言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

携帯電話を購入しました

2011-08-30 | 日記
 このところ、諸般の事情により、更新が滞って(とどこおって)います。

 今日、再び携帯電話を購入しましたので(以前にも持っていたのですが解約していました)、更新がしばらく止まるときにはその旨、ブログ上で御連絡いたします (gooブログは携帯からも書き込めるらしいです) 。

 もっとも、いまのところ、電話はかけられるが、電話には出られない(受話器の取りかたがわからない)状況ではあるのですが。。。



 なお、今日は(新しい)記事を更新しています。今日の記事、「総供給曲線のシフトの影響」もお読みいただければと思います。

 大変申し訳ありませんが、いただいたコメントへの御返事も、しばらく後になりそうです。

 今後ともよろしくお願いいたします。

総供給曲線のシフトの影響

2011-08-30 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.397 )

 長期均衡にある経済についてもう一度考えてみよう。突然、いくつかの企業の生産費用が上昇したとする。たとえば、農業国で悪天候から凶作が起こり、食料品の生産費用が上昇したり、あるいは、中東で戦争が起こったことによって原油の輸送に支障が生じ、石油製品の生産費用が上昇するといったことである。
 このよ任な生産費用の上昇によるマクロ経済的影響とは何だろうか。どの物価水準の下でも、企業は財・サービスの供給量を減らしたいと考える。したがって、図12-10が示すように、短期の総供給曲線はAS1からAS2へと左方にシフトする(起こったことによっては、長期の総供給曲線もシフトするかもしれない。しかし、単純化のために、ここでは長期の総供給曲線はシフトしないと仮定する)。
 図12-10には、総供給の左方へのシフトの影響が描かれている。短期においては、経済は現在の総需要曲線上をA点からB点へと移動する。経済の産出量はY1からY2に減少し、物価水準はP1からP2に上昇する。経済が不況(スタグネーション。産出量の減少)とインフレーション(物価の上昇)を同時に経験することから、このような状況はスタグフレーションと呼ばれることがある。
 スタグフレーションに直面した政策立案者は何をすべきだろうか。簡単な選択はない。一つの可能性は何もしないことである。この場合には、財・サービスの産出量はしばらくの間Y2に落ち込んだままである。しかしながら、結局は、賃金と物価と認識が生産費用の上昇にあわせて調整されて、景気後退は自然に回復していく。たとえば、産出量が少なくて失業率が高い状態が続くと、労働者の賃金に対して下方圧力が働く。賃金が低下すると供給量が増加する。時間とともに、短期の総供給曲線はシフトしてAS1に戻り、それにつれて物価水準が低下し、産出量は自然水準に近づく。長期においては、経済は、総需要曲線と長期の総供給曲線の交点であるA点に戻る。


 スタグフレーション(物価が上昇し産出量が減少する)に直面した場合に、何もしなければ、賃金が低下することによって物価水準と産出量は元に戻る、と書かれています。



 引用文中の図を示します。著者の主張が正しいことは「あきらか」です。



★図12-10 総供給の好ましくないシフト

 物価水準  長期の     
   *    総供給  AS2
   *      x   xx  
   *      x  xx   
   *      x xx   xx短期の
   *      xxx   xx 総供給
   *・・xx・・・・・・xx   xx  (AS1)
   *  xx xx x  xx   
 P2*・・・・Bxx  x xx    
   *  xx:xx xxx     
 P1*・・xx・・:・・xxA     
   *   :xx xxx     
   *   xx  x xx    
   *  xx:  x  xx   
   * xx :  x   xx総需要
   *   :  x      
   ****************************
  0    Y2 Y1   産出量



同 ( p.398 )

 もう一つ、金融政策と財政政策を運営する政策立案者には、総需要曲線をシフトさせることによって、短期の総供給曲線のシフトの影響を一部相殺しようとする選択肢がある。この可能性は、図12-11に示されている。この場合には、政策の変更によって総需要曲線はAD1からAD2へとシフトする。総需要は、総供給のシフトがちょうど産出量に影響を与えないようになるだけシフトする。経済はA点からC点に直接移動する。産出量は自然水準のままだが、物価水準はP1からP3に上昇する。この場合、政策立案者は、費用の上昇をそのまま物価水準に反映させるので、総供給のシフトに受容的であるといわれる。
 要約すると、総供給のシフトの話には二つの重要な教訓がある。
  • 総供給のシフトによってスタグフレーションが生じることがある。スタグフレーションは、景気後退(産出量の減少)とインフレーション(物価の上昇)の組合せである。
  • 総需要に影響を与えられる政策立案者でも、景気後退とインフレーションを同時に解消させることはできない。


