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原発の津波対策、「低いところ」がよいのでは?

2011-03-31 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「10m津波想定せず…全国54基、電源喪失恐れ」( 2011年3月30日08時36分 )

 全国の原子力発電所が、東日本巨大地震で発生した10メートル級の津波を想定しておらず、想定を超えた津波に襲われると福島第一原子力発電所と同様の電源喪失に陥る恐れのあることが、読売新聞社の調査でわかった。

 経済産業省は福島での事故を受けて、電力各社に対策の強化を求めるが、各社とも対応に追われている。

 大地震などの際、運転中の原子炉を安全に停止するには、炉を冷却する装置が働く必要がある。各原発は、通常の外部電源が止まった時のために非常用電源を備えるが、福島第一原発では非常用ディーゼル発電機が津波で浸水し故障した。

 読売新聞社が、全国の商業用原発54基について調べたところ、津波の想定は最高でも北海道電力泊原発(泊村)の9・8メートルで、最も低い関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は0・74メートルだった。

 各社は、非常用電源を置く敷地が津波の想定より高いことから「安全」と判断している。

 しかし、今回の津波では、福島第一原発が想定を上回る14メートルの津波に襲われたとみられるほか、日本原子力発電東海第二発電所(茨城県東海村)と東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)も、非常用の発電機を海水で冷やすポンプや熱交換機が水没で故障し、一部が使用不能になった。


 読売新聞社が、全国の商業用原発54基について調べたところ、津波の想定は最高でも北海道電力泊原発(泊村)の9・8メートルで、最も低い関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は0・74メートルだった、と報じられています (リンク先=元記事には、全国の原子力発電所における想定津波規模と非常用電源の標高を示す図が添付されています) 。



 要は、「すべての商業用原発で10メートル以下の津波しか想定していない」わけです。背景には、10メートル以上の津波を想定して対策をとれば、「コストがかかりすぎる」ので現実的ではない、という事情があるものと思われます。

 しかし、「一度事故が発生すれば大変なことになる」以上、これではまずいのではないでしょうか。



 問題は、「どういう対策をとるか」です。報道には、
各社は、非常用電源を置く敷地が津波の想定より高いことから「安全」と判断している。
とあります。私は、

   この対策そのものが、根本的におかしい

のではないかと思います。



 以下、完全に素人の意見ですが、



 津波の高さは、場所によって異なるとはいえ、「過去に発生した津波の規模を、東京電力も原子力安全・保安院も知っていた」で引用したような、38メートルもの津波の例があることを考えると、「想定される津波よりも高い位置に非常用電源がある」からといって、安全だとはいえないでしょう。

 38メートルの津波が来ても安心!! な高さに非常用電源を設置しろ、というのは、(おそらく)現実的ではないでしょう。だからこそ、東京電力も原子力安全・保安院も、過去に発生した津波の規模を知っていながら、「故意に」想定される津波の規模を小さく想定していたのだと思います。



 私が思いますに、非常用電源などの設備は「高いところ」に置くのではなく、

   濡れてもOK!!
   津波にも流されない!!

という仕様にすべきではないでしょうか? つまり、

   完全防水仕様にしたうえで、
     (たとえば) 地下に設置する

わけです。



 津波対策というと、普通は「高いところ」に設備を設置することを考えます。しかし、「低いところ」に設置するほうが、かえって安全なのではないかと思います。
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過去に発生した津波の規模を、東京電力も原子力安全・保安院も知っていた

2011-03-31 | 日記
bloomberg.com」の「Tsunami Wall of Water Risk Known to Engineers, Regulators (1)」( Last Updated: March 27, 2011 23:18 EDT )

(前略)

Japan has suffered 195 tsunamis since 400, according to Japan’s Central Research Institute of Electric Power Industry, which produced a report on tsunami threats to nuclear plants on the opposite coast to Dai-Ichi in July 2008. Three in the past three decades had waves of more than 10 meters.

