すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【コパ・アメリカ総括・2】森保監督はプレー原則を示せ

2019-07-05 10:10:47 | サッカー戦術論
人が変わればサッカーが変わる属人性を超えろ

 森保ジャパンは極めて属人的な集団だ。ゆえにどの選手が試合に出るか? でまったく別のサッカーになる。おそらく監督がプレー原則を示してないからだ。

 ちなみに「属人的」とは、例えば企業である業務を特定の人間がずっと担当しているために、その人物にしかその業務のやり方が分からない状態に陥ることだ。これでは業務効率が悪く、多くは批判的な意味で使われる。

 そして森保ジャパンは今回のコパ・アメリカでも、同じように属人的な側面を露呈した。だが基本的にサッカーのチーム作りとは、監督がまずゲームモデル(コンセプト)を設定し、局面ごとにそのモデルを実現するためのプレー原則を選手に示すことで、だれが試合に出ても同じ戦術に従いプレイできるようにするべきだ。

 これは選手の「個性を殺す」という意味ではない。例えばスピードがあり裏抜けのうまいFWがいるなら、彼を生かすゲームモデルを設定しておく。で、それに基づきチームが動けばいい。

 ではプレー原則を持たない森保ジャパンの問題点は、コパ・アメリカのどの局面でどう出たのか? ここでは相手チームのビルドアップを制限する局面のほか、トランジションとビルドアップに絞って例示して行こう。

【敵のビルドアップ制限】

 チリ戦はハイプレスで入ったが、2列目が連動せず不発に終わった。これに関しては、前からプレスをかける第1プレッシャーライン(FW)に全体が連動し矢印を前にもって行くよう、ハイプレスをかける際のプレー原則を監督が選手に徹底しておくべきだ。

 一方、ウルグアイ戦とエクアドル戦では、日本はミドルプレスで対応した。この2試合では背中で敵のパスコースを切るカバーシャドーのうまい岡崎がFWで先発したため、ミドルプレスで敵の縦パスを制限する守備ができた。岡崎がいればできるが、そうでなければできない。極めて属人的だ。

 そうではなく岡崎が入らなくても同じことができるよう、ミドルプレス時のプレー原則をチームが共有しておく必要がある。岡崎は中を切ってボールを狭いサイドに誘い込んで奪うプレッシングや、敵の攻めを遅らせる前からの守備など、「シュートを打つ人」として以外にも、チームを助ける多くの仕事をこなしている。

 せっかくこんないい教材がいるのだから、岡崎のボールのないところでのプレイスタイルをFWのプレー原則のひとつとしてチームで共有しておけば、岡崎がいないときにも代わりの選手が同じことをやれる。そういう属人的でないチームは強い。

【トランジション】

・ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)

 これも属人的だ。森保ジャパンは攻守の切り替えが速い南野と堂安がいるときは、ボールを失うとその場でゲーゲンプレッシングをかけ、高い位置でボールを即時奪回してショートカウンターをかける形になる。

 だがコパ・アメリカのように別の選手が出場すると、ボールを失った際はリトリートしてブロック守備を行うスタイルになる。試合ごとに監督が異なる指示をしているなら別だが、そうでないなら誰が出ても同じスタイルでプレイできるようにしておく必要がある。

 森保監督は選手にネガティブ・トランジション時のプレー原則を示し(即時奪回か? リトリートか?)、それに従い選手を日頃からトレーニングしておくべきだ。

・ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)

 森保監督がオーダーしているのか、試合にだれが出てもポジティブ・トランジション時には縦への速さ(速攻)を求めている。具体的には、敵からボールを奪ったら速いタイミングでグラウンダーの縦パスを狙っている。ポジティブ・トランジション時に関しては比較的、属人的ではない。

 ただし例えば香川のようなタイプが入ると、ボールを奪うといったん安全に横パスをつないでまずはしっかりポゼッションを確立しようとする(遅攻)。その意味ではやはり属人的だ。

 ならば森保監督は選手にポジティブ・トランジション時のプレー原則を示し、試合にだれが出ても同じコンセプトに則ってプレイできるようにする必要がある。

【ビルドアップ】

 コパ・アメリカでは、セントラルMFの柴崎が2CBの間に下りてビルドアップに関わる、サリーダ・ラボルピアーナを行う場面があった。SBを中盤のラインまで押し上げてサイドにスペースを作り、そこにCBの2人が開くことで柴崎を含めた3人の最終ラインで敵の第1プレッシャーライン(2トップのFW)に対し数的優位を作り、ビルドアップをスムーズにする方法だ。

 ただしこれも属人的に「柴崎が入ったらそうなる」のでなく、だれがセントラルMFでもチームとして同じことができなければならない。

 ちなみに西野ジャパンはワントップの相手チームに対しても同じことを行っていたが、ワントップに3人の最終ラインでは非効率だ。サリーダ・ラボルピアーナはあくまで数的優位を作るためのものである、と監督が原則を示すべきだ。

【まとめ】

 若い森保ジャパンはコパ・アメリカでめくるめく可能性を示した。ではもしこのチームが、同じプレー原則を共有してゲームを行えばどうだろう? プレーがさらに効率化され、チームが同じ戦術に基づいて戦う強力なオートマチズムが完成されるはずだ。森保監督には、その具現化をぜひ期待したい。

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