言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

弁護士が増えると弁護士に依頼しやすくなる

2012-10-31 | 日記
 ときどきアクセスして、数日分まとめて読んでいるブログにコメントした際に、私の言いたいことがどうも相手に伝わっていないのではないか、と思ったので、こちらでもすこし説明することにします (「元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記」の「「割りに合わない」という対応」) 。



 弁護士増員に反対している人々は、
  1. 弁護士のなかには、大衆のために「ボランティア価格」で仕事を引き受けている弁護士がいる
  2. 弁護士を増員すれば、「ボランティア価格」で受任してくれる弁護士がいなくなる
  3. したがって増員は大衆の利益にならない
といった主張を展開しています。

 私はこの論理には納得しかねます。その理由は、
「ボランティア価格」で受任するかしないか、弁護士によって「恣意的に」選択されるなら、弁護士の助力を得られない者が「必然的に」現れる。受任してもらえない者のほうが多いはずである。
という点にあります。



 では、弁護士を増員した場合には、どうなるでしょうか?

 次のようになるはずです。
  1. 大衆のために「ボランティア価格」で仕事を引き受ける弁護士はいなくなるかもしれない。
  2. しかし、弁護士間の競争によって、「価格」(=弁護士に支払う報酬) が下がる。
  3. したがって「小さな事件」も弁護士にとって「割に合う」ことになり、弁護士に依頼しやすくなる。




 両者 (弁護士を増員する場合と、増員しない場合) を比較すると、次のような違いがあります。



一、価格



 当然、弁護士の数が多いほうが価格は下がります。

 もちろん、「ボランティア価格」で依頼できる「一部の例外的な人」を考えれば、多少、価格が高くなる可能性はあります。しかし、「適正価格」がどの程度になるかによっては、かならずしもそうとはいえません。増員前の「ボランティア価格」が、増員後の「適正価格」と同じ価格になるかもしれませんし、逆に、増員後の「適正価格」のほうが安くなるかもしれません。

 従来の「ボランティア価格」と、今後の「適正価格」、どちらが高いか安いかは自然に決まる(需要と供給によって決まる)のでわかりませんが、どちらであれ、従来「通常価格」だった大多数の場合については、弁護士の数が多いほうが価格が下がる、といえます。

 したがって結論としては、弁護士の数が多いほうが価格が下がる、と考えてよいと思います。



二、弁護士の助力を得られる人々の数



 弁護士の数が増えれば、価格は下がります。弁護士料金が下がれば、いままで弁護士が「割に合わない=報酬が少なすぎる」として受任しようとしなかった事件も、弁護士にとって「割に合う=適正な報酬である」事件になり、受任する弁護士は増えます。

 したがって、「ボランティア価格」によって弁護士が「選択的に」事件を引き受ける場合に比べ、より多くの国民が、弁護士の助力を得られることになります。つまり、弁護士を増員したほうが、弁護士の助力を得られる人々の数は増えます。



 なお、かりに価格が変わらなかった場合を考えてみても、「利益率の高い」仕事の数には限りがありますから、
  • 弁護士の数が少なく、弁護士が高額の報酬を得られる「利益率の高い」仕事を大量に抱えていて「忙しい」場合と、
  • 弁護士の数が増えて、弁護士が高額の報酬を得られる「利益率の高い」仕事を抱えつつも、「時間に余裕がある」場合
を比較すれば、弁護士の数が多いほうが、弁護士が「利益率の低い」仕事を引き受ける可能性は高くなります。つまり、弁護士の助力を得られる人々の数は増えます。



 したがって、弁護士料金が下がっても下がらなくても、弁護士の数を増やしたほうが、弁護士の助力を得られる人々の数は増えることになります。



三、依頼者と弁護士の間の関係



 弁護士が「ボランティア価格」で「選択的に」事件を引き受ける場合、どうしても弁護士の側は「特別に引き受けてやっている」という意識になりがちです。このような状況は、依頼しようとする人々にとって「好ましい」でしょうか?