A 7.6-magnitude quake in 1896 off the east coast of Japan created waves as high as 38 meters, while an 8.6-magnitude temblor in 1933 led to a surge as high as 29 meters, according to the U.S. Geological Survey.

(後略)


 日本の電力中央研究所 (Central Research Institute of Electric Power Industry) によれば、日本は西暦400年以降、195回の津波に襲われており、過去30年間で10メートル以上の津波が3回あったと報告されている。United States Geological Survey (アメリカ地質調査所) によれば、日本の東海岸では1896年のマグニチュード7・6の地震の際に38メートル、1933年のマグニチュード8・6の地震の際に29メートルの津波が発生したと報告されている、と報じられています。



 この知識を前提にして、次のニュースを読んでください。



ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版」の「【インタビュー】原子力安全委との二重チェック体制は機能=保安院の西山審議官」( 2011年 3月 24日 19:38 JST )

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が経済産業省傘下の原子力安全・保安院の西山英彦審議官(54)に、東京電力福島第1原子力発電所の復旧作業の状況や、今後の原子力政策の方向性について聞いた。

(中略)

WSJ:まだ収束していないが、行政として規制側としての反省点はあるか。

西山審議官:予測が出来なかった津波によって非常用の電源やポンプなど、炉心や使用済み燃料を冷却するために非常時に動かせるべきものが壊れてしまった。このため、なかなか本来の機能が果たせず、このような非常に厳しい状況に追い込まれている。

 これから先に原子力発電所を日本でやっていくには、もちろん停電になっては困るということがあるから、急にすべて止めるわけにはいかないだろうが、津波にも耐え得る、最後の非常用のものだけは少なくても生き残るような形にしなければいけないと思う。

WSJ:多様性のことを言っているのか。

西山審議官:それも可能性はあるのかもしれない。単純に言えば、原発が止まったときに必要な電源と、電源を動かすために必要なポンプは、どんなに大きな津波が来ても大丈夫な場所に置くとか、そういったことを行えば最低限の安全は確保されると思う。

WSJ:想定については。

西山審議官:津波の想定が甘かった。

(後略)


 原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「予測が出来なかった津波」「津波の想定が甘かった」とインタビューで述べた、と報じられています。



 「津波の想定が甘かった」という部分は、まだわかります。しかし、

   「予測が出来なかった津波」

 これ、

   おっ、おい!!

と思いませんか? 「予測していて当然」ではないのでしょうか? 今回の津波は14メートル程度と推定されていますが、歴史上、もっと大きな津波があった以上、「予測が出来なかった津波」、これはないでしょう。



 原子力安全・保安院は過去の津波の規模について「知っていて当然」であり、「知っていた」と考えてよいと思います。知っていて、なぜ、「予測が出来なかった津波」などと言うのでしょうか。責任回避を目指している、と勘繰られてもやむを得ないのではないかと思います。

 なお、次の報道 (↓)では、東京電力も原子力安全・保安院も、過去の津波について「知っていた」と報じられています。



日本経済新聞」の「[FT]福島原発、東電が軽視した津波のリスク」( 2011/3/29 0:00 )

(2011年3月26/27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 大地震の影響で損傷した東京電力の原子力発電所が危機に陥った2週間前、同社の清水正孝社長はこの事態を完全に天災のせいにした。安全を確保するためのシステムを破壊した高さ14メートルの津波は「想定外」だったと述べたのだ。

■地震学者、2年前に危険を警告

 しかし今、この東電の想定に厳しい視線が向けられている。現在も周辺に放射能をまき散らしている同社の福島第1原子力発電所がある地域で巨大津波が発生する可能性があることを、日本のトップクラスの地震学者がつい2年前に繰り返し強調していたことが明らかになったからだ。

 原子力安全・保安院が主催し、東電の社員も出席した安全性評価会議で、地震学者の岡村行信氏は、福島第一原発の設計の想定に疑問を投げかける調査結果があると警告していた。

 原子力安全・保安院のウェブサイトで公開されている議事録によれば、岡村氏は2009年6月に開かれたこの会議で、「津波に関しては・・・全く比べものにならない非常にでかいものが来ているということはもう分かっている」と述べた。

