言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

中国の遷都先

2010-06-14 | 日記
柘植久慶 『宴のあとの中国』 ( p.154 )

 中国政府が北京からの遷都を考えているといった話は、たいていの人が俄に (にわかに) 信じないと思う。しかしながら深刻な水不足と華北の砂漠化という条件が加わると、逆に大半の人が耳を傾けるだろう。
 それならいかなる条件を備えた土地が、次の中国の首都にふさわしいと、中国首脳たちは考えるであろうか?
 まず東北部――旧満州は絶対にない。あまり中国大陸の端へ移ると、他方の幅が遠くなり過ぎてしまうからだ。その意味では現在の北京ですら北東に寄り過ぎている、という点が指摘される。
 海岸線――とりわけ台湾から一〇〇〇キロメートル程度の地点は、台湾海峡で一朝事あったとき、地対地ミサイルの攻撃に晒される、といった問題が視野に入ってくる。現状では殆ど考えられないが、可能性がゼロとは決して言い切れない。
 台湾の現政権は、共産党に何度欺かれても本質を理解しない、国民党という瘋癲 (ふうてん) 政権である。少しばかり美男で英語が喋れるのが唯一の取柄という、馬英九総統が政権を握ったものの、早くも良識ある国民から飽きられ始め、二期目の勝利などとても覚束ない。だからこそ猜疑心の強い北京の首脳たちは、海岸線やそれに近い内陸部に決して近づかないと確信される。
 長江の流域――武漢三鎮なども、彼らは絶対に近づかない。これは最終章で詳しく述べるが、三峡ダムが安全だと決して思っていないからである。

(中略)

 そうなってくるとある程度乾いた土地で内陸部、しかも五〇〇万人ぐらいの飲料水を供給できる水源を有する、というのが条件になる。それの一つに古都長安として知られる、現在の西安が有力候補に挙げられるのだ。
 西安市は陝西省のほぼ中央部に位置しており、古くから渡ると先は「西域」だった渭水 (現在は渭河) が流れる。東へ一三〇キロメートルほどのあたりには黄河が流れ、その少し上流からも水資源を得られるのだ。
 水の供給という一つをとっても、北京と較べて遥かに条件がよい。新しい首都を政治の中心地に限定、他の産業を一切誘致しないブラジリア・タイプとすれば、現在の西安より人口二〇〇万人増ぐらいで保てるだろう。
 陝西省は中国共産党の歴史を語るに忘れられない延安が、西安の北方二五〇キロメートルほどにある。国民党軍との戦いに敗北した毛沢東の共産軍が、〈長征〉とは名ばかりの敗残の旅を続け、やっとのことでたどり着いた地だった。
 そうした点からも西安が共産党の聖地に近いという、大きな意味を有しているのだ。もう一つの重要な歴史は、やはり張學良が蔣介石 (蒋介石) を幽閉した〈西安事件〉の舞台だった、というあたりだろう。
 そして古くは董卓の遷都と楊貴妃縁 (ゆかり) の地ということが思い浮かぶ。唐の都の長安は、平城京や平安京のモデルとなった市街で知られ、西半分の西市は西域からの人間――胡人が多く見かけられたのである。

(中略)

 ただしこの西安は狭く現在の首都に不適格となってくる。そこで東に新市街を建築する必要が生じるだろう。
 ここなら黄河に近くなるし、より近くに滻水 (チャンスイ) と灞河 (バーホー) という二つの流れもある。つまり渭水の支流の二本の河川もまた、水源となるから条件は良好と言える。
 中国政府が遷都に踏み切る場合、
 第一に、外敵からの安全性が高く、
 第二に、大地震が近くに発生せず、
 第三に、水資源が比較的良質で水量に恵まれ、
 第四に、歴史的背景を外国に誇れる、
 といった条件を、はっきりとクリアできねばならない。
 それらをすべてカヴァーできる著名な都市となると、「西安」を除いて皆無だと断言してよい。アメリカの中央情報局 (CIA) あたりは、既に中国の遷都先を西安に絞り込み、その場合の対応策の検討に入っている。


 中国政府は遷都を考えている、と書かれています。



 冒頭、「中国政府が北京からの遷都を考えているといった話は、たいていの人が俄に (にわかに) 信じないと思う」と書かれていますが、「ありうる」と考えるのが自然だと思います。