 弁護士増員の結果、価格が下がって「適正価格で」事件を依頼する場合には、このような「いびつな関係」は発生しません。

 つまり、弁護士を増員したほうが、依頼者と弁護士の関係が「適切な」ものになりやすい、といえます。



 以上のとおり、弁護士を増員する場合としない場合、両者を比較したところ、ほとんどの人々(いわゆる大衆)にとっては、弁護士の数が増えたほうがよい、という結論になります。



 ところで、上記、私のような見解に対しては、弁護士の数が増えて「適正価格」が下がっても、その「適正価格」を払えない人がいる、という批判が考えられます。

 しかし、
  1. 弁護士の数が少ない場合にも、弁護士に「ボランティア価格」で引き受けてもらえない人々は存在する
  2. 上で比較したとおり、弁護士の数が多いほうが弁護士に事件を依頼できる人の数は多くなる
  3. 「適正価格」すら払えない場合については、(たとえば国がいったん費用を立て替えて分割払いにするなど) 制度的に対応すればそれでよいし、それが適切である
と考えられることから、批判たりえないと思います。

 したがって、弁護士を増員したほうが、市民(国民)にとって利益になる、という結論になります。

温家宝首相一族の蓄財疑惑否定、「委任」の中国弁護士

2012-10-29 | 日記
産経ニュース」の「温家宝首相一族の蓄財疑惑否定、「委任」の中国弁護士 香港紙」( 2012.10.28 19:44 )

 中国の温家宝首相の一族が多額の資産を蓄財しているとの米紙報道に対し、温氏の家族から委任されたとする北京の弁護士ら2人が連名で「報じられたような“隠された資産”は存在しない」と蓄財疑惑を否定する声明を出した。28日付の香港紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストが伝えた。

 米紙ニューヨーク・タイムズは、温氏の出世に合わせて同氏一族が、27億ドル(約2150億円)を超える資産を保有するようになったと報道。

 声明は、温氏の家族の中にはビジネス界と関わりを持つ者もいるが、違法な経済活動をしたことはないと説明。教師だった温氏の母親が1億2千万ドル相当の株式を保有していると報じられた点ついては「規定された給与や年金以外に、いかなる収入や財産も得たことはない」と否定した。(共同)




 中国の温家宝首相一族は「隠された資産」を保有していない、と主張したようです。

 とくにこれといって、意見を述べる意志はありませんが、

 前提となる状況が変わったため、前回の私の分析は「外れた」ことになります。それを明確にするため、上記報道を引用しておくことにしました。



■関連記事
 「中国外務省「(報道は)中国に恥かかせようとするもの」

中国外務省「(報道は)中国に恥かかせようとするもの」

2012-10-28 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「「中国に恥かかせようとするもの」…中国外務省」( 2012年10月27日18時20分 )

 【北京=大木聖馬】中国のインターネットでは、温家宝(ウェンジアバオ)首相の親族による巨額の蓄財をニューヨーク・タイムズ紙が伝えた26日から同紙の英語サイト、中国語サイト双方に接続できなくなった。27日夜現在、その状態が続いている。

 中国外務省の洪磊(ホンレイ)(こう・らい)副報道局長は26日の定例記者会見で、同紙の報道について「中国に恥をかかせようとするもので、何か別の下心がある」と非難した。同紙サイトに接続ができなくなっていることについては、「中国は法に則してインターネットの管理を行っている」と述べ、政府が接続遮断を指示したことを示唆した。





 この報道を見るかぎり、巨額蓄財は「事実である」と考えてよいと思います。

 なぜなら、真実でないならば、「報道は事実に反する」と述べるほうがより効果的だからです。

 事実関係を肯定も否定もせず、わざわざ「中国に恥をかかせようとするもの」と述べているところから考えて、

 「事実とは異なる報道で中国に恥をかかせようとするもの」と捉えるべきではなく、「事実を正確に報道することで中国に恥をかかせようとするもの」と捉えるべきだと思います。



