マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

「天タマ」第7号

2018年11月17日 | カ行
「天タマ」第07号   (1998年11月20日発行)
                浜松市立看護専門学校 哲学の教科通信

 今回は、他人に対して不満を言ったりするだけでなく、自分の出来る範囲でどう世の中を改善していくかという問題を考えました。

 部活で最上級生になった時、話し合いのシステムをどう改善したか

───私が中1のときは、部活の仲間の中の2~3人が同じ部活の先輩に呼び出されていろいろ注意を受けたりしていた。でも私たちが中3になった時は、何か問題があったら1~3年までの部員全員が集まり、部長が司会をしながら問題の解決ために意見を言い合ったりするようになった。

───1・2・3年生を3つぐらいのグループに分けて、1年生が6人、2年生が6人、3年生が4人で1つのグループを作り、そこで話し合うようにしたら、下級生も意見が出しやすくなった。

 ★ 多くの中学校の部活では、ヘンな上下関係があって、上級生が下級生をミーティングと称して呼び出して、一方的な説教をするといったことがあるようです。多くの人が「自分たちはそういう事をしたくない」と思って、自分たちは変えた、と書いています。これは嬉しかったです。残念ながら、自分たちもされたのだから、ということで、下級生に同じ事をした人もいるようです。

 学校と教師は多かれ少なかれこういう事態に気づいているのに、積極的に是正しようとしている所は少ないようです。それどころか、教師の間にいじめがあったりします。

 或る校長は私と私の娘を快からず思っていました。私が或る事で学校に問い合わせたら、電話で十分に答えられることなのに、「~日までに来てくれ」と一方的に呼び出し、娘を「協調性がない」と罵り、私にも「お父さんは我が儘なのではないか」と罵りました。その校長にはその後、裁判を通して反省していただきました。公務員は憲法第15条に「全体の奉仕者」と定められています。「奉仕者」ということは「威張ってはいけない」という意味です。

  自分が婦長などになったら、話し合いのシステムをどう改善するか

 自分が主任に成ったときとか、婦長に成ったときというのを想像すらできないような人が多かったようでした。仕方ない面もありますが、今後の実習の中で意識的にこういう事を考えてみて下さい。これと同じ事ですが、自分の生まれ育った家庭のあり方を反省し、自分はどういう家庭を築くかと考えてみることも大切な事だと思います。提案されていた具体策を箇条書きにします。

───申し送りやカンファレンス以外の時間を設ける。その時に仕事で出られない人は又別の時間を作る。部屋は2列にならないようにする。途中で反論しないようにする。

──部活(吹奏楽)で各学年、各パートの代表がいて、その代表たちが事前に話し合ったのでうまくいった。この経験から、各立場(看護婦・助手・実習生)に代表をおいて、その代表でまず話し合い、その上で皆で話し合うと好い。

──10人(実習生6人、看護婦4人)くらいのグループで毎日話し合うようにする。あるいは、婦長が毎日実習生と話すようにする。

──3回とかに分けて看護婦の会議をし、特定の人がその全部に出てまとめる。

──週1回とか曜日を決めてみんなで話し合う時間を作ると好いと思う。その時婦長が下の人の意見を引き出すようにする。

──申し送りの時間に話し合いを入れる。1日3回持つ。終わらない事柄は別に話し合いの時間を持つ。看護助手やクラークや医師を含めた話し合いを持ちたい。

──ナースステーションの全員の集まりだから意見が出ない。婦長が2~3人ずつと会うと好い。婦長が新聞を出すと好い。

──看護婦と看護助手の関係は、婦長と看護助手の関係に左右される。後者に信頼関係があれば、看護婦も自然に看護助手を尊重すると思う。

──交換日記のようなものを回し、婦長がそれを読んで、会議には代表者として出ると好い。

──どう話し合いをしていくのかを考える前に、まずお互いの人間関係を把握することが先決である。立場についての共通の認識がなければ、話し合いにならない。ここの病院は現在そこの所があいまいだから、「助手さん」「学生さん」といったひとくくりにされているのだと思う。

──新人から婦長まで活発な意見が出る状況にしたい。そのためには話し合い以外の場で色々な人に声をかけ、信頼関係を築く。そして、司会者は上の者だけでなく、新人の人にもやってもらったりすると、意見を出しやすいのでは。

