すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【女子W杯2023 決勝】そして時代はひと回りしてティキタカが復権する 〜スペイン 1-0 イングランド

2023-08-21 09:59:50 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
スペインが史上初の大会制覇

 オーストラリアとニュージーランドが共催する女子ワールドカップ2023は20日、決勝戦が行わた。スペイン女子代表(世界ランキング6位)とイングランド女子代表(同4位)が戦った。試合はオルガ・カルモナ(レアル・マドリード)のゴールでスペインが1-0で勝利した。初優勝だ。彼女たちはたった3度目のW杯出場で制覇を成し遂げた。

 スペインはグループリーグ最終戦でなでしこジャパンに負けた以外、全ての試合に勝って決勝へたどり着いた。一方のイングランドも全勝での決勝だった。

 複数のパスコースを作りショートパスを繋ぐスペインの伝統的なスタイルはティキタカと呼ばれる。だが今回、スペイン女子代表が演じて見せたのはただのティキタカじゃない。

 単にひたすらボールを繋ぐだけの旧来のティキタカではなく、あくまでその先にあるゴールを目指すスペイン女子代表の「未来型ティキタカ」が世界を制したのだ。今大会でその「未来型ティキタカ」をプレイしていたのは、実はスペインとなでしこジャパンの2チームだけだったことは歴史に刻んでおきたい。

 明日がある、未来は明るい、ということだ。

 そのなでしこジャパンの宮澤ひなたは、計5ゴールでゴールデンブーツ(得点王)に輝いた。

イングランドのボールスピードはすばらしく速い

 スペインのフォーメーションはいつもの4-1-2-3。スタイルはハイライン・ハイプレスだ。対するイングランドのフォーメーションは3-4-1-2である。イングランドのボールスピードは相変わらず、すばらしく速い。それにくらべショートパスを繋ぐぶん、スペインの球速はそれほどない。

 イングランドのビルドアップはGKからのロングボールも交えるが、スペインは徹底してグラウンダーのショートパスを繋ぐスタイルだ。

 15分。最初に際どいシーンを作ったのはイングランドだった。FWローレン・ヘンプ(マンチェスター・シティ)が左足でシュートを放つが、クロスバーを叩く。すると17分、今度はスペインのFWアルバ・レドンド(レバンテUD)のシュートがGKメアリー・アープス(マンチェスター・ユナイテッド)に弾き返される。まるでシンクロしている。

 続く29分だった。スペインが右サイドから左にサイドチェンジして展開したあと、前のスペースにスルーパスを出す。これに走り込んだ左SBのオルガ・カルモナがダイアゴナルな美しいショットを放つ。ボールはゴール右スミのサイドネットに突き刺さった。スーッと糸を引くようなグラウンダーのボールだった。これでスペインが先制だ。

 その後はゴールがなく、一進一退のまま時間が過ぎる。

 前半が残り10分になり、リードしたスペインが横パスとバックパスを繰り返して安全に時間を使う。「絶対にリードしたまま後半に折り返すぞ」という意思表示だ。繋ぐ力があるスペインに対し、イングランドが真っ向勝負し押されている格好である。

 えんえんボールを繋ぐスペインに、業を煮やしたイングランドがミドルプレスからハイプレスに変えてボールを奪いに行く。許々実々の駆け引きだ。かくて前半が終わった。

ブロックを下げ守備的になるスペイン

 後半に入り、監督から指示があったのか、リードしているスペインはややブロックを下げてきた。「金持ちケンカせず。もうリスキーなハイプレスはやりません」ということか? まだまだ時間はたっぷりあるというのに、1点を守り切るつもりなのか……。対するイングランドは4-2-3-1にフォーメーションを変えた。

 スペインがブロックを下げたため、めっきりイングランドがボールを保持するようになった。

 そして68分。イングランドのキーラ・ウォルシュ(バルセロナ)がハンドし、PKになる。スペインのFWジェニ・エルモソが右を狙って蹴ったが、GKメアリー・アープス(マンチェスター・ユナイテッド)が同方向に飛んでセーブした。これは大きい。

 しかしイングランドはボールを握って攻めるが、相手の力を柳のようにしなって受け止めるスペインの守備に合い、なかなか得点チャンスを作れない。後半アディショナルタイムは13分もある。だがスペインはあのテこのテで時間を稼ぎながら受けてくる。

 こうしてスペインはイングランドの猛攻をしのぎ切り、かくてタイムアップ。勝利の女神はスペインに微笑んだ。

 ただリードしてからのスペインは前半の終盤から時間稼ぎが露骨で、追うイングランドも焦りすぎて後半はほとんど試合にならなかった。せっかくいい大会だったのに、決勝の後半は「ない」も同然だった。もし0-0のまま後半に入ればもっと手に汗握る展開になったのに……と思うと残念だ。

 スペインの勝因は、グループリーグで日本に0-4と大敗したが動揺せず、まったくブレずに「自分たちのサッカー」を曲げなかったことだろう。自分の得意形で勝つーー。そんな彼女たちの信念の力が初優勝を引き寄せたのだ。

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