言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

法人減税見送りの是非

2011-04-02 | 日記
毎日jp」の「参院予算委:法人減税、見送り検討…菅首相」( 2011年3月29日13時05分 - 最終更新 3月29日13時26分 )

 菅直人首相は29日の参院予算委員会で、11年度税制改正法案に盛り込んだ法人税率の5%減税について、「(東日本)大震災を踏まえ、どういう財源を優先させるのか。法人税減税も含めて議論していきたい」と述べ、復興財源確保のため、減税見送りも検討する考えを示した。

 法人税率の5%引き下げは、昨年末の税制改正論議で菅首相自ら決断した「目玉政策」。しかし、国・地方税合わせて1・5兆円規模の減収となることから、政府・与党内で「大震災の復興財源に充てるべきだ」との声が高まっている。

 また菅首相は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加、税と社会保障の一体改革について、6月に方針を示すとしていた当初予定を先送りする意向や、震災対策を民主党のマニフェスト(政権公約)よりも優先する考えを明らかにした。【坂井隆之、中山裕司】


 菅直人首相は法人税率の5%減税について、「(東日本)大震災を踏まえ、どういう財源を優先させるのか。法人税減税も含めて議論していきたい」と述べ、復興財源確保のため、減税見送りも検討する考えを示した、と報じられています。



 なぜ、法人税減税を実施すれば、減収が「減る」とわかるのでしょうか? 報道には、
国・地方税合わせて1・5兆円規模の減収となることから、政府・与党内で「大震災の復興財源に充てるべきだ」との声が高まっている。
とあります。

 たしかに、「目先は」税収が減るでしょう。しかし、長期的にみて、税収が減るとはかぎりません。減税によって税収が増えるか減るかは、現在の税率がラッファー・カーブのどの位置にあるかによって決まります (「ラッファー・カーブ理論」参照 ) 。

 「目先」税収が減ることは確実とはいえ、「長期的にみて」税収が増えるのであれば、法人税率の減税は実施すべきではないでしょうか。首相は「法人税減税も含めて議論していきたい」と述べているので、おそらく「減税によって税収が減るのか増えるのか」は明確にされていなかったのでしょう。明確にされていたなら、「議論の余地はない」はずです。

 今後、法人税減税を見送るか否か、議論をする際には、「減税によって税収が減るのか増えるのか」を検討することが重要だと思います。



 経団連と経済同友会は、次のようなコメントを発表しています。



時事ドットコム」の「法人減税の見送り容認=一体改革堅持を-経団連会長」( 2011/03/28-17:12 )

 日本経団連の米倉弘昌会長は28日の記者会見で、東日本大震災の被災地復興の財源に関して「個人的には、法人税減税をやめていただいて結構だ。その代わり、迅速に復興に動いてほしい」と語った。復興を最優先する観点から、2011年度税制改正大綱に盛り込まれた法人減税の実施見送りを容認する考えを表明した発言だ。
 一方、米倉会長は「税財政・社会保障制度の一体改革を揺るがせてはいけない」として、政府・与党は、日本の将来のために財政健全化や持続可能な社会保障制度の構築を重視する姿勢を堅持するべきだと指摘。その上で「高速道路の無料化や子ども手当、高校の授業料無償化の一時休止で、かなりの財源が出てくる」と述べ、民主党のマニフェスト(政権公約)を修正して財源を捻出するよう促した。
 さらに、12年4月就職予定の学生の就職活動について「均等な雇用機会という観点で対策を考える」として、東北・関東の被災地の学生が不利にならないための措置を経団連として検討する意向を示した。




日本経済新聞」の「同友会代表幹事、法人減税見送り「慎重に検討を」」( 2011/3/29 19:36 - 2011/3/29 21:24更新 )

 経済同友会の桜井正光代表幹事は29日の記者会見で、政府・与党内で議論されている法人減税を見送る案について「慎重に考えるべきだ」と表明した。法人減税は「企業の国際競争力の強化に不可欠」と語った。東日本大震災の復興資金などを確保するためには「マニフェスト(政権公約)の徹底的な見直しを進めるべきだ」と指摘。民主党のマニフェスト政策である子ども手当や高校無償化、高速道路無料化の休止・廃止などで5兆円規模の財源が確保できるとした。


