ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

田瀬ダム

2016-05-11 21:00:00 | 岩手県
2016年5月4日 田瀬ダム
 
田瀬ダムは岩手県花巻市東和田町田瀬の北上川水系猿ヶ石川にある国交省東北地方整備局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
ダム建設事業としては1941年(昭和16年)に内務省直轄事業として着手されますが、戦争激化により中断、戦後北上特定地域総合開発計画(KVA)の一環として、再着手され日本最初の建設省(現国交省)直轄ダムとして1954年(昭和29年)に完成しました。
特定多目的ダム法施行前ということで、ダムの括りとしては兼用工作物となります。
田瀬ダムは猿ヶ石川および北上川の洪水調節、稗和地区および江刺地区の約6000ヘクタール(完成当時は9500ヘクタール)への灌漑用水の供給、電源開発東和発電所での最大2万7000キロワットのダム水路式発電を目的としています。
洪水調節については北上川ダム統合管理事務所で四十四田ダム御所ダム湯田ダム胆沢ダム(再)とともに統合管理されています。
 
ダム湖の田瀬湖は関係自治体等によりレクリエーション施設の整備が進められダム湖百選に選ばれているほか、
2021年(令和3年)には『北上川上流総合開発ダム群』として土木学会選奨土木遺産に選定されました。
 
今回は釜石道の東和インターから県道284号~178号経由でダム左岸上流側からアプローチしました。
ダム湖(田瀬湖)上流から
クレストに6門のラジアルゲート。
 
ダム左岸に管理事務所と駐車場があります。
左岸から。
 
左岸に展望台があり下流側から俯瞰します。
逆光になってしまいました。
 
建設当時の常用放流設備は部分開放ができませんでした。
そこで1998年(平成10年)に既設堤体に5メートルの穴を削孔して新たな常用放流設備を設置しました。
 
減勢工に並ぶ十字ブロック。
 
天端にあるガントリークレーン
 
天端は県道178号が通っています。
 
右岸から
 
取水棟を遠望
 
こちらは灌漑用水の斜樋。
 
戦時中に着工され戦中及び戦後の建設中断をはさんで1953年にようやく完成した苦難のダム。
建設の苦難は三船敏郎主演の映画『激流』の舞台にもなりました。
堤体を刳り貫いて付加された常用放流設備など構造的には見どころたっぷりのダムですが、下流が立ち入り禁止で見学ポイントが限定されているのが玉にキズ。
田瀬ダムの訪問で北上川5大ダムをすべて見学することができました。
 
追記
田瀬ダムには洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらなる洪水調節容量が確保されることになりました。
 
0238 田瀬ダム(0373)
岩手県花巻市東和町田瀬
北上川水系猿ヶ石川
FAP
81.5メートル
320メートル
146500千㎥/101800千㎥
国交省東北地方整備局
1954年
◎治水協定が締結されたダム


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