 津波に関する東電の想定、そして海底地震により引き起こされることの多い波に対処しようと同社が築いた防潮堤は、福島第一原発の運命を左右する重大なポイントになった。原発は3月11日のマグニチュード9.0の大地震を耐え抜いたが、約1時間後にやってきた津波が高さ5.5メートルの防潮堤を乗り越え、非常に重要なディーゼル発電機を破壊したからだ。

■869年にも同地域を巨大津波が破壊

 発電所の海側に設置されていたこれらの発電機は、原子炉とその隣の貯蔵タンクの中にある高温のウラン燃料棒の周囲に冷却水を循環させ続けるためのものだった。地震から1日と経たないうちに燃料棒の一部が過熱状態になり、爆発性のある水素ガスや放射性物質を大気中に放出させることになった。

 産業技術総合研究所の活断層・地震研究センター長を務める岡村氏は、原子力安全・保安院の前述の会議で、福島第一原発の設計者が考慮した1938年の津波では小さすぎるかもしれないと指摘。その証拠として、西暦869年にこの地域をもっと大きな津波が襲っていることを挙げた。

 出席していた東電の担当者は、869年の地震では被害がそれほど見当たらないと応じたが、岡村氏は、信頼できる史料にはこの津波で「城が壊れた」という記述があると反論していた。

 東電は福島第1原発の運転を40年前に始めて以来、コンクリート製の防潮堤に一切手を加えていない。また監督当局は昨年、この発電所で最も古い1号機(1971年運転開始)について10年間の運転継続を認可していた。

■警告無視し動かなかった東電

 岡村氏は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の電話取材に対して、福島で起き得る津波の規模に関する警告は、研究所が作った869年の津波のモデルに基づいていると語った。2005年以降、科学的調査で津波が残した堆積物を分析することで、この災害に関する歴史的な記述が裏づけられたという。

 岡村氏は、この地域の津波が、原発の設計が考慮した規模を超える可能性があるという証拠に従って東電が行動しなかったことに腹が立ったと言う。「私が指摘した時に東電が即座に対応したとしても、すべての被害を防げたかどうかは分からないが、彼らは対応すべきだったと思う」

 869年の災害が示唆するリスクを安全性評価報告に盛り込むべきだという再三の提案にもかかわらず、東電と原子力安全・保安院の担当者は、この問題についてはさらに検討すると述べるにとどめた。

 東電は、同社がこの問題を深く追究するのに消極的だったのは、単に、会議の主な議題が地震の地質学に関する別の技術的問題だったからだと話している。「我々は津波の問題を無視したわけではないが、それについて議論するのに適切な場だと思わなかった」と、同社の代表者は言う。

■地震、4年間で2度原発に損傷

 しかし同氏は、津波のリスクを議論するのにふさわしい場がどこだったのかは分からないとつけ加える。

 中部大学の原子力専門家である武田邦彦教授は、原発の計画に携わる地震学者は決まって、地震と津波のリスクを過小評価すると指摘する。今回、地震が日本の原発を損傷させたのは、4年間で2度目のことだ。これらの原発は、結果的に必要であることが判明した厳格な基準に満たない仕様で建てられていた。

 2007年7月には、東電の柏崎刈羽原発(原子炉7基を備えた世界最大の原発)が、日本の北東部で起きたマグニチュード6.6の地震の後に少量の放射線漏れを起こした。柏崎原発は後に、それまで確認されていなかった地質断層線の上に建てられていたことが分かった。

 地震を正確に予測することは不可能だが、批評家は、楽観的なリスク評価は、従来型のエネルギー資源をほとんど持たない国で原子力発電を強く支持する当局の姿勢を反映していると述べている。

■無視・軽視される反対意見

 彼らによれば、反対意見は無視されたり、政府が選んだ委員会でまとめられる報告書で軽視されたりするという。「地震学が間違っていたら、その後のすべてが間違っていることになる」と武田氏は話している。