 しかし、その根拠は、著者の掲げている「深刻な水不足と華北の砂漠化」ではありません。

 私が遷都もありうる、と考えるのは、

   「北朝鮮の核が、北京の方向を向いている」といった話がある

からです。本当に北京の方向を向いているのか、北朝鮮に、北京に向けて核を発射する意志があるのかはわかりませんが、北朝鮮の戦略としては、あり得る話だと思います。



 中国が遷都を決断するとすれば、次の首都はどこか。

 北朝鮮に近い中国東北部は、当然、あり得ません。わざわざ北朝鮮に近い場所に、首都を移す理由がありません。また、台湾に近い沿海部や長江の下流は、著者の指摘している理由によって、あり得ないと考えられます。

 とすると、残る場所は、中国の内陸部しか考えられません。



 著者は、遷都先として考えられるのは、「西安」であると述べています。もっといえば、「西安」以外には考えられない、と述べているとみてよいと思います。

 私としては、西安以外には適地がないとは断言しかねるのですが、遷都がなされるとすれば、内陸部しかあり得ないと思います。また、位置的にみて、西安のあたりが最有力であると考えられます。

 したがって、著者のいう西安は、「当たらずといえども遠からず」とみてよいと思います。

中国産農水産物の安全性

2010-06-10 | 日記
柘植久慶 『宴のあとの中国』 ( p.94 )

 中国における食品の安全基準は、極めて曖昧になっており、袖の下一つで検査を通ってしまう、というケースも珍しくない。普通なら信じられないだろうが、それが中国なのである。
 この国において驚くべきことは、末端の農民たちの農業への知識――とりわけ農薬への知識が乏しい点だ。水で薄めて使用せねばならないところを、粉末のまま手掴みで散布する者すらある。
 こんな使用方法だと満遍なく散らず、特定の範囲にだけ集中してしまい、その部分を十分に洗わず食したら最後、農薬中毒にやられるのだ。それが一万人や二万人ではない。
 農薬中毒で治療を受ける者が、年間五〇万人に達しているのだから驚く。死者は二パーセント――一万人に及び、このうち殺人事件も少なくないという。二〇〇七年に南京で発生した事件では、一度に三〇人以上が毒殺された。
 もちろん大半が農民の使用上の誤りなのは言うまでもない。多量に使用すればそれだけ効果が大きい、と信じているのだからたまったものではないと言える。
 大量に使用して効果をと考えるのは、農民たちだけではないのである。養殖業者たちもまた、魚が病気になるのを防ぐため、大量投与して問題を起こす。養鰻業者のマラカイトグリーンがよく知られた薬品だ。
 その上に重金属など毒水が農業用水に使用され、作物の芯まで滲みこんでしまう、というケースが危険極まりない。これは汚染された長江の水が使用されている、華南の稲作地帯の米が要注意であろう。
 このため北京や上海などの富裕層は、一〇倍以上高い日本の〈こしひかり〉などを食べている。カドミウム米はご免というわけだから、いかに中国米の信用がないかである。
 他の農産物を見てみると、やはり農薬によるものが圧倒的に多い。椎茸なども農薬を手で撒くことから、一個一個の危険性が全く違ってしまう。Aが食べて大丈夫だからと、隣でBが食べたら七転八倒ということも起こりうるのだ。
 ホウレン草など葉を食べる野菜も然りで、雪のように農薬をかぶったものなどは、たちまち効果が出てくる。そこで中国人は調理前に水でよく洗ったり、洗剤を使って洗い流すことをやっているのが知られる。
 いかに残留農薬が問題になっているかは、「農薬が完全に落ちる洗剤」という宣伝文句の洗剤の存在でも、おおよその見当がつくだろう。多くの中国人はそれに飛びついて、市場で買った怪しげな生産者直売の野菜を、十分時間をかけて洗っている。
 もちろんニンニクのように根の部分を食べる野菜も、葉を食べる野菜と同様、いやそれ以上に残留農薬の危険が伴う。そこで中国人は高熱で調理する、「烤 (カオ)」という方法を採る。これによって可能な限り農薬を飛ばしてしまおう、という考え方なのである。
 たしかに高熱で処理することは、不純物などをかなりまで飛ばす効果が生じる。本来はあまり新鮮と言えない食材を、よく火を通してから食卓に供するのは、フランス料理と同じ手法だ。
 もし日本のように生食の食文化が盛んだとしたら、中国人のあいだでより多くの被害が出ているはず、と言えるだろう。よく火を使うことによって、辛うじて今まで程度で済んでいるわけである。
 危険なのは生鮮食品ばかりではない。加工食品もまた、天洋食品の製品のように、何が含まれているのか判然としない。反日分子が日本へ輸出されることを狙って毒物を混入したり、労働問題がこじれて会社への意趣返しのつもりで細工したり、というケースが考えられるからだ。あるいは反政府分子が国内の不安――輸出産業に打撃を与えるため、毒物を用いることすら想定できる。
 つまり生鮮食品から加工食品まで、中国からの食品は危険がいっぱいである。オリンピック直後にもインチキ粉ミルク事件が発覚、五人の死者と五〇〇人からの重症者 (発表されただけで) 、一〇〇〇人以上の被害者を乳幼児に出した。これは水で薄めて栄養不足になったのを補うため、メラミンを加えたのだからたまったものではない。たちどころに輸出乳製品へ波及、ついに日本でも被害が生じ始めた。政府の発表した被害者の数は氷山の一角だろう。


