美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

量子力学について(その2)量子力学概論②

2020年01月06日 19時51分24秒 | 科学


古典力学と量子力学の考え方の主な違いは、次の三点です。

一つ目。古典力学が「エネルギーなどのすべての物理量は、連続量である」と考えるのに対して、量子力学は「エネルギーは、連続量ではなく、とびとびの値しかとりえない」と考えます。連続量ととびとびの値の違いは、アナログ時計とデジタル時計を思い浮かべれば分かりやすいのではないでしょうか。

二つ目。古典力学が「光は波の一種である」と考えるのに対して、量子力学は「光は波であるが粒子としてもふるまう」と考えます

ニュートン以来、光は粒子であるという考え方が主流でした。ところが1800年の「ヤングの実験」によって光が干渉することが発見されました。お互いに強め合う場所と弱めあう場所が生じる干渉は、波特有の現象なので、当実験をきっかけに「光は波である」という考え方が主流となったのです。

で、19世紀末に、金属の表面に光を当てると電子が飛び出す「光電効果」という現象が周知されることになり、「光は波である」という古典物理学では、その現象をうまく説明することができませんでした。

1905年、アインシュタインは、光は粒子としてもふるまうという内容の「光量子仮説」を発表し、「光電効果」をうまく説明できるようになりました(詳細については、いずれ触れましょう)。

三つ目。古典物理学が「物質は粒子でできている」と考えるのに対して、量子力学は「物質は粒子であるが波としてもふるまう」と考えます

以上のように、古典物理学の考え方は、マクロな世界に生きるわれわれの常識感覚に合致しますが、目に見えないミクロな現象をうまく説明することができないのです。それに対して、量子力学の考え方は、われわれの常識感覚に反するのですが、ミクロな世界を説明することができます。


高校物理解説講義:「量子力学の概論」講義2


高校物理解説講義:「量子力学の概論」講義3
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量子力学について(その1)量子力学概論①

2020年01月05日 18時23分34秒 | 科学


以前から、量子力学に興味はありました。しかし、物理学の基礎である力学もろくすっぽ知らない状態の当方には敷居が高すぎ、近づくことはありませんでした。

ところが八か月ほど前、仕事の関係で物理学とがっぷり四つを組む必要に迫られ、そのなかで量子力学の初歩に触れる機会を得ることになりました。

触れてみて、その世界の面白さに魅了されました。みなさんにもそれが伝われば、と思い、当シリーズをアップすることにいたしました。

なお、当シリーズは、全面的にbutsurikyoushiさんという理科のおそらく高校教師をなさっている方が作成・運営をしている理科専門サイト「高校物理を攻略!」https://www.youtube.com/channel/UCoQUbU6FTLtyrBILnuyAwIgとそこでの講義に使われる資料をプリントアウトできる「大学入試攻略の部屋」http://daigakunyuushikouryakunoheya.web.fc2.com/ にもっぱら依っています。この方には、いくら感謝してもし切れません。わが物理学の師であります。三年前には、わが化学の師でもありました。

では、早速はじめましょう。

***

17世紀から19世紀までの物理学を「古典物理学」といいます。この物理学は、17世紀に確立されたニュートン力学と19世紀にマクスウェルによって、ファラデーなどの業績をふまえて集大成された電磁気学とを二つの柱にしています。19世紀には、この世界のあらゆる現象は、この物理学によって説明されうる、物理学は完成された、と信じられていました。

ところが、原子などのような、肉眼では見えない小さなミクロな世界で起きている現象は、これまでの物理学では説明できないことが次第に分かってきたのです。そこで登場したのが、20世紀の新しい物理学、すなわち、量子力学だったのです。それと区別するため、17世紀から19世紀までの物理学は「古典物理学」と呼ばれるようになりました。

ちなみに量子力学の「量子」とは何かについては、いずれ詳しく説明いたします。

高校物理解説講義:「量子力学の概論」講義1
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