ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

御所ダム

2016-04-25 13:00:00 | 岩手県
2016年4月23日 御所ダム
 
御所ダムは岩手県盛岡市繋の北上川水系雫石川にある重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド)の多目的ダムです。
北上特定地域総合開発計画(KVA)によって建設された特定多目的ダムで、1981年(昭和56年)に同計画最後のダムとして竣工しました。
雫石川および北上川の洪水調節、既得取水権としての流域への灌漑用水の補給と安定した河川流量の保持、盛岡市への上水道用水の供給、岩手県企業局御所発電所(最大1万3000キロワット)でのダム水力発電を目的としており、洪水調節については北上川ダム統合管理事務所で四十四田ダム湯田ダム田瀬ダム胆沢ダム(再)とともに統合管理されています。

ダム湖である御所湖は湖畔に繋温泉があるなど盛岡有数の観光地になっており、ダム湖の利用者は全国のダムの中でもトップクラスとなっています。
2021年(令和3年)に『北上川上流総合開発ダム群』として土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
今回は四十四田ダムとともに実施されたクレスト放流見学のために訪問しました。
国道46号を西に向かい繋十文字交差点を左折するとダム左岸の駐車場に到着します。
駐車場から、手前はロックフィルになっています。
 
堤体下には桜が植えられた芝生の広場があります。
普段は立ち入り禁止ですが、放流イベントに合わせて開放されました。
 
放流開始前のゲート、手前は岩手県企業局が運営する御所発電所。
 
堤体下の桜も満開、放流に彩りを添えました。
 
 
天端
奥は管理事務所で周辺にはさまざまなレクリエーション施設が広がっています。
 
発電用の取水口と上水道の取水棟。
 
天端から放流を見下ろします。
 
右岸から
左岸はロックフィル、右岸は重力式コンクリートのコンバインドダム。
 
右岸上流から
 
普段立ち入りできない左岸堤体下から放流を見ることができました。
四十四田ダム同様桜は満開、盛岡の2基の国交省直轄ダムはともに堤高は高くなかったものの、赤いゲートと白い放流のコントラストが美しい優雅なダムでした。
 
追記
御所ダムには洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0256 御所ダム(0323)
岩手県盛岡市繋
北上川水系雫石川
FNWP
GF
52.5メートル
327メートル
65000千㎥/45000千㎥
国交省東北地方整備局
1981年
◎治水協定が締結されたダム

四十四田ダム(元)

2016-04-25 12:00:00 | 岩手県
2016年4月23日 四十四田ダム(元)
 
四十四田ダムは左岸が岩手県盛岡市上田、右岸が同市下厨川の一級河川北上川本流にある重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド)の多目的ダムです。
北上特定地域総合開発計画(KVA)によって建設された特定多目的ダムで、1968年(昭和43年)に同計画4番目のダムとして竣工しました。
北上川の洪水調節、岩手県企業局四十四田発電所(最大1万5100キロワット)でのダム水力発電を目的としており、洪水調節については当ダム右岸にある北上川ダム統合管理事務所で御所ダム湯田ダム田瀬ダム胆沢ダム(再)とともに統合管理されています。
北上川本流に架かる唯一のダムであり、また両岸の岩盤が脆弱なため中央が重力式コンクリート、両岸がフィルダムのと弱いため重力式コンクリート・フィル複合ダムとなっています。
また建設当時の北上川は松尾鉱山から流下する強酸性の水質となっており、堤体コンクリートやゲートは耐酸性水対策が施されています。
 
平成以降の北上川上流域での洪水被害の多発を受け、2019年(令和元年)に『北上川上流ダム再生事業』が採択され、四十四田ダムの再開発が着手されました。
具体的には堤体の嵩上げにより、貯水容量を増加させ洪水調節容量を従来の3390万立米から4140万立米に増大させることで治水能力の強化を図ります。
 
今回は満開の桜の時期に合わせたクレストゲートからの試験放流のイベントに合わせて、急きょ訪問することにしました。
上流面
桜は満開ですが、あいにくの曇天。
 
放流開始前のゲート。
 
放流開始後、次第に日差しが入ってきました。
堤高は低いものの、赤いゲートと白い放流のコントラストが素晴らしい。
 
満開の桜とともに。
 
 
ゲートをズームアップ。
 
 
天端から放流を見下ろします。
 
左岸から
手前は岩手県企業局四十四田発電所。
 
左岸展望台から
晴れていれば岩手山が見えるんですが・・・
でも満開の桜で十分。
 
 
 