 スタグフレーションに際して、需要を増加させる政策をとった場合には産出量は増えず、物価水準のみが上昇する、と書かれています。



 引用文中の図を示します。



★図12-11 総供給の好ましくないシフトへの対応

 物価水準  長期の     
   *    総供給  AS2
   * xx    x   xx  
   *  xx   x  xx   
   *   xx  x xx   xx短期の
   *    xx xxx   xx 総供給
 P3*・・xx・・・・・・xxC  xx  (AS1)
   *  xx xx xxx xx   
 P2*・・・・・・xx  x xx    
   *  xx xx xxx xx   
 P1*・・xx・・・・・・xxA  xx  
   *    xx xxx   xx 
   *   xx  x xx   AD2
   *  xx   x  xx   
   * xx    x   xx総需要
   *      x    (AD1)
   ****************************
  0   自然産出量水準   産出量



 これも「あきらか」だと思います。こちらも、著者の記述内容について、とくに疑問はありません。



 以上で、『マンキュー入門経済学』は読み終えたことになります。著者の説明はわかりやすいのですが、自分の意見を述べる機会がほとんどないので、引用していて「つまらない」ですね。

 もっとも、このような状況は事前に予想していました。これを回避するため、最初にマクロ経済学とミクロ経済学を合わせた「入門」経済学を引用し、機会をみてミクロ編、マクロ編(さらに詳しく書かれた書籍)で「新たな」内容を読み込む(引用する)ことにしています。

 なお、この教科書に書かれていた内容は、「通常の経済状態」を前提としている観があり、デフレなどの「特殊な場合」にあてはまるかどうか、やや疑問が残ります。これについては、今後も機会があれば考えたいと思います。



 次は、もっと現実の問題に焦点を当てた本に移ります。



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総需要曲線のシフトの影響

2011-08-23 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.391 )

 何らかの理由により、悲観主義の波が突然経済を襲ったとしよう。その原因はホワイトハウスのスキャンダルかもしれないし、株式市場の大暴落や海外での戦争勃発かもしれない。こうした出来事により、多くの人々が将来に対する自信を失い、計画を変更する。家計は支出を切り詰めて大きな購入計画を先に延ばし、企業は新しい設備の導入を延期する。
 悲観主義の波が経済に与える影響はどのようなものだろうか。このような出来事は、財・サービスの総需要を減少させる。すなわち、どの物価水準においても、家計や企業は財・サービスの購入量を減らそうとする。図12-8が示すように、総需要曲線はAD1からAD2へと左方にシフトする。
 この図を使って総需要の減少の影響を考察できる。短期においては、経済は元の短期の総供給曲線AS1上をA点からB点へと移動する。経済がA点からB点へと移動するのに伴って、産出量はY1からY2へと減少し、物価水準はP1からP2へと下落する。産出量水準の低下は、経済が景気後退期にあることを示唆する。この図には示されていないが、企業は生産と販売の減少に対応して雇用を減少させる。このように、悲観主義が総需要曲線のシフトを引き起こすことには、ある程度自己実現的な面がある。すなわち、将来に対する悲観主義によって、所得の減少と失業の増加がもたらされるのである。
 このような景気後退に直面したときに、政策立案者は何をすべきだろうか。一つの可能性は、総需要を増加させる措置を講じることである。先に述べたように、政府支出や貨幣供給量が増加すると、どの物価水準においても財・サービスの需要量が増加し、総需要曲線は右方にシフトする。政策立案者が十分な速さと正確さをもって行動することができれば、総需要曲線の最初のシフトを相殺して、総需要曲線をAD1に戻し、経済をA点に戻すことができる(マクロ編第16章では、金融政策と財政政策が総需要に影響を及ぼす方法を、これらの政策手段を利用することの実践上の問題点とあわせてより詳細に議論している)。
 政策立案者が何も措置を講じなくても、景気後退は時間が経つと自然消滅する。総需要が減少するために物価水準が下落するが、最終的には、期待はこの新しい現実に追いつき、期待物価水準も下落する。期待物価水準が下落するにつれて、賃金と物価と認識が調整され、短期の総供給曲線は図12-8のようにAS1からAS2へと右方にシフトする。この期待の調整によって経済は時間をかけて、総需要曲線(AD2)と長期の総供給曲線との交点Cに近づいていく。
 新しい長期均衡であるC点では、産出量は自然水準に戻る。悲観論の波によって総需要は減少するが、物価水準が十分に(P3まで)下落することによって、総需要曲線のシフトが相殺されるからである。このように、長期においては、総需要のシフトは物価水準のみに反映され、産出量水準にはまったく反映されない。言い換えれば、総需要のシフトの長期的影響は名目的変化であり(物価水準の低下)、実質的変化ではない(産出量は同じ)。
 要約すると、総需要のシフトについてのこの話は、二つの重要な意味合いをもつ。
  • 短期においては、総需要のシフトによって経済の財・サービスの産出量の変動が生じる。
  • 長期においては、総需要のシフトは全般的な物価水準には影響を及ぼすが、産出量には影響を及ぼさない。


