美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その39)

2019年10月28日 17時34分45秒 | 経済

川崎市議会議員の三宅隆介氏は、きわめてまっとうな経済政策の語り手・政治家のようです。貴重な人材です。
https://ryusuke-m.jp/2017/05/21/国債発行が個人金融資産を潤沢にしている/

*「Deadly Innocent Fraud#7」は、ごく短いので、一回で終わらせることができました。

ところで、当シリーズを継続的に読んでいただいている方から、「最近いささかわかりにくいところが散見されるのでは?」という趣旨の、遠慮深くも率直な感想をいただきました。ありがたいことです。長期にわたって翻訳作業をしていると、細かいところがやけに気にかかるようになります。それが災いしている、と反省しました。「筆者が言いたいところをざっくりと訳す」という当初の方針に立ちかえります。


ひどい無知による嘘っぱち#7
「今日の財政赤字の増加は、明日の増税を招くので悪いことである」
事実:
「将来に事態が改善されたときの増税をもたらす今日の財政赤字に私は賛成する」

私のこの主張を受け入れることによって、あなたは、政府の財政赤字についての通俗的な批判から距離を取り、正しく考えることができるようになります。あなたが、決然とした、見識のある意見を持つことができるように、私は#7を最後に取っておきました。

まず、政府はなぜ課税するのでしょうか。それは、財源を得るためではなくて、市場の購買力が強すぎてインフレを惹起しそうなときにその力を削減するためです。

なぜ、今日、財政赤字は増えているのでしょうか。“デパート”に売れ残りのモノやサービスがあふれていて、失業率が高く、生産が生産能力よりも少ないからです。政府が好きなものを買った後に売れ残ったモノを買うのに十分なほどの税引き後の購買力がないのです。だから、購買力を増やして、棚の売れ残りのモノやサービスをすっからかんにできるよう、減税し、財政支出を増やすのです。

では、なぜ増税するのでしょうか。財源を得るためではありません。政府の歳出がそういうふうに働いていないことを私たちは知っています。

*日本政府を例にとれば、政府は手持ちの国庫金あるいは財務省証券で調達した(つまり借り入れた)日銀当座預金をベースに予算執行を行います。で、私たち民間人は、予算執行が行われた年度の終わりに確定申告し、支払う税額を確定します。つまり、実務において政府がやっていることは「スペンディング・ファースト」なのです。

私たちが増税するのは、私たちの購買力が高すぎて、失業率が極めて低く、過剰な購買力が原因で棚の売り物がカラになり、望ましくないインフレが起こりそうなときだけです。

だから「今日の財政赤字の増加は、明日の増税を招く」という文言は、「失業率が高いときの財政支出の増加は、失業率の低下を招く。それはやがて過熱気味の経済のクールダウンをするために増税が必要になる」と変えなければなりません。それなら賛成です!

*次回から、パートⅡに移ります。モスラ―が金融界に身を置いた30余年間を通じて、「Seven Deadly Innocent Frauds」に対する理解が深まってきたプロセスが扱われます。つまり、モスラ―のMMTの血肉化が図られる、というわけでしょう。訳すのが楽しみです。
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