【議事録の一部抜粋】

 以下は、2009年6月24日に開催された原子力安全・保安院の会議の議事録からの抜粋。この会議の席上、地震学者の岡村行信氏が福島第一原子力発電所を含む各地の原発について、地質学上の脅威に対する安全性を審査した。

 岡村氏:全く比べものにならない非常にでかいもの(津波)が来たことはもう分かっています。それに全く触れられていないのはどうしてなのか、お聞きしたいんです。

 東京電力担当者:(869年の)貞観地震については、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。

 岡村氏:被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。少なくとも、この地震に関する信頼できる記述は日本三大実録(歴史的な文献)だけだと思うんです。それには城が壊れたという記述がある。だから、そんなに被害が少なかったと判断する材料はないのではないかと思うんですが。

 東京電力担当者:すみません、ちょっと言葉が断定的すぎたかもしれません。ご案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがあるかどうかは研究課題として捉えるべきだと思っています。しかし、耐震設計上考慮する地震ということでは、福島地点を考える際には、(1938年の)塩屋埼沖地震で代表できると考えたわけです。

By Mure Dickie and Jonathan Soble




■追記
 bloomberg の記事について、「たんなる高波」なのか「津波」なのか迷いましたが、「津波」と訳すのが正確なようです。下記の記事 (↓) に「津波」と書いてあります。

河北新報社」の「38.2メートル大津波の教訓生かす 大船渡・綾里白浜


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東電は福島第一原発を維持したいらしい

2011-03-30 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「東電会長が会見で陳謝、1~4号機廃炉を明言」( 2011年3月30日15時24分 )

 東京電力の勝俣恒久会長は30日午後、体調不良で入院した清水正孝社長に代わって記者会見し、福島第一原子力発電所の事故について、「広く社会の皆様に大変なご不安、ご心配をおかけしていることを深くおわびする」と陳謝した。

 同原発1~4号機について廃止せざるを得ないと明言した。

 その上で、同原発周辺に居住する被災者の生活支援に取り組むため、「福島地域支援室」を社内に設けることを明らかにした。

 また、農作物などの事故による損害賠償については、「国の支援を受けながら、原子力損害賠償制度に基づき、誠意を持った賠償の準備をしている」とした。

 計画停電については、電力需要が増える夏場に向けて電力供給の増強を図り、「回避すべくあらゆる努力をしたい」とした。


 東京電力の勝俣恒久会長が、福島第一原子力発電所の「1~4号機について廃止せざるを得ないと明言した」と報じられています。



 「廃止せざるを得ない」というのですから、

   「やむなく廃止する」
   「できれば廃止したくなかった」

ということです。つまり、「東電は福島第一原発を再稼働させたいらしい」という私の推測は正しかったといってよいと思います。



 さて、勝俣会長は「同原発1~4号機について廃止せざるを得ないと明言した」わけです。「1~4号機については」廃止する、ということです。つまり、

   「5~6号機については」廃止するとは言っていない

わけです。要は、

   「できれば5~6号機については発電を再開したい」
   「計画中の7~8号機は建設したい」

ということだと思われます。



 福島第一原発の再稼働(発電再開)は「社会的に」難しいのではないかと思いますが、それはともかく、



 「1~4号機のみ廃止する」というのですから、

   「1~4号機は設備がかなり損傷したために、廃止する」

ということです。

   1~4号機については「技術的に」復旧の見込みはない
           ( =「発電機能は復旧不可能」の意 )

と言っていると考えてよいと思います。



■関連記事
 「海水注入の遅れは資産保護優先が原因
 「福島第一原発の再稼働は難しい (東京電力の最善の利益)
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放射線による人体への影響

2011-03-30 | 日記
 放射線による人体への影響ですが、下記のサイトをみつけました。Q&A形式で、情報が提供されています。

 「放射線、「健康に直ちに影響はない」が…」で引用した情報と関連している部分のみ、抽出して引用します。下記の情報 (日本放射線影響学会による情報) によれば、現在、とくに放射線による影響(発病等)を気にする必要はないようです。当ブログの情報も訂正しておきます。

