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今回は鉄絵魚文ではなく、印花魚文について考察する。以下、代表的なサンカンペーン印花双魚文盤である。サンカンペーン印花魚文の特徴は、写真を見ても分かるように、背側の鰭が2箇所腹側が1箇所で、その鰭は三角帆のような形である。また顎に相当する部分が緩やかな曲線を描くのも特徴の一つである。







それにしてもなぜ窯によって鰭の数が異なるのであろうか? パソイと思われる魚を忠実に写しているのが、パヤオで背側、腹側の鰭の数が完全に一致している。それに対し鰭の三角帆形状が一致するのはサンカンペーンであるが、鰭の数が現物のパソイと一致しない。ナーン・ボスアックの魚文も鰭の数が一致しない。
これは何を物語るのか? 北タイ印花魚文のオリジンはパヤオであろう。サンカンペーンとナーンは後発であるが、ナーンと同じにはしなかった。陶工のプライドであろうか? 鰭の位置と数をパヤオと同じにはしなかったのである。
尚、パナペックと呼ぶ魚も存在する。イワシに似た淡水魚である。下顎が膨らむ様は、この魚を参考にした可能性も否定しきれない。

余談ではあるが、北タイの地形・水系は面白い。チェンマイ盆地から東をみただけでも以下の如くとなっている。
チェンマイ盆地を貫くピン川は南流し、チャオプラヤ川と合流してタイ湾に注ぐ。山塊を一つ東に越へ、カロン地区を流れるラオ川は北流してチェンセーンにてメコンに注ぐ。更に山塊を一つ東に越へ、ワンヌア地区を流れるワン川は南流し、タークでピン川と合流する。そのワンヌアの東の山塊を超えると、パヤオである。パヤオの古窯址が集まるウィアンブアの西を流れるメータム川は北上してメコンに合流する。
このように北タイは、山塊を越える毎に南流と北流を繰り返す。従ってそこに棲息する川魚の生態も異なることが考えられるが、そこが素人の良くわから無い点である。
<了>