──まず初日はカンファレンス室に集め、病棟の説明、どんなケアを中心にしているか、看護方針、注意点をじっくり話す。そして、物品は事前に聞いて備えておく。3日目くらいになって少し慣れた頃、学生側の不満を聞いたり、看護婦のこと、患者とのコミュニケーションなどの悩みを聞く。気楽に、そして秘密を守ることが前提。5日目か1週間くらいしてアンケートをとって、実習生とのコミュニケーションを深め、残りの日を改善して過ごす。

──横(1年目の看護婦同士とか)のつながり、と縦のつながりの両方で小グループを作り、話し合い、それをまとめる。

       講師から

 朝日新聞の土曜日の夕刊に「ビジネス戦記」という題のコラムがあります。題名から分かる通り、ビジネス社会で活躍している方々が自分の経験と考えを書いているのです。長さは一定しておらず、2~5回くらいの連載が多いようです。

 2年程前、東芝の常務をしているという森健一氏が「創造一生」と題する文を寄せられました。その内容はほとんど東芝におけるワープロ開発の苦心談でしたが、その中に次のような一文がありました。

──ある商品を開発する際には、徹底的に議論してコンセプトを詰めておくと、他社の動きは気になりません。次に何をやるべきかが分かっていますから。この手法の元となったのは、大学時代の研究室での経験です。

 私の恩師は「学問の発展のためには徹底した議論が必要」といい、議論の三原則を定めました。①チームで議論を始めれば全員対等、②相手を誹謗中傷する言葉を一言でも言えば、即退場、③議論で決着がつかなければ、リーダーが独断で決めて、全員がそれに従う、というものです。(以下略)

私はこれを読んで、日本企業の強さの秘密を知ったような気がしました。普通に思考と言われているものを「個人的思考」とするならば、議論は「集団的思考」(集団で考えること)と言えます。

 この東芝のやり方が成果を挙げたということは、この3原則は「物事を考える時に必ず守らなければならない原則」だということです。この1つ1つがなぜ正しいのか。こういう事を考えるのが私は本当の認識論であり、本当の哲学だと思っています。

         その他

──看護助手さんには、この前の実習のときとてもお世話になった。看護婦よりも何だか安心できるところがある気がする。

──昨日フリーワークでテニスをしたら、今日筋肉痛に襲われている。久しぶりに体を動かすと気分もすっきりしていいのですが、体の方が疲れを訴えてきます。

 ★ 看護婦になった元生徒で、患者さんを動かしたら筋肉痛になり、体力の落ちているのを痛感したので、それ以来スイミングプールに通っている、という人もいます。社会に出たら、健康と体力がすべての第一前提です。

──西式健康法は初めて聞きましたが、温冷浴は何かどこかで聞いたような気がします。カイロプラクティックの先生も、脊椎を矯正すれば体の調子はよくなる、と言っています。時々、医者って何だろうと思うことがあります。

──私は昨年、今年と夏休みは1ヵ月くらい山小屋で住み込みのバイトをしました。山は空気も水もおいしくて、みんな心が暖かく、帰ってくると、よっしゃー頑張れる、という気分になります。これが私の健康法かな。

──私はミシマの泉(スーパー銭湯)にはまっています。この間は1週間に2度も行ってしまいました。ラジオ深夜便も時々聞いています。とても心おだやかになる番組です。

──授業の時、先生はなんか楽しそうに笑顔で話しはじめることに気づきました。聞いていると楽しい気分になるので、いいなあと思いました。

──今日、先生から感想の紙をもらってびっくりした。前回欠席したので、来るはずがないと思っていたから、嬉しかった。欠席者に対してもここまでする先生はそういないと思う。こういう心掛けをこれからも続けて欲しい。

      お知らせ

 私のホームページ「哲学の広場」が出来ました。「授業参観をどうぞ」のコーナーにはこの「天タマ」も載っています。そのほかに哲学日記(第1回は「心の教育」)、日本語疑典(第1回は「どういたしまして」)などが載っています。ゲストブックには既に読者からの反響が寄せられています。「すてきなHPですね」と書いてくれた看護婦さんもいます。なお、本校に関係する地名、病院名、個人名などは皆匿名にしました。

     「ナース大辞苑」
   (別冊宝島『ナースという生きかた』)から

 ナースの節目にスピーチ──看護学校受験、病院実習、病院の就職面接のたびに「看護婦になった動機」を聞かれる。だから改めてこの質問をすると嫌がるナースが多い。

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