最近、TPPの問題点をめぐって、東京新聞が頑張っています。どうした風の吹き回しでしょう。
TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず」2013年3月7日
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
各国は今年中の交渉妥結を目指しており、日本が後れて参加した場合もカナダなどと同様に交渉権を著しく制限されるのは必至だ。
関係筋によると、カナダ、メキシコ両政府は交渉条件をのんだ念書(レター)を極秘扱いしている。交渉全体を遅らせないために、後から参加する国には不利な条件を要求する内容だ。後から入る国は参加表明した後に、先発の国とレターを取り交わす。
カナダなどは交渉終結権を手放したことによって、新たなルールづくりの協議で先発九カ国が交渉をまとめようとした際に、拒否権を持てなくなる。
交渉参加に前向きな安倍晋三首相は、「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」と繰り返しているが、政府はカナダとメキシコが突きつけられた厳しい条件を明らかにしていない。日本がこうした条件をのんで参加した場合、「聖域」の確保が保証されない懸念が生じる。
カナダ、メキシコも一部の農産品を関税で守りたい立場で、日本と置かれた状況は似ている。国内農家の反対を押し切り、対等な交渉権を手放してまでTPPの交渉参加に踏み切ったのは、貿易相手国として魅力的な日本の参加とアジア市場の開拓を見据えているからとみられる。
先にTPPに参加した米国など九カ国は交渉を期限どおり有利に進めるため、カナダなど後発の参加国を「最恵国待遇」が受けられない、不利な立場の扱いにしたとみられる。
<TPP交渉参加国> 2006年、「P4」と呼ばれたシンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイによる4カ国の経済連携協定(EPA)が発効。これに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが10年に加わり、9カ国に拡大した。その後、カナダとメキシコも参加を表明し、12年10月の協議から11カ国で交渉している。 (東京新聞)
政府がこの報道を否定していないところをみると、どうやら事実であるらしい。
また、TPP交渉参加を煽り続けてきた大手五大紙が、東京新聞の当報道に真正面から触れようとしないのは想定内と言えるでしょう。まったくもって、絵に描いたような売国奴ぶりです。
私は、当報道を目にするずっと前からTPP交渉参加に反対してきました。当報道に接することで、その思いはさらに強くなりました。
TPP交渉参加推進派の言い草のひとつは、「TPP交渉になるべく早く参加して、日本は自国に有利な条件を勝ち取ればいい」ですね。当報道は、その論拠を木っ端微塵にしてしまいました。
日本がこれから交渉に参加しても、カナダやメキシコと同じ条件を呑まされるのは目に見えています。とするならば、日本が自国に有利な条件を勝ち取るための土俵そのものが鼻っから奪われた形で交渉に臨むことを日本は強いられるのです。というか、こんなやり方は交渉でもなんでもない。最有力国のアメリカの「日本はしのこの言っていないで、アメリカ(グローバル企業)の財布になってればいいの」という本音が透けて見えますね。
東京新聞・TPP爆弾記事第二弾をお読みください。
TPP協定素案 7月まで閲覧できず 2013年3月13日
環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、日本が交渉参加を近く正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの三カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないことが分かった。複数の交渉関係筋が十二日、明らかにした。
オバマ米政権が「年内妥結」を目指し各国が交渉を進展させる中で、日本が交渉の詳細情報を得られるのは、最速でも三カ月以上たった七月ごろ。正確な情報を得るのが遅れ、日本が不利な状況で交渉を迫られるのは確実で、貿易や投資、各国共通の規制のルール作りに日本側の主張を反映させる余地がますます限られてくる。
交渉筋によると、正式に参加国と認められた段階で閲覧できるのは、各国がこれまでに協議して決めた協定の素案や、各国の提案、説明資料、交渉に関わるEメールなどで、数千ページにのぼる。参加国以外には公表しない取り決めになっている。
日本政府は協議対象となる輸入品にかける税金(関税)の撤廃や削減、食品の安全基準のルール作りなど二十一分野で関係省庁が個別に情報収集しているが、交渉の正確な内容を入手できていない。ある交渉担当者は、日本側の関心分野の多くは「参加国となって文書を見られるまで、正式には内容が分からないところがある」と述べた。
日本が参加国と認められるには、各国の承認が必要で、米国の例では議会の承認を得るために最低九十日は必要な仕組みになっている。安倍晋三首相が近く参加表明した場合でも、五月に南米ペルーで開く第十七回交渉会合に、日本は傍聴者(オブザーバー)としても参加できない。
