ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

船明ダム

2022-03-01 13:25:36 | 静岡県
2015年12月27日 船明ダム
2022年 2月26日
 
船明(ふなぎら)ダムは左岸が静岡県浜松市天竜区船明、右岸が同区日明の一級河川天竜川本流にある電源開発(株)が管理する利水多目的重力式コンクリートダムです。
包蔵電力豊富な天竜川本流では戦前より天竜川電力(のちに矢作水力)により上流部の電源開発が進められこれらの発電事業は日本発送電を経て中部電力に引き継がれました。
戦後、中部電力は大井川での電源開発に注力する一方で天竜川下流部の電源開発を行う財務・物理的余力がなく当地域の発電事業は半官半民の電源開発(株)に委ねられることになりました。
同社は1956年(昭和31年)の佐久間ダム・佐久間発電所を手始めに1958年(昭和33年)に秋葉ダム・秋葉第1~2発電所を稼働させ、次いで天竜川最下流部に1972年(昭和47年)から建設着手されたのが船明ダムです。
船明ダム建設事業には天竜川下流農業水利事業を進める農林省(現農水省)と水道事業者として静岡県企業局が事業参加し、1976年(昭和51年)に船明ダムが竣工しました。
ここで取水された水は電源開発船明発電所(最大出力3万2000キロワット)でダム式発電を行った後、磐田用水東部土地改良区管内約1万2000ヘクタール向け灌漑用水、静岡県企業局向け上工水として供給されます。
 
船明ダムには2015年(平成27年)12月に初訪、2022年(令和4年)2月に再訪しました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
右岸下流から
船明ダムの最大の特徴は純径間20メートル×扉高15.3メートル×206トンという世界最大級の9門のローラーゲート。
 
ゲートをズームアップ
天端道路を走るトラックの大きさと比較すれば、その大きさがわかるでしょう。
 
右岸ダム直下に船明発電所があり、その放流水が灌漑及び都市用水として利用されます。
左手が船明発電所の放流ゲート
手前に静岡県企業局の取水ゲート巻き上げ機が見えます。
灌漑、上工水、発電と利水は多岐に渉るため水利使用標識も多彩。
 
 
これはダム右岸の発電所の制水ゲート
これまた巨大で、至近ではカメラのフレームに収まりません。
ローラーゲートと発電所の取水口。
下流の眺め
ゲート直下シュート部分は洗堀を防ぐためコンクリでがっちり固められています。
また天竜川各ダムの堆砂に伴う河口部の海岸線後退に対処するため、各ダムで排砂された土砂を当ダム下流から流下させています。
 
総貯水容量1457万8000立米のダム湖
上流には天竜ボート場があり、東海地区の漕艇競技のメッカとなっています。
ここをホームにする地元天竜高校は高校ボート競技の強豪校です。
 
左岸から下流面
対岸に船明発電所と静岡県企業局の取水口があります。
 
天端は県道360号線が通っています。
世界最大クラスのローラーゲートを支えるピアも高い。
左岸から船明発電所の取水口を遠望。
左岸から上流面
川沿いに桜が並び、春には花見客でにぎわいます。
 
船明ダム湖上流には『月』地区があります。
この標識から、『地球で月に最も近い場所』とされています。笑
(追記)
船明ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
1174 船明ダム(0142)
左岸 静岡県浜松市天竜区船明
右岸        同区日明
天竜川水系天竜川
AWIP
24.5メートル
220メートル
14578千㎥/4157千㎥
電源開発(株)
1976年
◎治水協定が締結されたダム