ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

今渡ダム

2023-04-29 18:04:25 | 岐阜県
2023年4月20日 今渡ダム

今渡ダムは左岸が岐阜県可児市今渡、右岸が同県美濃加茂市川合町1丁目の木曽川本流にある関西電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流が続く木曽川水系では大正期より本支流での電源開発が活発化し、昭和初期には日本屈指の発電地帯となっていました。
しかし発電所の出力調整による水位変動は下流での灌漑用水の取水や漁業への影響が大きく看過できない状況となりました。
事態を打開するため木曽川で発電事業を行っていた大同電力と飛騨川で発電事業を行っていた東邦電力2社の共同出資により新たに愛岐水力(株)が設立され、同社によって1938年(昭和13年)に木曽川・飛騨川合流点直下に建設されたのが今渡ダムです。
今渡ダムは逆調整池として上流の発電所の出力調整による水位変動を緩和するほか、併せて建設された今渡発電所(最大出力2万キロワット)でダム式発電を行います。
ダム・発電所は1941年(昭和16年)に日本発送電に接収されたのち、1956年(昭和26年)の電気事業再編政令により関西電力が事業継承しました。
その後1995年(平成7年)に右岸に美濃川合発電所(最大出力2万3400キロワット)が新設され現在の今渡ダムの発電能力は計4万3400キロワットとなっています。
今渡ダムおよび今渡発電所は戦前の貴重な土木建築物としてBランクの近代土木遺産に選ばれています。

今渡ダム下流の国道21号線『新太田橋』から
堤高34.3メートル、堤頂長308メートル
19門のローラーゲートで木曽川を締め切ります。ゲートはもちろん関電ブラック。
向って左手(右岸)に美濃川合発電所、右手(左岸)に今渡発電所があります。
左右両岸に発電所のあるダムは珍しい。


6番ゲートと7番ゲートの間に舟筏流路があります。


右岸の遊歩道からダム下流の河原に下りることができます。
余りにも川幅が広いため、超広角じゃないと発電所も含めた全景が撮れません。
両発電所ともに常時発電を行っており、河川維持放流は発電所の放流水および魚道経由となります。


舟筏流路をズームアップ。


1995年(平成7年)に稼働した美濃川合発電所。
従来ゲート放流されていた水量の有効利用のため新たに建設されました。
発電所の擁壁とゲートの間に魚道があります。

右岸から今渡発電所を遠望。


ズームアップします。
ほぼ竣工当時の姿を残し、ダムともどもBランクの近代土木遺産に選ばれています。
ちょっとわかりづらいですが、発電所の左手のダム最左岸に塵芥流路があります。


美濃川合発電所取水ゲート
関電ブラックじゃない!


上流から見た取水工
手前には塵芥除去装置が並びます。


上流面
対岸に今渡発電所の取水工があるんですがちょっと遠すぎます。


左岸から
昭和10年代の設計らしい絨毯を広げたような平面的なシュート
滑り台のような舟筏流路はこのダムならでは。


残念ながら今渡発電所の撮影ポイントはほとんどありません。
左手が発電所建屋、奥に取水ゲートが見えます。
こちらは関電ブラック。


ダム直上をJR大多線が走っており、車窓からダム上流面がよく見えるようです。
今回はまだ次のダムが残っていたの乗車する時間的余裕がありませんでしたが、機会があれば列車から舟筏流路の上流側を見てみたいものです。

(追記)
今渡ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

1067 今渡ダム(1968)
左岸 岐阜県可児市今渡 
右岸 岐阜県美濃加茂市川合町1丁目
木曽川水系木曽川
34.3メートル
308メートル
9470千㎥/4240千㎥
関西電力(株)
1939年
◎治水協定が締結されたダム