 中国の食品は危険である。野菜や魚などに、大量の農薬等が使用されており、中国では「農薬が完全に落ちる洗剤」が売られている。また、中国においては、高熱で調理するのが常識である、と書かれています。



 野菜や魚など、中国産の食品が危険である、と書かれていますが、それらは店頭で購入する際に、「産地表示」を確認すればすむことではないかと思います。

 有機農法など、無農薬栽培を好む人もいますが、それらは概して高価です。(日本の) 消費者の立場で考えるなら、「高価であっても無農薬のものがよいのか、多少、農薬が使われていても安いものがよいのか」を選択する自由があればよいのであり、「産地表示」が虚偽でないかぎりは、問題にする必要はないと思います。

 もっとも、「産地表示」がない場合には、消費者には、事実上、選択する自由は存在しません。その場合が問題になりうると思います。たとえば、弁当や惣菜屋さんで売られている調理済み食品などについては、「産地表示」がありません。したがって、それら「産地表示」のないケースについては、判断が難しいところだと思います。



同 ( p.99 )

 スーパーマーケットなどで野菜をチェックすれば、「中国産」と明示されていることが多い。しかしながら加工食品として輸入されたとき、切り刻んだ状態ならそうした明示は全く必要とされない。菓子も餡が中国製というケースがあり、安価なものは使用されていると考えて間違いないのである。
 とりわけ中国産の食材がスーパーなどで売れなくなってからは、値崩れして外食産業へ流れこんだ。だからカットされた野菜など危険ランクAのメニューと断言してよい。


 加工食品には「中国産」の表示は必要とされておらず、「安価なものは使用されていると考えて間違いないのである」と書かれていますが、



 消費者としては「少量なら死なない、食中毒にもならない」と考えるほか、ありません ( 現実問題として、中国産の食材が含まれているかどうかを見分けることは不可能だと思います。外食はしない、加工食品等は買わない、というのも非現実的です。なお、私は中国産食品がすべて危険だとは考えていません ) 。



 ところで、ここで日本の農家 (生産者) の立場に立って考えてみれば、中国は有望なマーケットである、といえます。

 上記引用部には、「北京や上海などの富裕層は、一〇倍以上高い日本の〈こしひかり〉などを食べている」と書かれています。

 ここで重視されているのは、「味」ではなく、「安全性」です。「味」は、作物の種子を中国に持ち込めば簡単に模倣されてしまいますが、「安全性」となると、話は違ってきます。安全性の場合には、「どこで作ったか」が問題であり、中国で同等の安全性を保証することは、困難だと思われます。

 したがって、(日本の農家にとって) 安定した市場たりうる、と考えてよいのではないかと思います。



 なお、「日本の食糧自給率」について、私は、意外と安全なレベルにあるのかもしれない、と考えています。輸出も行っていることは、ますます「安全である」と考える根拠になります。

三峡ダムの問題点

2010-06-06 | 日記
柘植久慶 『宴のあとの中国』 ( p.40 )