 ほかにも有益な情報が多数ありますので、ぜひ、リンク先 (日本放射線影響学会) の情報を直接ご覧ください。



日本放射線影響学会」の「福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問窓口 (Q&A)

私達は、放射線の生物影響を研究する大学等の研究者の有志が集まった日本放射線影響学会会員の有志グループです。東北関東大地震を被災され、様々な苦難を強いられている皆様に心からお見舞い申し上げます。

私は、未曾有の大地震を映像で見て言葉を失ってしまいました。この大地震を切掛けに起きた東京電力福島第一原子力発電所で起きている原子炉事故に伴う放射線および放射性物質の放出によって地元の方々ばかりか日本国民の多くが見えないものに対するどうしようもない不安を感じておられると思います。私達は、事故の素早い収束を願っています。しかし、TV報道などを通じ、一般の皆様が日頃なじみのない放射線の健康影響について計り知れない多くの不安を抱えておられることを目の当たりにして、放射線の生物影響の専門家である私達が、自分達の持つ知識とこれまでの実験的事実に基づいて現状を解析し、皆様の疑問に答え、少しでも皆様の不安を和らげて頂きたいと思い、このQ&Aを設けました。

皆様が感じておられる不安を解く情報をこのQ&Aの解説から見つけて頂き、少しでも各自が納得いく行動を選べるように期待しています。また、このQ&Aを読まれて疑問が生じたとき、まったく新たな疑問をお持ちの時は、どうぞご遠慮なく、e-mail: gimon@rri.kyoto-u.ac.jp(渡邉)までお寄せください。メンバーが適切な解説を作り、その一部はHPに掲示するとともに皆様に回答させて頂きます。なお状況は時々刻々変化します。そのためHPの内容は、状況を判断しながら更新してゆきますのでご理解ください。

ささやかな支援ですが、少しでも皆様のお役に立つことを願いっています。

平成23年3月18日
日本放射線影響学会
福島原発事故に伴うQ&Aグループ
代表:渡邉正己(京都大学原子炉実験所放射線生命科学研究部門・教授)



解説--------------------------------平成23年3月29日午前11時現在 (ver7)

Q29 福島原発事故に伴う人への放射線リスクはどのくらいと推測されるのですか?

A:マスコミでは今回の事故のリスクを推測する参考事例としてチェルノブイリとスリーマイル島の事故を引用していますが、核分裂生成物による汚染は、実はそれより以前の方がかなりひどいということも思い起こす必要があろうかと思います。1950-1060年代、米国などが大気圏内核実験をくり返し行ったため世界中の大気が汚染され、日本の国土にも現在の約千倍から10,000倍の放射性セシウムが降下していました。しかもその汚染は核実験が禁止されるまで10年位続いていました(五十嵐康人先生達の論文、J. Environ. Radioactivity, 31 (1996年)157-169 頁を参照して下さい。ここから図を入手できます。)。この過去の事実を広く知ってもらうことも不安を和らげるために役立つのではないかと思います。ちなみにチェルノブイリの時も短期間ですが今の千倍量のセシウムが降下していました。むろんこれは原発近辺でのリスクの推測にはあてはまらず、そこから離れて核分裂生成物の汚染だけが問題になる地域での話です。現在50-60歳代以上の人は皆これらの被曝を経験していることになります。この人達にこれらのことによって健康影響がでているということはありません。くり返しますが、核分裂による放射性同位元素の世界規模での汚染は、現在の1,000倍の量で10年間、すでに経験ずみなのです。勿論、このことが安全性を確約するものではありませんが、もし、影響があったとしても、そのリスクは非常に少ないと思われます。どのくらい少ないのかを正確に理解するためには低線量放射線の生体影響研究の今後の進展を待たなければなりません。
(掲載日:平成23年3月27日)


Q25 放射線の安全規制値はどのようにして決められているのですか?