 とすると、インターネット接続を禁止したのは、「巨額蓄財の事実を中国国民に知らせたくない」からである、と考えて差し支えないでしょう。

 したがって「中国は法に則してインターネットの管理を行っている」というのは表向きの理由だと言ってよいと思います。



 なお、ニューヨーク・タイムズには英語版と中国語版はありますが、日本語版はないようです。すくなくとも私には、みつけられません。

 ですが、ほぼ同じ内容 (ただし簡潔になっている) がロイターで報じられていましたので、引用しておきます。



REUTERS」の「中国の温家宝首相一族が巨額蓄財、総額27億ドル以上=報道」( 2012年 10月 26日 18:15 JST )

[26日 ロイター] 26日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、裕福でない家庭の出身で庶民への思いやりが深いことで知られる中国の温家宝首相に関し、指導部入りした後に一族が巨額の財産を蓄えていると報じた。
記事は「企業や規制関連の記録を検証したところ、首相の夫人を含む一部親族が、強引な手法で少なくとも27億ドル相当の資産を蓄えた」と伝えている。

記事によると、温首相の母親や兄弟、子供たちの資産の大半は、温氏が1998年に国務院(内閣に相当)副首相に指名されて以降に蓄えられたと指摘。温氏はその後、2003年に首相に就任した。

NYTは一例として、2007年には温首相の親族や友人などの共同名義の会社が、中国の平安保険(601318.SS: 株価, 企業情報, レポート)(2318.HK: 株価, 企業情報, レポート)の株式最大22億ドルを保有していたと指摘。現在90歳になる温首相の母親はその当時、同社に対して1億2000万ドル相当の投資をしていた。

同紙はこれらの調査結果について中国外務省や温首相の一族に対してコメントを求めたが、いずれも拒否または無視された。

中国では26日朝、NYT(電子版)は英語・中国語のサイトともに閲覧ができなくなっているほか、中国版「ツイッター」と言える主要ミニブログサービスでも「ニューヨーク・タイムズ」と、温氏の妻や子供たちの名前による検索ができなくなっている。

中国外務省の報道官は定例会見で「中国の評判を落とし、隠された意図がある」報道と述べた。ウェブサイトへの遮断については「法と規則に基づきネットを管理している」と述べた。

中国では政府高官の私生活や資産の状況は闇に包まれており、個人情報は国家機密とみなされている。それでも、それほどランクが高くない高官の問題は中国や香港、欧米のメディアを通じてしばしば伝えられ、彼らが権力を利用して富を蓄積している様子がうかがえる。場合によっては、そうした高官が逮捕あるいは訴追されるケースがある。

次期国家主席のポストが確実視されている習近平氏の一族も、多額の資産を蓄積していると伝えられている。
ブルームバーグは6月に、習副主席の親族が3億7500万ドルの資産を企業に投資しているなどと伝えている。それ以降、中国ではブルームバーグのウェブサイトへのアクセスがブロックされ、当局が最高首脳のこうした問題に敏感になっていることが示された。

ニューヨーク・タイムズ紙は、温首相の場合、一族の名前が「友人、同僚、ビジネスパートナーが関与しているパートナーシップや投資会社」の陰に隠されていた、と伝えている。

同紙によると、温首相一族の資産には、北京の別荘開発プロジェクト、中国北部のタイヤ工場、2008年の北京オリンピックの施設建設にかかわった企業、大手保険会社の平安保険などが含まれている。

温首相の弟が保有する企業は、大都市の下水処理や医療廃棄物処理事業で3000万ドルに上る政府契約と補助金を受け取り、複数の会社名で2億ドルの資産を保有しているという。