 中国の電力事情は、文字どおり綱渡りであり、とりわけ中国大陸南部――福建省や広東省方面で不足状態が顕著だった。二〇〇六年頃から既に限界に達していたのだ。
 日本から進出した企業の工場もこれらの地域においては、電力供給の制限を当局から要請され、自家発電能力がないと操業が十分にできない、との状況に追いこまれている。その状態は二〇〇八年に入ってもずっと続いてきた。
 ピークはやはり北京オリンピックで、このため六月頃から計画的停電が実施された。しかしながら七月に入って暑さが手伝い、電力事情は急速に悪化した。予想以上に電力の消費が生じたからにほかならない。
 中国大陸の北京首都圏を除く各地では、単純な電力不足による停電が続出したのである。中国政府は直轄市のような大都市だと影響が大きいことから、末端の小都市に犠牲を押しつけたようで、このため広く報じられなかったのだ。
 中国の発電能力は極めて低く、しかも旧態然とした石炭による火力発電で、大気汚染の元凶として知られた。しかも効率が非常に悪い。
 この事態は一九九〇年代初頭に、既に予測されていたことであった。そこで一九九二年の第七期全人代第五回会議において、長江の三峡ダムを建設する議案が提出され、三分の二の賛成で可決された。
 これが完成すれば中国の必要な電力の一〇分の一をまかなえることから、誰もが双手 (もろて) を挙げて賛成すると思われた。それが三分の一もの反対者や棄権者を出すという、全人代にとって異例の状態を現出したわけである。
 賛成しなかった総数二六三三票のうちの八六六票――およそ三分の一の票は、三峡に満水時で三九三億立方メートルという大量の水を貯えると、どのような影響が及ぶか判然としないことで、建設に二の足を踏んだのだった。


同 ( p.245 )

 その一四〇〇万人規模――あるいはそれ以上の死者が出そうなのが、四川省の三峡ダムの決壊である。これは場合によって億からの死傷者が出る、という可能性を有しているのだ。
 この三峡ダムは既に貯水を開始しており、二〇〇九年に入って満水に達する計画になっている。ここで発電が本格化すれば、中国で現在必要とされる電力――その一〇パーセントを供給できると言われる。
 中国では経済発展が始まって以来、慢性的に電力不足に陥ってきた。広東省方面では外国企業を多数誘致しながら、突然の停電で創業できない工場が続出した。自家発電設備を持っていないと、工程がすべて働かなくなるのでたまったものではない。
 北京オリンピックの期間中には、河北省方面の火力発電所を稼働させなかったことで、北京に電力不足という問題が生じた。このためかなり遠くの地域から電力を融通したため、華北の工場が停電で操業できない、という事態を招いたのであった。
 だから長江の三峡にダムを建設するという計画は、中国の電力不足を一気に解決してしまうものとして、産業優先派から大いに期待された。一九九〇年代に入ったところだから、経済開放政策に則した考えと言えた。
 ところが九二年の第七期全人代第五回会議において、投票が実施されたところ思いがけない結果を生んだ。全投票数二六三三票のうち、賛成派一七六七票しか集められなかった。つまり三人に一人は否定票を投じたのである。これまでの全人代の賛否投票としては、異例の内容だったのだ。
 反対の理由としては、土砂堆積が生じダムを建設しても直ぐ埋まり、異常気象の原因となって四川盆地が旱魃 (かんばつ) を生じ、水質汚染を引起こしてしまう。更に歴史的な名勝などが数多く水没し、文化的に問題も大きいことが指摘された。より重要なのは巨大地震を招く、という指摘だった。
 四川盆地の異常気象は、二〇〇八年三月の季節外れの大雪で、まず実証された恰好になる。ダム湖が巨大な汚水池と化す危険性は、もう既に傾向が見られ始めた。土砂堆積もやはり顕著である。
 私は次にくるものが大地震だと考えていた。だから二〇〇八年五月の四川大地震は、その第一報を知ったとき、まさにそれではないかと直感したほどだ。直ぐにその原因がヒマラヤ・プレートによるものだと判ったが、三峡ダムを震源とする大地震はいつ起こってもおかしくない。
 それでは三峡ダムが何故、大地震の原因となるのだろうか――。
 その理由はダム湖が満水になると、水位が最大で一八〇メートル以上高くなってくる。そうなるとこれまで水に浸されたことのなかった両岸が、流れに浸蝕されたり凄まじい水圧に直面するわけである。三九三億立方メートルもの水の量が、両岸のこれまで圧力のかかったことのない部分にまで、新たに圧力がかかってしまうため、周辺地域全体の地盤に影響を及ぼすのである。
 それ以外にも隙間から水が入りこみ、地下で地形を変えて大地震を引起こす、ということも考えられる。何しろ水圧の力は大きい。活断層を刺戟してしまった場合、思いがけない強大な直下型地震に繋がる、との可能性を捨て切れないのだ。
 では、三峡ダムが決壊したときどのような事態を招くだろうか。シミュレーションを展開してみたい。


