ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

安濃ダム

2023-05-04 18:00:00 | 三重県
2015年12月30日 安濃ダム
2023年 4月21日
 
安濃ダムは三重県津市芸濃町河内の二級河川安濃川本流上流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
伊勢は平安時代より播磨や尾張などとともに我が国屈指の穀倉地帯として発展、清盛など桓武平氏躍進の経済的基盤となってきました。
そんな中、現在の津市から亀山市南部にわたる中勢地域では、水源となる安濃川の流路が短く流域面積が些少なため渇水時の干ばつが絶えず、安定した水源確保や灌漑設備の拡充が強く求められていました。
1972年(昭和47年)に農林省(現農水省)による国営土地改良事業中勢地区が着手され、その灌漑用水源として1985年(昭和60年)に竣工、1988年(平成元年)より運用が開始されたのが安濃ダムです。
土地改良事業全体も1990年(平成2年)に竣工、ダムの管理は三重県農林水産部が受託し津市から亀山市に至る約3600ヘクタール(現在は3100ヘクタール)の農地への灌漑用水補給が開始されました。
事業の完成により稲作を軸に小麦、大豆を組み合わせた土地利用型農業が進展、また野菜、花卉、果樹などの園芸農業も展開され農業経営の効率化大規模化に大きく貢献しました。
また2016年(平成28年)には利水放流を利用した中勢用水小水力発電所(最大出力338キロワット)が稼働しています。

安濃ダムには2015年(平成27年)12月に初訪、2023年(令和5年)3月に再訪しました。
写真はすべて再訪時のものです。
 
堤高73メートル、堤頂長212メートル
クレストラジアルゲート3門を備え農業用コンクリートダムとしてはかなり立派な体躯
右岸(向かって左手)に低水放流ゲート
左岸(向かって右手)手前は転流工、奥には小水力発電所と利水放流ゲートがあります。


右岸の低水放流ゲートをズームアップ
副ダム下流には減勢・洗堀防止目的のブロックが並びます。


右岸から下流面。


放流設備と小水力発電所をズームアップ
訪問時は田植えを控え発電放流も併せて8.82㎥/秒と年間最大の利水放流実施中。


天端は管理事務所開館中のみ車両通行可。


錫杖湖と名付けられたダム湖は総貯水容量1050万立米と、本州の農業用ダムとしては屈指のスケール。
右奥に艇庫とインクラインが見えます。


艇庫とインクラインをズームアップ。


左岸の管理事務所
農業用ダムですので、県農林水産部所管となります。
こちらにも浮き桟橋がありボートが繋留されています。


ゲート越しに
灌漑用水は安濃川下流の頭首工から取水されます。


水利使用標識。


ダム上流面
灌漑用水最需要期ということで満水。


上流から遠望
右から低水放流ゲート予備ゲート、クレストラジアルゲート、取水設備という並び。
 
(追記)
安濃ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1332 安濃ダム(0152)
三重県津市芸濃町河内
安濃川水系安濃川
73メートル
212メートル
10500㎥/9800㎥
三重県農林水産部
1989年
◎治水協定が締結されたダム