ニューヨーク・タイムズはこれらについて、政府の記録に基づき推定したものとしている。




■関連記事
 「習近平一族のファミリー・ビジネス



■追記
 新たな報道「温家宝首相一族の蓄財疑惑否定、「委任」の中国弁護士」がありました。

経団連会長、日中関係の改善を民主に求める

2012-10-26 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「経団連会長、日中関係の改善を民主に求める」( 2012年10月26日13時52分 )

 民主党の輿石幹事長ら執行部は26日午前、経団連の米倉弘昌会長ら幹部と都内のホテルで懇談した。

 米倉氏は「日中関係は急速に緊張が高まっており、経済や企業活動に大きな影響を与えている」と述べ、沖縄県の尖閣諸島を巡る問題で悪化している日中関係の改善を求めた。赤字国債発行を可能にする特例公債法案については、臨時国会で早期成立を図る方針で一致した。米倉氏は懇談後、「早く成立させる方向でやってもらいたい」と記者団に語った。

 経団連と民主党執行部の懇談は、9月の同党代表選後初めて。


 経団連の会長が、日中関係の改善を民主党に要望した、と報じられています。



 日本企業の中国駐在員のあいだでは、「OKY」(=お前が来てやってみろ)、「TKY」(=テメエが来てやってみろ) という言葉が流行っているようで、次々に指示を出してくる本社に対し不満が高まっているようです。

 おそらく、そのような事情も今回の発言の背景にはあるのでしょう。

 一見すると、当然の要望であるかにも思われます。



 しかしこれ、どうなんでしょうか?



 現在の日中関係は、基本的には「中国側が対日関係の改善を拒んでいる」状況だと思います。

 とすると、民主党(日本側)に対中関係の改善を要望したところで、何にもならないわけです。日本側が対中関係の改善を拒んでいるならともかく、その逆、中国側が拒んでいる状況であることを前提に考えると、

 経団連会長が「日本側に」要求することは「筋が通らない」うえに、「困った状況」を日本国および企業にもたらすのではないかと思います。

 なぜなら、経団連会長の要望はすなわち、経済や企業活動のために、すなわち金儲けのために、政治的に中国に譲歩しろ、と民主党に要求していることにほかならないからです。企業の利益のために国家の利益を犠牲にしろ、と経団連会長が要求することは、かりに日本が中国に対し政治的に譲歩しないとしても、中国に足元をみられることになり、日中関係を日本不利・中国有利に動かす方向に作用すると思います。

 また、これは企業自身にも、不利益をもたらすと思います。

 経団連会長の発言が示しているのは、「我々には中国から撤退する意志はない」です。欧米企業が中国から撤退(または事業縮小)しつつある、とも報じられているなか、我々日本企業は中国から撤退しない、中国事業・中国市場を重視し続ける、と述べたわけです。

 中国事業・中国市場を重視し続けること、それ自体は企業の経営判断としてあり得ると思います。しかし、民主党に「政治的に譲歩しろ」と言わんばかりの要求をするならば、日本企業そのものが中国側に足元をみられることになるのではないでしょうか? 暴動が起きようが、企業の設備が破壊されようが我々日本企業は中国から撤退しません。このような姿勢は、経団連会員企業自体にも不利益をもたらすのではないかと思います。

当ブログの引用方針について

2012-10-25 | 日記
 このブログでは、「資料をもとに考える」という形をとっているために、引用が大量かつ頻繁に行われます。しかしながら、もとの文章が長い場合や、要点がぼやけた文章になっている場合など、引用が難しい場合があります。

 そこで、引用をまったく行わない形への変更も考えましたが、引用を行わないことで、内容の信頼性などの面で、かえって不都合が生じることもたしかだと思います。

 したがって、状況に応じ、引用を行ったり引用を行わなかったりする形で、更新を続けることにしました。その結果、以前に比べれば、引用は少なくなると思います。



 なお、ブログ運営の基本方針に変更はありません。



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