 中国の電力不足を解消するために計画された三峡ダムについては、問題点も指摘されている。大地震、ダム決壊の危険性、異常気象、干ばつ、水質汚染、歴史的な名勝などの水没である、と書かれています。



 393 億立方メートルの貯水量というと、すさまじい量だと思います。比較のために、日本のダムについて調べてみると、

Wikipedia」 の 「日本のダム一覧」 ( 「総貯水容量順」 ランキングの項 )

   単位は堤高がメートル、総貯水容量が1,000立方メートル、湛水面積がヘクタールである。

順位所在地水系河川ダム型式人造湖総貯水容量管理者完成年
1岐阜県木曽川揖斐川徳山ダムロックフィル徳山湖660,000水資源機構2008
2福島県・新潟県阿賀野川只見川奥只見ダム重力奥只見湖601,000電源開発1960
3福島県阿賀野川只見川田子倉ダム重力田子倉湖494,000電源開発1959
4北海道石狩川夕張川夕張シューパロダム重力(シューパロ湖)433,000国土交通省2012
5岐阜県庄川庄川御母衣ダムロックフィル御母衣湖370,000電源開発1961


とあり、最大のものでも 6 億 6000 万立方メートルしかありません。



 さて、問題は三峡ダムの危険性です。

 393 億立方メートルといえば、393 億トンですから、大地震の引き金になってもおかしくないと思われます。また、ダム自体の重量によって引き起こされた大地震によって、あるいは他の原因によって引き起こされた大地震によってダムが決壊した場合、393 億立方メートルもの水が、一気に流れ出すことになります。

 三峡ダムについては、

Wikipedia」 の 「三峡ダム

によれば、

   堤高    185・0 m
   通常水位  175・0 m

とありますから、ダムが決壊すれば、ダム湖の水が

   高さ 100 メートル以上もの濁流 (!)

となって、怒涛のごとく、一気に流れ出します。その場合、甚大な被害が発生するはずです。



 ダムそのものは、頑丈に造られているはずで、よほどのことがないかぎり、決壊することはないと考えてよいと思います。したがってダムが決壊するとすれば、大地震の場合にかぎられる、とみてよいでしょう。

 とすれば、問題は本当に大地震が発生するのか、に絞られます。しかし、これについては、予想不可能である、というほかないのではないかと思います。



 ここで、すこし視点を変えて考えてみます。

 中国が、どこかの国と戦争を始めた場合 (どちらが先に攻撃を仕掛けたかはともかく) について考えます。

 戦争になれば、三峡ダムは絶好の攻撃目標になります。中国の敵国にしてみれば、三峡ダムを破壊すれば、核兵器以上の効果 (破壊力) が得られるからです。おそらく、核兵器数百発分以上に相当する被害が、中国には生じるはずです。

 つまり、中国は、三峡ダムを建設することで、戦略的に不利な立場に立たされます。

 北京こそ長江流域にはありませんが、ダムの下流は中国の重要な経済地域です。重要な穀倉地帯でもあります。そのような場所に巨大なダムを建設するなど、通常の感覚では考え難いと思います。なにか、よほどの事情があったとみなければなりません。



 それでは、その「よほどの事情」とは、なにか。

 考えられるのは、著者の指摘している中国の電力不足です。

 しかし、中国は本来、(多少の) 経済発展を犠牲にしてでも、国防上の要請を優先させる国だったのではないでしょうか。このように考えると、ここからは、二つの可能性が浮かび上がってくると思います。

 一つは、中国という国家の変質です。三峡ダムの建設をもって、中国が経済発展第一主義になった、とみる。しかし、そうであるなら、中国の潜水艦が活発に活動している現状は、説明不可能であると思われます。

 一つは、中国の指導部は三峡ダムが攻撃されることなどあり得ない、と考えている可能性です。現実問題として、三峡ダムを攻撃するとすれば、米国以外には考えられないと思います。したがってこのシナリオに沿って考える場合、(よほどのことがないかぎり) 中国には米国と戦う意志はない、とみることになります。



 すでに、前者の可能性については否定していますので、後者であるとみてよいと思います。したがって日本としては、安全保障を考えるならば、米軍基地の存在は必要不可欠である、と結論することになります。

 話が逸れてしまいました。今日はこのへんで切り上げます。