ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

上平第一溜池

2023-04-27 18:32:21 | 岐阜県
2023年4月20日 上平第一溜池

上平(うわだいら)第一溜池は岐阜県恵那市三郷町野井の庄内川水系土岐川左支流にある灌漑目的のアースフィルダムです。
恵那市三郷町野井地区は『上平』の通称が示すように土岐川左岸丘陵上に位置し、水利に乏しく農地開拓には安定した水源確保が必須となっていました。
大正期に入り貯水池建設機運の高まりを受け耕地整理組合が結成され、組合による事業で1925年(大正14年)に建設されたのが上平第一溜池です。
その後上下流に第二、第三溜池が築造され併せて約7万立米の貯水容量が確保されました。
現在は恵那土地改良区が管理を行い、引き続き野井地区に灌漑用水を供給しています。

恵那市三郷町野井の大規模農道『東美濃ふれあい街道』沿いに溜池への入口があります。溜池に通じる道路にはチェーンが張られているため、ここに車をデポし徒歩で溜池に向かいます。

溜池までは約1キロ、15分ほどの行程ですが東海自然歩道にもなっており歩く分には全く問題ありません。
狭い谷に急傾斜で盛り立てられているためか?真下から見上げた堤体は堤高17メートルよりもはるかに高く見えます。
天端への道が堤体に九十九折れにつけられています。
左岸(向かって右手)には洪水吐斜水路。


ダム下の底樋管。
野井地区ではちょうど田植え準備が真っ盛り、水が勢いよく流れています。


底樋管からの水は洪水吐に合流します。
専用の灌漑用水路はなく川を通じて用水補給を行うようです。


堤体につけられた九十九折れの道
東濃地方では花崗岩が広く分布しており、擁壁にも花崗岩の切石が谷積みされています。


天端
草は刈られていますが、轍はありません。
そばを東海自然歩道が通っているためか?貯水池側にはフェンスが張られています。


天端からの眺め
ダムの下流は杉林が続きます。
受益地となる野井地区の農地は1キロ以上下流になります。


総貯水容量5万4000立米と小さな溜池です。
『山中にひっそりと佇む』という飾り言葉がぴったり。


左岸の洪水吐脇から見た上流面。


草が生えていますが、上流面も花崗岩の切石で護岸。
たぶん竣工当時のものがそのまま残っていると思われます。


左岸の洪水吐
越流堤はなく流路がわずかに高くなっています。


洪水吐導流部
こちらの擁壁も谷積み。
写真ではわかりませんが、流路にも石が敷かれています。


地形図を見ると受益地の野井地区は水利が乏しいのが一目瞭然。
小さな溜池ですがよく整備された様を見ても貴重な灌漑用水源であることがわかります。
また、九十九折れの道路擁壁や上流面、洪水吐などに竣工当時のままと思しき花崗岩の石積みが多々残り、なかなか見ごたえのある溜池です。
一方で取水設備の写真を撮るのをすっかり失念していました。
ダム便覧フォトアーカイブスを見ると右岸にシャフト一本の斜樋があるようです。

1058 上平第一溜池(1967)
ため池データベース 212100246 
岐阜県恵那市三郷町野井
庄内川水系土岐川左支流


17メートル

80メートル
54千㎥/54千㎥
恵那土地改良区
1925年