 株価暴落などによって人々が将来に悲観的になった場合、どのような影響が生じるかが書かれています。



 引用文中の図を示します。



★図12-8 総需要の縮小

 物価水準  長期の  短期の
   *    総供給  総供給(AS1)
   *      x   xx  
   *  xx   x  xx   
   *   xx  x xx   xxAS2
   *    xx xxx   xx  
 P1*・・xx・・・・・・xxA  xx   
   *  xx xx xxx xx   
 P2*・・・・Bxx  x xx    
   *  xx:xx xxx xx   
 P3*・・xx・・:・・xxC  xx  
   *   :xx xxx   xx 総需要
   *   xx  x xx   xx(AD1)
   *  xx:  x  xx   
   * xx :  x   xxAD2 
   *   :  x      
   ****************************
  0    Y2 Y1   産出量



 図がややこしくなっているので読みづらいかもしれませんが、著者が述べていることは「正しい」と考えてよいと思います。

 要は景気後退に直面したときに、政府が「財政出動や金融緩和をすれば」物価水準は元に戻り、「何もしなければ」物価水準は下落する、ということです。



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2011-08-22 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.380 )

 長期における財・サービスの供給量を決定するものは何だろうか。これまでの章で経済成長の過程を分析した際に、すでにこの疑問には暗黙のうちに答えている。長期においては、経済の財・サービスの生産(経済の実質GDP)は、資本と労働と天然資源の供給と、これらの生産要素を財・サービスに変換する利用可能な技術に依存する。物価水準はこうした実質GDPの長期の決定要因には影響を及ぼさないので、図12-4に示されるように長期の総供給曲線は垂直である。言い換えると、長期においては、経済の資本と労働と天然資源と技術が財・サービスの総供給量を決定する。そして、物価水準に何が起こってもこの供給量は変化しない。
 垂直な長期の総供給曲線は、本質的には、まさに古典派の二分法と貨幣の中立性の応用である。第11章の補論で説明しているように、古典派のマクロ経済理論は、実質変数が名目変数に依存しないという仮定に依存する。長期の総供給曲線は、産出量(実質変数)が物価水準(名目変数)に依存しないことを意味するので、この考え方と整合的である。先に注意したように、ほとんどの経済学者は、数年以上にわたる経済を研究するときにのみこの原理は機能し、毎年の変化を研究するのには役に立たないと考えている。したがって、総供給曲線は長期においてのみ垂直である。
 長期の総供給曲線が垂直であるのに、なぜ特定の財・サービスの供給曲線は右上がりなのかと疑問に思う人がいるかもしれない。その理由は、特定の財・サービスの供給は相対価格、すなわち経済の他の財・サービスの価格と比較したときのその財・サービスの価格に依存するからである。たとえば、アイスクリーム以外の価格が変わらないときに、アイスクリームの価格が上昇すると、アイスクリームの供給者は、フローズン・ヨーグルトのような他の財の生産から労働や牛乳、チョコレートなどの投入物を移してきて、アイスクリームの生産を増加させる。一方、経済全体の財・サービスの生産は、資本、労働、天然資源、技術によって限定される。したがって、経済のすべての財・サービスの価格が一緒に上昇するときには、財・サービスの総供給量は変化しない。


 長期の総供給曲線は垂直である、と書かれています。



★図12-3 長期の総供給曲線

 物価水準
   *    長期の総供給曲線     
   *    x         
   *    x       
   *    x         
P1 *・・・・・・・・x        
   *    x       
   *    x      
   *    x     
P2 *・・・・・・・・x    
   *    x   
   *    x  
   *    x  
   *    x  
   ****************************
  0   自然産出量水準   産出量



 これは認めてよいと思われます。

 次に、短期の総供給曲線について説明されている部分を引用します。



同 ( p.385 )

