ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

高薮発電所本流取水堰

2021-12-07 08:00:00 | 高知県
2021年11月23日 高薮発電所本流取水堰
 
高薮発電所本流取水堰は左岸が高知県吾川郡いの町高薮、右岸が土佐郡大川村下切の一級河川吉野川本流上流部にある住友共同電力(株)が管理する発電目的の表面石張り練積コンクリート曲線重力式堰堤です。 
別子銅山を経営していた住友財閥は新居浜に金属精錬および関連事業を集約、その電力確保のため傘下の土佐吉野川水力(株)(のちに四国中央電力(株)、現住友共同電力(株))を通じ吉野川上流域での電源開発に乗り出します。
そして1930年(昭和5年)に完成したのが高薮発電所本流取水堰で、ここで取水された水は約2.8キロの導水路で高薮発電所に送られ、最大1万4300キロワットの水路式発電を行っています。
同社は吉野川上流域での電源開発をさらに進め、1939年(昭和14年)に当取水堰上流約3キロ地点に大橋ダムを建設するとともに、水量豊富な吉野川の水をより効率的な発電のために仁淀川水系に流域変更させる『仁淀川分水発電事業』に取りかかります。
しかし電力国有化の流れの中、高薮発電所を除くすべての発電施設は日本発送電に接収され、戦後の電気事業再編政令により四国電力が事業継承しました。
そのため高薮発電所及び取水堰堤は現在吉野川本流で住友共同電力が所有する唯一の発電施設となっています。
また当取水堰堤は堤高11.6メートルとダムの要件を満たしていませんが、戦前の貴重な石積堰堤としてダム便覧に参考掲載され、その技術的・歴史的価値を評価してBランクの近代土木遺産に選ばれています。
 
大橋ダムから東に約3キロ、吉野川に架かる県道17号線高薮橋から高薮発電所本流取水堰堤を見下ろすことができます。
表面は石張り、緩やかに曲線を描く美しい石積堰堤です。
 
左岸には放流ゲートが2門、さらにその左手(右岸側)には魚道があります。
堰堤直下には三波川変成帯らしく結晶片岩がごろごろ。
 
小型の石が不規則に積まれています。
堤頂部はコンクリートで強化されていますが、こちらはまるで子供の粘土細工のような設え。
 
ゲート扶壁は独特な階段状。
 
導流部と魚道を仕切る導流壁側面も石積。
 
導流壁と堰堤との間からはカエルの顔のような岩が突き出ています。
自然の岩盤をうまく利用して築かれたようです。
 
 
高薮発電所への取水口と過激派のアジトのような管理棟。 

早明浦大橋長沢大森川と大物が続く吉野川上流域ですが、小粒でもピリリと辛いそんなビンテージ堰堤です。
 
S512 高薮発電所本流取水堰(1762) 
左岸 高知県吾川郡いの町高薮 
右岸 高知県土佐郡大川村下切 
吉野川水系吉野川 
 
 
11.6メートル 
53.4メートル 
---千㎥/---千㎥ 
住友共同電力(株) 
1930年 


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