シンガポールで十三日まで開催中のTPP第十六回交渉会合で情報収集する日本の非政府組織(NGO)アジア太平洋資料センターはじめ、米国、ニュージーランドの市民団体によると、米国の交渉担当官は会合で「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国交渉官に念押しした。さらに、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べた。 (東京新聞)
自民党の、TPPに関する六つの基本方針をあたらめて掲げましょう。これらが妥当な方針であることは論を俟ちません。
(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。
交渉の中身がいまのところ明らかにされていないし、これからも当分明らかにされない状況が続く以上、現状ではこれらの六条件を貫くことができるのかどうかまったく不明です。明らかにされた後、もしもこれらの六条件に抵触するような協定素案があったとしても、日本側がそれを変更しうる可能性はまったくありません。日本は、どんな素案であってもしぶしぶ丸呑みするよりほかはないのです。
こういうものをふつうはギャンブルと言います。それもただのギャンブルではなく、負ける可能性が極めて高いギャンブルです。そういう悪質なものに対しては、「君子危うきに近寄らず」の態度で臨むのが良識なのではありませんか。日米同盟を強化するために、歴史的に長い時間をかけて育んできた「お国柄」を破壊するのは賢い振る舞いとは言えません。ギブ・アンド・テイクのギブとテイクが、等号で結ばれるのではなく、ギブ>テイクとなるのです。というのは、国を守るためにこそ日米同盟を強化するのでしょうが、「お国柄」は、守るべき国の核心部分であるからです。アメリカに国を守ってもらうために、守るべき国の核心部分を差し出すのは、なんとも不合理なことだとは思われませんか。属国根性ここに極まれり、の思いが去来します。「非関税障壁の撤廃」とは、要するに、「お国柄」を破壊することなのです。それに加えて、ISD条項やラチェット条項によって、「お国柄」の破壊が永続化・固定化される危険性が現実のものとなってきました。
自然環境を守ることも大切ですが、「お国柄」という名の社会環境を守ることも、社会的動物としての人間にとって、極めて大切なのではないでしょうか。そういう視点を根底に織り込んだ「理性的なナショナリズム」を自分のものにすることが、いまや強く求められているのではないでしょうか。
明日十五日にも、安倍首相はTPP交渉参加を表明する形勢です。それが「日本を取り戻す」こととは正反対の意思決定であることを、私は言明しておきます。首相の心中が穏やかなものでないことを信じよう、とは思っています。
TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず」2013年3月7日
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
各国は今年中の交渉妥結を目指しており、日本が後れて参加した場合もカナダなどと同様に交渉権を著しく制限されるのは必至だ。
関係筋によると、カナダ、メキシコ両政府は交渉条件をのんだ念書(レター)を極秘扱いしている。交渉全体を遅らせないために、後から参加する国には不利な条件を要求する内容だ。後から入る国は参加表明した後に、先発の国とレターを取り交わす。
カナダなどは交渉終結権を手放したことによって、新たなルールづくりの協議で先発九カ国が交渉をまとめようとした際に、拒否権を持てなくなる。
交渉参加に前向きな安倍晋三首相は、「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」と繰り返しているが、政府はカナダとメキシコが突きつけられた厳しい条件を明らかにしていない。日本がこうした条件をのんで参加した場合、「聖域」の確保が保証されない懸念が生じる。
カナダ、メキシコも一部の農産品を関税で守りたい立場で、日本と置かれた状況は似ている。国内農家の反対を押し切り、対等な交渉権を手放してまでTPPの交渉参加に踏み切ったのは、貿易相手国として魅力的な日本の参加とアジア市場の開拓を見据えているからとみられる。
先にTPPに参加した米国など九カ国は交渉を期限どおり有利に進めるため、カナダなど後発の参加国を「最恵国待遇」が受けられない、不利な立場の扱いにしたとみられる。
<TPP交渉参加国> 2006年、「P4」と呼ばれたシンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイによる4カ国の経済連携協定(EPA)が発効。これに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが10年に加わり、9カ国に拡大した。その後、カナダとメキシコも参加を表明し、12年10月の協議から11カ国で交渉している。 (東京新聞)
政府がこの報道を否定していないところをみると、どうやら事実であるらしい。
また、TPP交渉参加を煽り続けてきた大手五大紙が、東京新聞の当報道に真正面から触れようとしないのは想定内と言えるでしょう。まったくもって、絵に描いたような売国奴ぶりです。
私は、当報道を目にするずっと前からTPP交渉参加に反対してきました。当報道に接することで、その思いはさらに強くなりました。