ダム巡りを始めて半年、初めて見るクレスト放流です。
堤高はないものの北上川をがっちり塞ぐダムの放流は『雄大』の一言です。
満開の桜が赤と白のコントラストを一段と際立たせた素晴らしい放流イベントでした。
 
追記
四十四田ダム(元)には洪水調節容量が設定されていますが、豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0249 四十四田ダム(元)(0322)
左岸 岩手県盛岡市上田
右岸       下厨川
北上川水系北上川
FP
GF
50メートル
480メートル
47100千㎥/35500千㎥
国交省東北地方整備局
1968年
◎治水協定が締結されたダム
-----------------
3706 四十四田ダム(再)
左岸 岩手県盛岡市上田
右岸       下厨川
北上川水系北上川
FP
GF
52メートル
560メートル
54600千㎥/43000千㎥
国交省東北地方整備局
2019年~

煙山ダム

2016-04-25 11:00:00 | 岩手県
2016年4月23日 煙山ダム
 
煙山ダムは岩手県紫波郡矢巾町煙山の北上川水系岩崎川にある農地防災・灌漑目的のアースフィルダムです。
1959年(昭和34年)に着手された農林省(現農水省)の国営農業水利事業雫石川沿岸地区および県営防災ダム事業により1967年(昭和42年)に竣工しました。
岩崎川の洪水調節および鹿妻穴堰土地改良区への灌漑用水の供給を目的とし、運用開始後は矢巾町が管理を受託しています。
 
ダムの北側を町道が通っており、左岸に駐車場があります。
天端入り口には『新奥の細道ハイキングコース』の道標が設置される一方、関係者以外立ち入り禁止の車止めがあり一見矛盾する内容となっています。
実は関係者以外立ち入り禁止はあくまでも車両の乗り入れを禁止するもので徒歩での立ち入りは問題ありません。かなり紛らわしい。

500メートルを超える堤体は途中で屈曲しています。
 
堤体直下から見るとよくあるアースダム。
 
右岸に管理事務所や洪水吐があります。
背後は城山で東北自然歩道のハイキングコースが続いています。
 
右岸から
500メートルを超える堤体。
 
洪水吐。
管理事務所の奥に斜樋があります。
 
テーブル型洪水吐
パイ生地みたい・・・
 
減勢工
右に取水設備からの導水路があります。
 
追記
煙山ダムには農地防災容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0248 煙山ダム(0321)
岩手県紫波郡矢巾町煙山
北上川水系岩崎川
FA
21.8メートル
528.5メートル
1410千㎥/1280千㎥
矢巾町農林課
1967年
◎治水協定が締結されたダム

葛丸ダム

2016-04-25 10:00:00 | 岩手県
2016年4月23日 葛丸ダム
 
葛丸ダムは岩手県花巻市石鳥谷町大瀬川の北上川水系葛丸川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
岩手県中央部に位置する紫波平野は灌漑用水源である滝名川の水量が乏しい上に年間降水量も少なく、安定した水源確保は江戸時代からの悲願となっていました。
1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)の国営農業水利事業により山王海ダム(元)が完成しますが、その後の営農の大規模化などにより再び用水不足が顕在化しました。
これを受け1978年(昭和53年)から農水省により国営農業水利事業山王海地区が着手され1991年(平成3年)に建設されたのが葛丸ダムです。
さらに2001年(平成13年)には山王海ダムの再開発事業が竣工し両ダム併せた貯水容量は4225万立米と事業開始前の4.4倍に増大しました。
完成後は岩手県農林水産部が管理を受託し山王海土地改良区約3900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
また両ダムはトンネル導水路によって結ばれて需要に合わせて水の相互融通が行われます。農業用ダムの2ダム一体運用は今のところ山王海ダム(再)と葛丸ダムだけです。
 