A:放射線安全規制値は、過去50年以上にわたって科学者がおこなった原爆被ばく者などの疫学調査および放射線の生体影響研究で得られた膨大な研究成果を、国連(UN)および国際放射線防護委員会(ICRP)などの専門家が収集して解析し、定期的(およそ10年ごと)におこなわれる放射線のヒトへの影響に関する勧告をもとに導きだされます。そして、現時点では、「ヒトは総線量100ミリシーベルト以下の放射線をあびてもまったく健康影響が現れない」というのが結論です。この勧告を受けて国際原子力機関(IAEA)等が、さらに検討して、安全のための規制値を国際的に提言します。その提言を受けて各国が自国の判断で規制値を定め法制化しています。我が国もこの勧告を受入れ安全規制値を作成しています。その安全規制値は、一般人に対して年間1ミリシーベルト、放射線業務従事者に対して年間20ミリシーベルトとされています。この規制値が疫学調査研究や実験の結果で人体に影響が現れない100ミリシーベルトより小さい値なのは、より安全側にたって規制するという厳しい考えを採用しているからです。安全を規制する場合、安全が確認されている数値をそのまま規制値として使うと、いざというときに対策をとる余裕がないので、安全側に設定されているのです。一般人に対する規制値である年間1ミリシーベルトは自然放射線量とほぼ同じレベルです。自然放射線とは、宇宙線、大地、空気、および食品や水に由来する放射線で、その量は、地域や標高などによって異なりますが、日本での平均はおよそ1.4ミリシーベルトです。標高が高い地域では宇宙線により、花崗岩が多い地域では大地からの放射線により自然放射線量が高くなります。したがって、一般人に対する規制値年間1ミリシーベルトというのは、「放射線事業者に対して放射線業務を行うにあたって、その業務をおこなうことによって一般人が受ける放射線量を自然放射線レベルに保ちなさい」という意味であると言い直すことができます。
(掲載日:平成23年3月27日)


Q14 仮に事故が拡大して放射線の影響がチェルノブイリ級まで広がった場合、大阪や東京での生活に影響はありますか?

A:3月15日頃から東京でも短時間の放射線レベルの上昇が見られていますが、新聞報道等にもあるとおり、それによる被ばく線量は少なく、健康への影響はありません。外出を控える必要もありません。問題は、事故が進展してさらに深刻な事態になった場合にどうなるかです。今後の展開は全く予測できませんので、ある程度極端な状況を想定して、過去の事例から学ぶしかありません。このような観点からはっきりしているのは、これまでの原子力事故において、一般住民の間で白血球が減る、髪の毛が抜けるといった急性症状は、観察されていないことです。史上最悪と言われたチェルノブイリの事故でも、2008年に発行されたUNSCEARの報告(Sources and Effects of Ionizing radiation, UNSCEAR 2008 Report Annex D: Health effects due to radiation from the Chernobyl accident, United Nations, New York, 2011.(国連科学委員会2008年報告書附属書D:チェルノブイ リ事故の放射線による健康影響))で見る限り、一般住民に確認されている放射線影響は、高濃度に汚染した地域における子どもの甲状腺がんだけです。それも、事故の後、放射性ヨウ素で汚染した牛乳を飲み続けたことが主な原因と言われています。当初、旧ソビエトが事故の存在を認めず、早い段階での避難や食品の摂取制限等が適切に行われなかったのです。したがって、これまでの原子力事故の経験に照らし合わせる限り、東京が人の住めないような場所になるとは考えにくい状況です。むしろ、人々がパニックに陥って西へ移動し始めた場合の混乱の方が懸念されます。大阪に関しては、どのような状況を想定したとしても全く問題ありません。
(掲載日:平成23年3月18日、平成23年3月22日改訂、平成23年3月24日改訂)


Q13 放射線による発がんリスクはどの程度ですか?