TPP交渉参加推進派の言い草のひとつは、「TPP交渉になるべく早く参加して、日本は自国に有利な条件を勝ち取ればいい」ですね。当報道は、その論拠を木っ端微塵にしてしまいました。
日本がこれから交渉に参加しても、カナダやメキシコと同じ条件を呑まされるのは目に見えています。とするならば、日本が自国に有利な条件を勝ち取るための土俵そのものが鼻っから奪われた形で交渉に臨むことを日本は強いられるのです。というか、こんなやり方は交渉でもなんでもない。最有力国のアメリカの「日本はしのこの言っていないで、アメリカ(グローバル企業)の財布になってればいいの」という本音が透けて見えますね。
東京新聞・TPP爆弾記事第二弾をお読みください。
TPP協定素案 7月まで閲覧できず 2013年3月13日
環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、日本が交渉参加を近く正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの三カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないことが分かった。複数の交渉関係筋が十二日、明らかにした。
オバマ米政権が「年内妥結」を目指し各国が交渉を進展させる中で、日本が交渉の詳細情報を得られるのは、最速でも三カ月以上たった七月ごろ。正確な情報を得るのが遅れ、日本が不利な状況で交渉を迫られるのは確実で、貿易や投資、各国共通の規制のルール作りに日本側の主張を反映させる余地がますます限られてくる。
交渉筋によると、正式に参加国と認められた段階で閲覧できるのは、各国がこれまでに協議して決めた協定の素案や、各国の提案、説明資料、交渉に関わるEメールなどで、数千ページにのぼる。参加国以外には公表しない取り決めになっている。
日本政府は協議対象となる輸入品にかける税金(関税)の撤廃や削減、食品の安全基準のルール作りなど二十一分野で関係省庁が個別に情報収集しているが、交渉の正確な内容を入手できていない。ある交渉担当者は、日本側の関心分野の多くは「参加国となって文書を見られるまで、正式には内容が分からないところがある」と述べた。
日本が参加国と認められるには、各国の承認が必要で、米国の例では議会の承認を得るために最低九十日は必要な仕組みになっている。安倍晋三首相が近く参加表明した場合でも、五月に南米ペルーで開く第十七回交渉会合に、日本は傍聴者(オブザーバー)としても参加できない。
シンガポールで十三日まで開催中のTPP第十六回交渉会合で情報収集する日本の非政府組織(NGO)アジア太平洋資料センターはじめ、米国、ニュージーランドの市民団体によると、米国の交渉担当官は会合で「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国交渉官に念押しした。さらに、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べた。 (東京新聞)
自民党の、TPPに関する六つの基本方針をあたらめて掲げましょう。これらが妥当な方針であることは論を俟ちません。
(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。
交渉の中身がいまのところ明らかにされていないし、これからも当分明らかにされない状況が続く以上、現状ではこれらの六条件を貫くことができるのかどうかまったく不明です。明らかにされた後、もしもこれらの六条件に抵触するような協定素案があったとしても、日本側がそれを変更しうる可能性はまったくありません。日本は、どんな素案であってもしぶしぶ丸呑みするよりほかはないのです。
こういうものをふつうはギャンブルと言います。それもただのギャンブルではなく、負ける可能性が極めて高いギャンブルです。そういう悪質なものに対しては、「君子危うきに近寄らず」の態度で臨むのが良識なのではありませんか。日米同盟を強化するために、歴史的に長い時間をかけて育んできた「お国柄」を破壊するのは賢い振る舞いとは言えません。ギブ・アンド・テイクのギブとテイクが、等号で結ばれるのではなく、ギブ>テイクとなるのです。というのは、国を守るためにこそ日米同盟を強化するのでしょうが、「お国柄」は、守るべき国の核心部分であるからです。アメリカに国を守ってもらうために、守るべき国の核心部分を差し出すのは、なんとも不合理なことだとは思われませんか。属国根性ここに極まれり、の思いが去来します。「非関税障壁の撤廃」とは、要するに、「お国柄」を破壊することなのです。それに加えて、ISD条項やラチェット条項によって、「お国柄」の破壊が永続化・固定化される危険性が現実のものとなってきました。
自然環境を守ることも大切ですが、「お国柄」という名の社会環境を守ることも、社会的動物としての人間にとって、極めて大切なのではないでしょうか。そういう視点を根底に織り込んだ「理性的なナショナリズム」を自分のものにすることが、いまや強く求められているのではないでしょうか。
明日十五日にも、安倍首相はTPP交渉参加を表明する形勢です。それが「日本を取り戻す」こととは正反対の意思決定であることを、私は言明しておきます。首相の心中が穏やかなものでないことを信じよう、とは思っています。
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