花巻市石鳥谷から葛丸川に沿って市道を西に進むと葛丸ダムに到着します。 
右岸からダム下流面
対岸に管理事務所と洪水吐が見えます。
 
上流面
取水棟が見えます。
山王海ダム同様、このダムも本体への立ち入りができません。
 
管理事務所と取水設備をズームアップ。
 
 
ダム湖を回り込んで左岸にアプローチしますが・・・
見えそうで見えない洪水吐。
 
下流から洪水吐導流部を見ることができました。
ここから見る限り洪水吐は越流式でゲートはないようです。
 
右岸ダムサイトにある宮沢賢治の歌碑。
 
このあと葛丸川上流にある、山王海ダムへの送水用の頭取工を見に行きましたが、落石が多く断念しました。
 
追記
葛丸ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たな洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0264 葛丸ダム(0320)
岩手県花巻市石鳥谷町大瀬川
北上川水系葛丸川
51.7メートル
220メートル
5000千㎥/4650千㎥
岩手県農林水産部
1991年
◎治水協定が締結されたダム

山王海ダム(再)

2016-04-25 09:00:00 | 岩手県
2016年4月23日 山王海ダム(再)
 
山王海ダムは岩手県紫波郡紫波町土館の北上川水系滝名川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
岩手県中央部に位置する紫波平野は灌漑用水源である滝名川の水量が乏しい上に年間降水量も少なく、安定した水源確保は江戸時代からの悲願となっていました。
1944年(昭和19年)に農地開発営団事業として山王海ダム建設が着手され、戦後農林省(現農水省)直轄の国営農業水利事業として引き継がれ1952年(昭和27年)に山王海ダム(元)が竣工しました。
山王海ダム(元)は日本のアースダムとしては初めて土質工学を取り入れて建設され、堤高37.4メートル、堤頂長150メートルは完成当時は東洋一のアースフィルダムと謳われました。
農業水利事業の竣工により紫波平野では畑作から稲作への転換や区画整理が進められますが経営の大規模化に伴い再び用水不足が顕在化しました。
これを受け1978年(昭和53年)から農水省により2期にわたる国営農業水利事業山王海地区が着手されまず1期事業により1991年(平成3年)に新たに葛丸ダムが完成しました。
さらに2期事業では山王海ダムの嵩上げ再開発が進められ2001年(平成13年)に同事業が竣工、ロックフィルダムの山王海ダム(再)が完成しました。
山王海ダムの貯水容量3760万立米は農業用ダムとしては日本最大規模を誇り、葛丸ダムと併せた4225万の貯水量は事業開始前の4.4倍に増大しました。
完成後は岩手県農林水産部が管理を受託し山王海土地改良区約3900ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
また両ダムはトンネル導水路によって結ばれて需要に合わせて水の相互融通が行われます。農業用ダムの2ダム一体運用は今のところ山王海ダム(再)と葛丸ダムだけです。
 
紫波インターから県道を西に向かい稲荷坂と呼ばれる町道を登って行くと山王海ダムに到着します。
堤体には『平安 山王海 2001』と書かれています。
平安という言葉には、かつてこの地で絶えなかった水を巡る争いが収まるようにという願いが込められています。
 
減勢工
はっきりと見えませんが、カスケードになっているようです。
 
巨大な洪水吐。
 
残念ながらダム本体に立ち入ることができません。
左が管理事務所、右が取水棟。
 
かつて宮中歌会始でこのダムを詠んだ歌が採用されたのを記念する歌碑です。
ダムができて水を巡る争いが収まったことを喜ぶ歌です。
 
広いダム湖を一周する車道があり、ダム湖上流には葛丸ダムとの取水、送水口や葛丸川からの導水路などがありましたが、時間の都合でスルーしてしまいました。
 
追記
山王海(再)ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに641万9000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0236 山王海ダム(元)
岩手県紫波郡紫波町土館
DamMaps
北上川水系滝名川
37.4メートル
150メートル
9594千㎥/9594千㎥
1952年
--------------
0263 山王海ダム(再)(0319)
岩手県紫波郡紫波町土館
北上川水系滝名川
61.5メートル
241.6メートル
38400千㎥/37600千㎥
岩手県農林水産部
2001年再開発竣工
◎治水協定が締結されたダム