A:放射線によるがんと放射線以外の原因によるがんを、症状等の特徴で区別することはできません。そのため、どれくらいの被ばくをしたらがんがどの程度増えるかを知るためには、放射線を被ばくした人々と、放射線を被ばくしていない人々の間で、発がん率やがん死亡率を比較するという方法がとられます。これを疫学調査と言います。これまでの広島・長崎での原爆被爆者の方達を対象とした疫学調査を含む多くの研究結果から、100,000マイクロシーベルトの被ばくをすると自然のがん頻度に0.5%程度が上積みされると推定されています。放射線がなくても30~40%の人ががんで死亡しますから、それほど大きな値ではないことがわかります。寿命が長くなれば、がんによって死亡する確率は高くなります。この程度の被ばくであれば、喫煙や食事等の生活習慣の影響の方が大きいということです。疫学調査では、線量が低くなると、放射線を被ばくした人々と放射線を被ばくしていない人々の発がん率の差は、ほとんど検出できなくなります。従って、100,000マイクロシーベルトより低い線量の被ばくでがんの発生を気にする必要はありません。 (掲載日:平成23年3月17日)


Q12 被ばくによる身体的影響の特徴はなにですか?

A:放射線を被ばくしたことによって、身体を構成する細胞が大量に死んだ場合、その細胞が関係する部位に異常が現れます。例えば、骨髄には血液成分を作り出すおおもとの細胞(造血幹細胞)がありますが、放射線被ばくによりこれらの細胞が死に絶えると、結果として白血球や血小板、赤血球が作られなくなり、減少します。同じように毛髪の根元にある毛根の細胞が死ねば、髪の毛が抜けます。しかし、死ぬ細胞が少なければ問題にはならないため、ある程度以上の被ばくでない限り症状は現れません。最も敏感な影響とされる白血球の減少でも、500,000マイクロシーベルトという線量が必要です。 これに対して、がんと遺伝的影響は、細胞の突然変異が原因であり、低い線量でも発生確率はゼロではないとされています。しかし、100,000マイクロシーベルト以下の被ばくでこれらの影響が実際に生じるという実験事実はありません。
(掲載日:平成23年3月16日、平成23年3月24日改訂)


Q11 被ばくすると人に影響を及ぼす放射線量はどのくらいですか?

A:平均的な日本の自然放射線量は、年間およそ1,400マイクロシーベルトです。放射線障害を防止するために取り入れられている放射線作業従事者の被ばく限度は、年間20,000マイクロシーベルトです。それ以下の被ばくなら有害な人体影響をおこさないというのがこれまでの疫学調査や研究の成果を総合的に検討して導かれた結論です。しかし、この20,000マイクロシーベルトと人体に影響が現れる線量との間には開きがあり、現実には、100,000マイクロシーベルト程度の被ばくでも放射線の影響があるという報告はありません。
(掲載日:平成23年3月16日、平成23年3月22日改訂、平成23年3月24日改訂、平成23年3月29日改訂)

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放射線、「健康に直ちに影響はない」が…

2011-03-30 | 日記
(註) この記事には補足(訂正)情報があります。
  「放射線による人体への影響」も併せ(あわせ)ご覧ください。



西日本新聞」の「「放射能被害を過小評価」 ロシアの科学者 福島原発を懸念」( 2011年3月27日 00:10 )

 旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、人や環境に及ぼす影響を調べているロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士が25日、ワシントンで記者会見し、福島第1原発事故の状況に強い懸念を示した。博士の発言要旨は次の通り。

 チェルノブイリ事故の放射性降下物は計約5千万キュリーだが、福島第1原発は今のところ私の知る限り約200万キュリーで格段に少ない。チェルノブイリは爆発とともに何日も核燃料が燃え続けたが、福島ではそういう事態はなく状況は明らかに違う。

 だが、福島第1はチェルノブイリより人口密集地に位置し、200キロの距離に人口3千万人の巨大首都圏がある。さらに、福島第1の3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電だ。もしここからプルトニウムが大量に放出される事態となれば、極めて甚大な被害が生じる。除去は不可能で、人が住めない土地が生まれる。それを大変懸念している。

 チェルノブイリ事故の最終的な死者の推定について、国際原子力機関(IAEA)は「最大9千人」としているが、ばかげている。私の調査では100万人近くになり、放射能の影響は7世代に及ぶ。