放射性物質の検査は偏っていないか

2011-04-02 | 日記
CNN.co.jp」の「福島県産牛肉、再検査では放射性物質不検出」( 2011.04.02 Sat posted at: 10:09 JST )

東京(CNN) 厚生労働省は1日、31日に福島県産牛肉の放射能汚染を示す検査結果が出たことについて、検査過程に誤りがあった可能性を示唆した。

同省は先月31日に行われた検査で食品衛生法の基準値をわずかに超える放射性セシウムが検出されたと発表していたが、再検査を行ったところ、同一個体から放射性物質は一切検出されなかったという。同省は、最初の検査過程に問題があり、誤った検査結果が出た可能性があると説明した。

一般に先進工業国の国民は年間3ミリシーベルトの放射線を浴びているとされている。


 厚生労働省は1日、31日に放射能汚染を示す検査結果が出た牛肉を再検査したところ、放射性物質は一切検出されなかったと発表した、と報じられています。



 この種の報道は見かけますが、「逆の報道」を見かけた記憶がありません。つまり、

   放射性物質が検出されたが、
     再検査すると「検出されなかった」

の逆、

   放射性物質が検出されなかったが、
     再検査すると「検出された」

といった類(たぐい)の報道を見かけた記憶がありません。



 一般論としていえば、食品に含まれる放射性物質など、人の命にかかわるものは、

   放射性物質が検出されなかったが、
    「安全のために」再検査を行ったところ、
     放射性物質が検出された

といった順序になるのが当然ではないかと思います。

 ところが、報道をみるかぎり、実際に行われているのは、

   放射性物質が「検出されたので」
     再検査を行ったところ、今度は検出されなかった

といった順序になっているのではないかと思います。これではまるで、

   最優先事項は「国民の安全」ではなく、
         「業者の保護」である、

といわんばかりです。



 本来、「放射性物質が検出された」ものについて「再検査」をするなら、「放射性物質が検出されなかった」ものについても「再検査」をしなければならないのではないでしょうか? 「放射性物質が検出された最初の検査に問題があった可能性がある」というなら、同様に、「放射性物質が検出されなかった最初の検査に問題があった可能性もある」はずです。

 ところが実際には、「放射性物質が検出された場合にのみ」検査に問題があったかなかったかを再検討し、再検査を行うばかりで、「放射性物質が検出されなかった場合」には、検査に問題があったかなかったかを再検討し、再検査しようとする動きは、みられないのではないでしょうか。

 これはつまり、「放射性物質の有無」を「客観的に=公正に」検査しようとしておらず、検査そのものに、「放射性物質はない」という方向へのバイアスがかかっていることを示しています。

  「放射性物質がない」という検査結果が「ほしい」ために、
    「放射性物質が検出されれば再検査をする」が、
    「放射性物質が検出されなければ再検査は行わない」

という状況になっているのではないか。これでは、論理的にみて、

   検査結果データが
    「放射性物質がない」方向に偏る(かたよる)

ことになります。

 それでは困ります。いや、「検査結果データが偏ってくれたほうが好都合だ。かえって、データが偏ってくれなければ困る」ということなのかもしれませんが、それではあまりに、国民の安全をないがしろにしているといわざるを得ないでしょう。「国民の命」ではなく「業者の保護」が重要だ、というなら話は別かもしれませんが、「正確なデータを開示すれば国民がパニックになる」ことはないと思います。かえって、「偏ったデータしか開示されなければ、風評被害をもたらし、パニックになる」のではないか、と思われてなりません。



■追記
 「放射性物質が検出されなかった場合にのみ」再検査を行うのが最善、次善の策は「放射性物質が検出された場合も、検出されなかった場合も」再検査を行うことである。
 最悪の方法は「放射性物質が検出された場合にのみ」再検査を行うことであるが、実際に行われているのは最悪の方法ではないか、という趣旨です。