 さて、短期と長期における経済の重要な相違、すなわち総供給の動きに移ろう。すでに議論してきたように、長期の総供給曲線は垂直である。一方、図12-6に示されるように、短期の総供給曲線は右上がりである。すなわち、1~2年程度の期間では、一般物価水準の上昇は財・サービスの供給量を増加させる傾向にある。逆に、一般物価水準の下落は、財・サービスの供給量を減少させる傾向にある。
 物価水準と産出量の正の関係を生み出す原因は何だろうか。マクロ経済学者は短期の総供給曲線が右上がりである理由について、三つの理論を提示してきた。どの理論も、経済の供給側の行動が短期と長期とで異なる原因として、ある特定の市場の不完全性をあげている。以下に紹介する理論は、詳細においては異なるが、共通のテーマをもっている。それは、物価水準が人々の期待する物価水準から乖離すると、供給量は長期的水準、あるいは「自然」水準から乖離する、というものである。物価水準が期待水準を超えて上昇すると、産出量は自然水準を超えて増加する。物価水準が期待水準を下回って下落すると、産出量は自然水準を下回って減少する。

 硬直賃金理論 右上がりの短期の総供給曲線についての最初の、そして、最も簡単な説明は、硬直賃金理論である。この理論によれば、名目賃金は短期においてはゆっくりと調整される。すなわち「硬直的」であるために、短期の総供給曲線は右上がりになる。名目賃金の調整が遅い理由は、労働者と企業の間で名目賃金を決める契約が時には3年に及ぶ長期契約になることである程度説明される。さらに、調整が遅い原因としては、社会的規範や公正の概念が賃金設定に影響を及ぼし、時間を通じてゆっくりと賃金を変化させることもあげられるかもしれない。
 硬直的名目賃金が総供給にとってどのような意味をもつかをみるために、労働者に対して期待物価水準に基づく名目賃金を支払うことに、企業があらかじめ同意しているとしよう。もし物価水準Pが期待水準を下回って下落し、名目賃金がWで固定されたままであれば、実質賃金W/Pは企業が計画した支払水準を上回る。賃金は企業の生産費用の大部分を占めるので、実質賃金の上昇は、企業の実質費用が上昇することを意味する。企業は費用の上昇に対応するため、雇用労働者を減少させて、財・サービスの生産量を減少させる。言い換えれば、賃金は物価水準の変化に対して即座に調整されないために、物価水準が下落すると雇用と生産の利潤が減少し、企業は財・サービスの供給量を減少させる。


 短期の総供給曲線は右上がりである、と書かれています。



★図12-6 短期の総供給曲線

 物価水準
   *    
   *      短期の総供給曲線
   *          xx 
   *         xx  
P1 *・・・・・・・・・・・・・・・・xx   
   *       xx:   
   *      xx :  
   *     xx  :  
P2 *・・・・・・・・xx   :
   *   xx:   :
   *  xx :   :
   * xx  :   :
   *    :   :
   ****************************
  0     Y2   Y1  産出量



 著者によれば、実質賃金が上昇すれば、企業は雇用を減らして財・サービスの生産量を減少させるということになります。企業は賃金を下げにくいので雇用を減らすというのですが、賃金を下げるよりも解雇はもっと難しい気がします。しかし、パートなど、比較的短期間の雇用が存在することや、新規採用の抑制等をも含めて考えれば、たしかにこのような説明も成り立つのかもしれません。

 しかし、説明がどうあれ、短期の総供給曲線が右上がりであることは、データを集めたうえで「観察された事実」であるはずです。著者は明示していませんが、まず間違いなく、「観察された事実」であると考えてよいと思います。

 したがって説明が適切か否かについて、深入りする必要はないと思います。



 なお、引用文中には、なぜ右上がりになるかを説明する「三つの理論」があると書かれていますが、面倒なので「最も簡単な説明」のみを引用しています。必要であれば、直接、本を買ってください。

総需要曲線は右下がり

2011-08-21 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.373 )

 総需要曲線は、所与の物価水準における経済のすべての財・サービスの需要量を意味する。図12-3に示されるように、総需要曲線は右下がりである。このことは、他の条件が等しければ、一般物価水準が(たとえばP1からP2へ)下落すると、財・サービスの需要量が(Y1からY2へ)増加する傾向にあることを意味する。




