言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

「風評被害」の定義

2011-04-06 | 日記
毎日jp」の「東日本大震災:放射性物質検出 茨城7漁協、全ての漁中止 風評被害、コウナゴ以外も」( 2011年4月6日 )

 北茨城市沖で採取したコウナゴから暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出され、茨城県内の関係漁協がコウナゴの出荷自粛を決めた問題で、茨城沿海地区漁業協同組合連合会(水戸市)に加盟する11漁協中7漁協が6日、すべての漁を取りやめた。コウナゴ以外についても風評被害が懸念されるためで、当面出漁しないという。

 7漁協中3漁協は「放射能汚染による風評被害も影響している」と回答。県漁政課には「茨城産というだけで、魚の価格が大幅に下がっている」などの相談が漁業者から寄せられているという。一方、残る4漁協はコウナゴ以外の漁に出て、巻き網漁船操業のヒラメ漁などを実施したという。このうち、はさき漁協(神栖市)の担当者は「ヒラメからは放射性物質は検出されておらず、漁はできると判断した」と話した。【大久保陽一】


 北茨城市沖で採取したコウナゴから暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出され、出荷を自粛し、すべての漁を取りやめた。漁協は「放射能汚染による風評被害も影響している」と回答した、と報じられています。



 要は、「コウナゴから暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出され」たが、「コウナゴ以外」からは検出されなかった。けれども、「コウナゴ以外についても風評被害が懸念されるため」に、「すべての漁を取りやめた」ということだと思います。

 しかし、「コウナゴ以外についても風評被害が懸念される」って、変だと思いませんか?

 「コウナゴ以外についても」といえば、

   コウナゴについて風評被害が懸念されるうえに、
   コウナゴ以外の魚「も」風評被害が懸念される

ということです。「コウナゴ以外の魚」には暫定規制値を上回る放射性セシウムは検出されなかった以上、「コウナゴ以外の魚」について風評被害を懸念する、というのはわかります。けれども、暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出された「コウナゴについて」風評被害を懸念する、というのは、あきらかに変ではないでしょうか。

 もちろん、上記 (私の) 主張には、多少、「揚げ足取り」の感があることは承知しています。新聞記者が「うっかり書き違えた」のかもしれませんし、(好意的に解釈すれば)「コウナゴ以外については風評被害が懸念されるので、コウナゴ以外についても漁を取りやめた」と取れないこともありません。



 次に、「そもそも風評被害とは何か」を考えます。国語辞典で「風評被害」を調べてみました。



goo 辞書」の「ふうひょう‐ひがい〔フウヒヤウ‐〕【風評被害】

根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際に、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合に、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶなど。




 辞書によれば、風評被害とは「根拠のない噂のために受ける被害、とくに、不適切な報道によって生じた被害」である、ということになります。



 以下、「コウナゴ以外の魚」つまり「暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されなかった魚」に話を限定します。

 暫定規制値を上回る放射性物質が検出されなければ、「風評被害」といえるでしょうか? 答えは「ノー」です。なぜなら、辞書の定義によれば「風評被害」とは「根拠のない噂のために受ける被害」であるからです。

 ここは少し、伝わり難いかもしれないので、詳しく書きます。



 「暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されなかった魚」には、(原発由来の) 放射性物質が「まったく」ないのでしょうか? いいえ、そんなはずはありません。常識的に考えれば、

  (1) 暫定規制値を上回っていないが、
     「安全な」レベルの「放射性物質が魚の体内にある」

という状況のはずです。もちろん、

  (2) 暫定規制値を上回っていないどころか、
      魚の体内には「まったく」放射性物質がない

という可能性もありますが、(2) はあり得ない、と考えるのが常識でしょう。

 したがって、いかに「安全な」レベルであるとはいえ、「放射性物質が魚の体内にある」以上、たとえば九州産の魚に比べ、茨城産の魚が「売れないか、(売れても)安くしか売れない」のは当然ではないでしょうか? これには「合理的根拠」があります。

   いかに「安全な」レベルであるとはいえ、
     放射性物質が魚の体内にないほうがいいに決まっている

からです。これを「合理的根拠」といわずして、何というのでしょうか?

