められていた。クリントンは選挙期間中に中間所得層への減税を公約する一方で、富裕層への増税も主張していたからである。とは言えクリントンは同時に「ニュー・デモクラット(新民主党)」を標榜し、過去二〇年にわたる同党のリベラル路線を慎重に避けて、財政規律、自由貿易、犯罪取り締まりの強化、強いドル政策、社会福祉改革を重視する方向に修正した。
 経済政策に関して指南役を務めたのは、ゴールドマン・サックスの前CEOで、クリントン政権発足と同時に経済政策担当大統領補佐官に任命され、のちに財務長官も務めたロバート・ルービンである。ルービンは民主党を、自由貿易、赤字削減、強いドルを三本柱とする成長路線に乗せた。民主党では一九六〇年代、七〇年代に増税支出型ケインジアンが跳梁跋扈したが、幸いにもルービンはそれではなかった。
 ただしルービンは基本的に、サプライサイド減税は効果がないと考えていた。減税は財政を逼迫する。そうなれば、投資に回るはずの国民貯蓄が国債に吸い上げられてしまう。すると金利が上がり、企業にとって資金調達コストが嵩む。こうしてクラウディングアウト現象によって、長期的成長に必要な民間投資が不活発になる、という理屈である。裏返せば、増税をすれば貯蓄が拡大し、金利は下がって、民間投資は増えることになる。やや乱暴なまとめ方だが、これがいわゆる「ルービノミクス」だった。財政赤字を計画的に削減すれば、アメリカ国内で投資が活発化するのみならず、国外からも資本が流入してくるという。だが私たちのみるところ、この主張にはどうみても難点があった。途中のプロセスを省いて頭と尻尾をつなげると、ルービノミクスでは、投資課税を増やせば投資が増え、投資課税を減らせば投資が減ると言っていることになるからだ。ともあれルービンは、「グローバル経済を救った男」として一九九〇年代末にタイム誌の表紙を飾っている(*14)。


 ルービノミクスには難点があった。なぜならルービノミクスでは、投資課税を増やせば投資が増え、投資課税を減らせば投資が減ると言っていることになるからである、と書かれています。



 ビル・クリントンは一九九二年の大統領選で、父ブッシュを破って当選しています。



 著者の主張には説得力があると思います。しかし考えてみれば、

 減税によるにせよ、ケインズ的な公共事業を行うにせよ、どちらであっても、(目先の) 国家財政は悪化します。したがって (短期的には) 国債発行ということになると思いますが、そんなことをすればクラウディングアウトが起こる、という批判は成り立ちます。

 この批判を回避するには、おそらく金融政策か為替政策以外には手がありません。そして為替政策とは事実上、金融政策ですので、「金融政策以外はするな」ということになると思います。

 しかし経済政策イコール金融政策、という帰結は受け入れ難いと思います。

 とすると、要はルービンの論理、
減税は財政を逼迫する。そうなれば、投資に回るはずの国民貯蓄が国債に吸い上げられてしまう。すると金利が上がり、企業にとって資金調達コストが嵩む。こうしてクラウディングアウト現象によって、長期的成長に必要な民間投資が不活発になる
のうち、「クラウディングアウト現象によって、長期的成長に必要な民間投資が不活発になる」の部分は、論理的に「弱い」のではないかと考えられます。つまりクラウディングアウトはそれほど重視しなくともよい (大きな影響がない) と考えられないか、ということです。

 これについてはさらなる検討が必要だとは思いますが、このように考える余地もあるのではないかと思いますので、一応、メモ (備忘録) 的に記載しておきます。



 なお、このブログには、「「特殊な目的」を伴うコメント」もみられますが、有益なコメントも寄せられています。

 クラウディングアウト現象に言及したものとして、「マンデル・フレミング理論」のコメント欄に書き込まれた内容は有益だと思います。よろしければ、併せ (あわせ) ご覧ください。

ヒマワリ作戦

2011-04-23 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「汚染土壌浄化「ヒマワリ作戦」…復興の象徴にも」( 2011年4月22日14時49分 )