★図12-3 総需要曲線

 物価水準
   *         
   * xx         
   *  xx       
   *   xx         
P1 *・・・・・・・・xx        
   *    :xx       
   *    : xx      
   *    :  xx     
P2 *・・・・・・・・:・・・・・・xx    
   *    :   :xx   
   *    :   : xx  
   *    :   :  総需要
   *    :   :  
   ****************************
  0     Y1   Y2  産出量



同 ( p.374 )

 なぜ物価水準が下落すると、財・サービスの需要量が増加するのだろうか。この質問に答えるために、GDP(Y)が消費(C)と投資(I)と政府支出(G)と純輸出(NX)の合計であることを思い出そう。
   Y=C+I+G+NX
この四つの構成要素は、いずれも財・サービスの総需要に寄与している。政府支出は固定された政策変数であると仮定する。他の三つの支出の構成要素、すなわち消費と投資と純輸出は、経済状況、とりわけ物価水準に依存する。したがって、総需要曲線の傾きが右下がりであることを理解するには、物価水準が消費と投資と純輸出という財・サービスの需要量にどのような影響を及ぼすから考察しなければならない。

 物価水準と消費:資産効果 あなたの財布のなかや銀行口座にあるお金(貨幣)について考えてみよう。この貨幣の名目価値は固定されているが、実質価値は固定されていない。物価が下落すると、同じ金額のドルで買うことができる財・サービスの量は増加するので、ドルの価値は高まる。このように、物価水準の下落によって、消費者はこれまでよりも豊かになったように感じ、支出を増やそうとする。消費支出の増加は、財・サービスの需要量の増加を意味する。

 物価水準と投資:利子率効果 前章の補論で説明したように、物価水準は貨幣需要量の決定要因の一つである。物価水準が下落すればするほど、家計が購入したい財・サービスを買うのに必要な貨幣保有量は減少する。それゆえに、物価水準が下落すると、家計は保有貨幣の一部を貸し出して貨幣保有量を減少させようとする。たとえば、家計は余分な貨幣を利用して、利付き債券を買うかもしれない。あるいは、余分な貨幣を利子のつく貯蓄性預金に預け、銀行はその資金を利用して融資を増やすかもしれない。いずれの場合も、家計は貨幣の一部を利子のつく資産に換えようとすることから、利子率が低下する。利子率の低下によって、新しい工場や機械に投資したいと考えている企業や、新しい住宅を購入したい(住宅投資)と考えている家計は借入れを促進させる。このように、物価水準が下落すると、利子率が低下し、投資財への支出が増大するので、財・サービスの需要量が増加する。

 物価水準と純輸出:為替相場効果 いま議論したように、アメリカの物価水準が下落すると、アメリカの利子率は低下する。それに反応して、アメリカの投資家のなかには、外国に投資してより高い収益を得ようとする人も出てくるだろう。たとえば、アメリカの国債の利子率が低下すると、投資信託はアメリカの国債を売ってドイツの国債を買うかもしれない。投資信託がドイツの国債を買うためにドルをユーロに換えると、外国為替市場におけるドルの供給が増加する。ドルの供給が増加すると、ドルは他の通貨に対して減価する。1ドルで買える他の通貨が減少するため、この減価の結果、外国財の価格は国内財に比べて割高になる。そして、実質為替相場(国内財と外国財の相対価格)の変化によって、アメリカの財・サービスの輸出量は増加し、アメリカの財・サービスの輸入量は減少する。純輸出は、輸出から輸入を差し引いたものなので増加する。このように、アメリカの物価水準の下落によってアメリカの利子率が低下すると、実質為替相場が減価する。このドルの減価はアメリカの純輸出を刺激し、それによって財・サービスの需要量が増加する(外国為替市場については、マクロ編第14章を参照してほしい)。

 要約 このように、物価水準の下落によって財・サービスの需要量が増加することには、それぞれ異なるが関連する三つの理由がある。(1) 消費者が豊かになったように感じることによって、消費財需要が刺激される。(2) 利子率が低下することによって、投資財需要が刺激される。(3) 為替相場が減価することによって、純輸出需要が刺激される。三つの理由すべてにより、純需要曲線は右下がりになる。


 物価水準が下落すると、財・サービスの需要量は増加する。つまり総需要曲線は右下がりになる。なぜなら、資産効果によって消費が、利子率効果によって投資が、為替相場効果によって準輸出が、それぞれ増加するからである、と書かれています。



 とくに疑問に感じるところがないので、今回は何も書くことがありません。



 今回の引用はメモ的なものです。つまり今後、今回の引用部分を引用して自分の意見を述べるために引用している(=メモしている)、ということです。