 とすれば、茨城産の「コウナゴ以外の魚」つまり「暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されなかった魚」が「売れないか、(売れても)安くしか売れない」ことをもって「風評被害」だとはいえないことになります。「根拠のない噂のために受ける被害」ではないからです。



 風評被害、風評被害、という言葉ばかりが目立ちますが、本来、風評被害とはいえないものまで、風評被害といっているのではないでしょうか? 魚にかぎらず、野菜などについても同様のことがいえるはずです。



 なお、下記の報道によれば、「通常の約三分の一」の価格でしか売れない、ということがわかります。



東京新聞」の「コウナゴから放射性セシウム 「原発からの水止めて」」( 2011年4月6日 )

 福島第一原発の事故の影響が県内の漁業者を直撃した。北茨城市沖で採取したコウナゴから暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出されたことを受け、県内全域でコウナゴ漁の休漁を決めた関係漁協は五日、見えない先行きにいら立ち、風評被害を懸念した。 (北爪三記)

 ひたちなか市の那珂湊漁協で同日開かれた茨城沿海地区漁連の対策本部会議。冒頭、あいさつに立った小野勲本部長は「原発から汚れた水が放出されている。われわれの海がどんどん汚され、使えなくなるんじゃないかと心配している。とにかく早く水を止めてほしい」と悲痛な表情で訴えた。

 コウナゴ漁以外の出漁は各漁協の判断によるが、「何もなければ飛び出していきたいが、こんな状況ではほとんど出られないだろう」と小野本部長。

 コウナゴ以外の底引き漁を再開した北茨城市の平潟漁協はヒラメ、カレイなどを平潟漁港に水揚げした。しかし、単価は通常の約三分の一。関係者は「この値段ではやっていける状態じゃない」。

 また、ひたちなか市の那珂湊漁協と磯崎漁協はシラウオやマコガレイ、ヒラメなど七魚種のサンプル調査を行い、いずれも暫定規制値を下回ったことを明らかにした。しかし、すぐに漁を再開するわけではない。時期は組合員と相談して判断するという。




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気象庁の放射性物質拡散予測情報

2011-04-06 | 日記
 気象庁のホームページに、放射性物質拡散予測情報が掲載されています。



 放射性物質の

   (1) 流跡線
   (2) 地上から標高500メートルまでの大気中の濃度分布
   (3) 地上への降下量

のデータが提供されています。

 仮定にもとづくものである旨の断り書きがありますが、まったく参考にならないわけではないと思います。なぜなら、

   観測値ではないとはいえ、
    「海外の当局が考える、現実的な値」を「前提として仮定」
     したうえで計算しているはず

だからです。



 詳細は、直接、気象庁のホームページ (↓) に行ってください。英語の資料と、その日本語訳とが掲載されています。



気象庁」の「環境緊急対応地区特別気象センターについて

当庁は、環境緊急対応(Environmental Emergency Response: EER)地区特別気象センター(Regional Specialized Meteorological Center: RSMC)として、原子力発電所の事故等発生時に、国際原子力機関(IAEA)の要請に応じて、大気中に放出された有害物質の拡散予測情報を提供しています。

(中略)

★気象庁の作成する資料について

当庁は、IAEAからの要請に基づき、以下の3種類の資料を作成しています。

流跡線
ある地点から放出された物質が、大気の流れに沿ってどのように流されるかを推定し、一定時間間隔でその位置を記入し結んだもの。単位はありません。

地上から標高500メートルまでの大気中の濃度分布
ある地点を通過する放射性物質の濃度について、24時間間隔で72時間先まで時間積分し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq・s/m3(ベクレル秒毎立方メートル)としています。

地上への降下量
事故発生時から最終予報時刻までに大気の流れによって運ばれた放射性物質が雨や風によって地表面へ降下する量を計算し、同じ値となる地点を結んだもの。単位は、放出の想定にあわせ、仮にBq/m2(ベクレル毎平方メートル)としています。




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