ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

坂東溜

2023-05-02 18:00:37 | 三重県
2023年4月21日 坂東溜

坂東溜(ばんどうため)は三重県桑名市多度町美鹿の木曽川水系肱江川右支流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
員弁川左岸地域では農地開発が可能な平坦地は台地上に広がるため、新田開発にあわせて多数の溜池が作られ三重県屈指の溜池密集地帯となっています。
現在のいなべ市員弁町坂東新田では農地開拓を進めるにあたり、至近に適当な水源がなかったことから境界や水系を超えた多度町(現桑名市多度町)の木曽川水系肱江川上流で水利権を確保しました。
ダム便覧の竣工年度は1963年(昭和38年)になっていますが、これは記録に残る改修や整備が竣工した年度で、実際には昭和初期に築造されたものと推察されます。
また池の建設費用の大半は受益者で組織された水利組合が賄ったようで、現在は水利組合を引き継いだ員弁町坂東溜土地改良区が管理を行っています。
なお北勢地域では溜池のことを単に『溜』と呼ぶことが多く、坂東溜のほかにも多数の○○溜という溜池が存在します。

坂東溜と受益地の坂東新田地区との位置関係。
市の境界、水系を跨いでおり、木曽川水系の水が流域変更して員弁川水系の坂東新田地区に送られます。


トヨタ車体の巨大な工場をやり過ごすといなべモータースポーツランドのモトクロスコースが現れます。


モトクロスコースの脇に池へ乗り口があります。
チェーンが掛かり関係者以外立ち入り禁止の警告板がありますが、今回は事前に土地改良区の立ち入り許可を頂いております。


歩くこと1~2分で天端脇に到着。
左手は斜樋機械室
天端には轍が残りますが、かなり草が伸びています。


斜樋。
上流面はコンクリートブロックで護岸されていますが、こちらも草が伸び放題。


貯水池
田植え時期を控えていますが、水位は低め。
総貯水容量はダム便覧では8万1000立米、ため池データベースでは4万立米。



左岸の越流式洪水吐
こちらはツツジなどの灌木が茂りご覧のありさま。
下りようと思いましたが、ヒルがいたのでやめました。


下流面も草ぼうぼう。


池の手前に下に続くトレースがあったので辿ってみると底樋桝発見。
ここで灌漑用水と河川維持放流を分水します。


底樋桝を下から見上げると。


堤体を下から見上げます
下半分が木が茂り森状態
見た目では便覧の堤高29.5メートルにはとても届かない感じ
ため池データベースの18メートルが妥当でしょう。


基部は石積みの擁壁。
堤体直下をパイプが通ります。
この先に洪水吐導流部があり、底樋桝で分水された河川維持放流用の水がこのパイプで送水されるようです。

坂東溜自体は木曽川水系肱江川の支流ですが、受益地の坂東新田は員弁川水系となり、流域変更して灌漑用水の補給が行われる点が味噌です。

1245 坂東溜(1971)
ため池データベース 242051001  
三重県桑名市多度町美鹿 
木曽川水系肱江川右支流 
 
 
29.5メートル(ため池データベース 18メートル) 
123メートル(ため池データベース 120メートル) 
81千㎥/76千㎥(ため池データベース40千㎥/40千㎥)   
員弁町坂東溜土地改良区 
1963年