 福島第一原子力発電所事故で汚染した土壌の放射性物質をヒマワリに吸収させ、細菌で少量化する計画を、宇宙航空研究開発機構の山下雅道専任教授ら宇宙農業に取り組む研究者有志が進めている。

 ヒマワリを復興の象徴にと、福島県内でヒマワリを栽培してくれる参加者も募っている。

 1986年のチェルノブイリ原発事故でも土壌浄化にヒマワリや菜の花が使われた。放射性セシウムは肥料の一つであるカリウムと性質が似ており、カリウムなどの肥料を与えなければ、ヒマワリなどはセシウムを取り込みやすい。

 収穫したヒマワリは、焼却処分すると煙が出て放射性物質が拡散する恐れがあるため、堆肥作りに利用されている「高温好気堆肥菌」でヒマワリを分解させる計画だ。この菌による分解で、ヒマワリの体積は1%程度になり、放射性廃棄物の量を減らすことができる。


 汚染された土壌を浄化する手段として、ヒマワリを利用する計画が進められている、と報じられています。



 これはたんに、

   ヒマワリに放射性物質を吸収させ、
   そのヒマワリを分解して体積を減らす

というもので、植物・細菌を利用して「放射性物質をかき集める」というにすぎません。放射性物質が「非・放射性化」されるわけではありません。しかし、おそらく放射性物質を「非・放射性化」することは不可能なのでしょう。



 ところで、ヒマワリのタネ・花粉は、風で飛ばないのでしょうか? 風で飛ぶ、と考えるのが普通だと思いますが、とすると、

   地中に入っていた放射性物質が、
   かえって空中・地表に撒き散らされる

ことになってしまわないか、それが気になります。

地震予測技術のレベル

2011-04-23 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「首都圏地盤に力、南関東のM7級誘発も…東大研」( 2011年4月23日08時10分 )

 東日本大震災で起きた地殻変動の影響で、首都圏の地盤に力が加わり、地震が起きやすい状態になっているとの解析結果を、東京大地震研究所のグループが22日、発表した。

 解析結果は、大震災後に発生した地震の分布ともほぼ一致している。同研究所では、国の地震調査委員会が今後30年間に70%の確率で起きると予測しているマグニチュード7級の南関東の地震が誘発される可能性があるとして、注意を呼びかけている。

 同研究所の石辺岳男・特任研究員らは、首都圏で過去24年間に起きた約3万の地震で破壊された領域が、大震災でどのような影響を受けたかを解析。地震が起きやすくなる力が働く領域は約1万7000で、起きにくくなる領域の約7000よりも多いことが分かった。震源が30キロよりも浅い地震は静岡県東部から神奈川県西部で、30キロよりも深い地震は茨城県南西部、東京湾北部で起きやすくなっていることが判明した。


 東京大地震研究所のグループが、首都圏で地震が起きやすくなっているとして注意を呼びかけている、と報じられています。



 リンク先の記事(読売新聞社のサイト)には解析結果が「地図上に図示」されています。



 「注意を呼びかけている」と報道されていますが、具体的に「どういう注意をすればよいのか?」がわかりません。非常食や乾電池などを用意しておく、といったことが有効であることは疑いないとは思いますが、一番よいのは「逃げる」ことですよね。しかし、

   地震が「起きやすくなっている」
  =地震が起きるかどうか「わからない」

ですから、(仕事などの都合で)「逃げる」わけにはいかない人が大多数でしょう。地震が起きても「生きている」と「仮定」して、その場合の対策をとるほかない、ということです。



 報道には、「国の地震調査委員会が今後30年間に70%の確率で起きると予測しているマグニチュード7級の南関東の地震」とあります。

 ここからは、地震の予測というのは、この程度の「幅」で予測するのが精一杯だということがわかります。読売新聞社のサイトに掲載されている「東京大地震研究所の解析結果」も、「メッシュが粗い」=「精度が低い」ことを示しています。



 とすると、(実用レベルでの) 地震の予測は不可能である、と認めたうえで、

   地震が起きても「生きている」と「仮定」して、

   地震が起きても「生きていた」場合に備えて、
   事前にどういう準備をしておけばよいか、

を考えることが、実用上は有益なのではないかと思います。



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