 セシウムやプルトニウムなどは年に1-3センチずつ土壌に入り込み、食物の根がそれを吸い上げ、大気に再び放出する。例えば、チェルノブイリの影響を受けたスウェーデンのヘラジカから昨年、検出された放射性物質の量は20年前と同じレベルだった。そういう事実を知るべきだ。

 日本政府は、国民に対し放射能被害を過小評価している。「健康に直ちに影響はない」という言い方はおかしい。直ちにではないが、影響はあるということだからだ。


 旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、人や環境に及ぼす影響を調べているロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士は、

   放射線の影響は長期間に及ぶ。
   日本政府の「健康に直ちに影響はない」という言い方はおかしい。
   直ちにではないが、影響はあるということだからだ、

と述べた、と報じられています。



 博士の主張のうち、
放射能の影響は7世代に及ぶ
という部分は「変」だと思います。7世代といえば、およそ140年です。チェルノブイリ原発事故は1986年。とすれば、「なぜ、7世代に及ぶとわかるのか」という疑問があります。

 しかし、
 セシウムやプルトニウムなどは年に1-3センチずつ土壌に入り込み、食物の根がそれを吸い上げ、大気に再び放出する。例えば、チェルノブイリの影響を受けたスウェーデンのヘラジカから昨年、検出された放射性物質の量は20年前と同じレベルだった。そういう事実を知るべきだ。
という部分は、「推測を含まず、たんに調査結果のみを述べている」と考えられるので、信頼に値すると考えられます。



 これと同種の主張 (=放射線の影響は長期間に及ぶ) をしている記事がありましたので、引用します (↓) 。

 (下記)記事のうち、「86年のチェルノブイリ原発事故では、事故の約5年後から、子どもや若者が次々と発病しました」という部分が重要です。「健康に直ちに影響はない」が、「約5年後から」発病する、と考えられるからです。



日刊ゲンダイ」の「放射性ヨウ素が引き起こす甲状腺がんの怖さ
」( 2011年3月29日 )

喉仏に違和感があったら注意

福島第1原発の1~6号機の放水口付近の海水から検出された放射性物質の値は驚愕(きょうがく)だ。特に甲状腺がんを誘発するとされる放射性ヨウ素は法令基準限度の1150~1850倍とハンパじゃなかった。海藻を多く食べる日本人は、欧米人に比べて甲状腺がんのリスクは低いといわれるが、安全ラインをこれだけオーバーしたら影響を心配せざるを得ない。
「子どもの甲状腺がんの発症率は5年で約130倍に増えた」――。長野県松本市の菅谷昭市長は25日、内閣府の食品安全委員会でこう声を張り上げた。菅谷市長は元信州大医学部助教授で、チェルノブイリ原発事故の医療支援活動に最前線で関わった人物。その経験を買われ、参考人で招かれた「第一人者」が、警鐘を乱打したのである。
 甲状腺は、喉仏の下にある内分泌器官で、主に体の新陳代謝の調節をするホルモンを分泌する。そこに腫瘍ができるのが甲状腺がんだ。
「86年のチェルノブイリ原発事故では、事故の約5年後から、子どもや若者が次々と発病しました。乳幼児期に放射能で汚染された水や食べ物を摂取したためとみられ、およそ5000人の患者が見つかったのです」(医療ジャーナリスト)
 チェルノブイリ原発事故の医療活動を支援してきた「NPO法人チェルノブイリ医療支援ネットワーク」の河上雅夫代表はこう言う。
「ヨウ素131は体に入ると甲状腺に集まり、蓄積されます。乳幼児は細胞分裂が活発なため、どんどん吸収されるのです。甲状腺がんは早期発見すれば治る確率は高いが、発見が遅れると他の臓器に転移するおそれがあります」
 救いは、喉仏に腫瘍ができるので違和感があることだ。だから、早期発見しやすい。とはいえ、若い人は進行が速いのでやっかいだ。放射線情報に注意するに越したことはない。




■追記
 「放射線による人体への影響
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