新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカ人は気が長い「2時間待ち」を厭わない

2023-06-09 08:09:44 | コラム
Welcome to America:

アメリカ人と一緒に暮らすというか、彼らと共に行動する時間が長くなって何年か経ってから意外なことに気が付くようになった。それは、彼らは何かを待って長い列の最後尾について長時間待つ(待たされること)ことを厭わないことのようだった。私は勝手に彼らが気長ではなく、行列などは嫌うだろうと決めつけていた。実はそんなことはなく、誠に辛抱強い人種なのだったので驚かされた。

最初の経験は1970年代末期のこと。「シアトル市の北の外れの湖の近くに人気が高いピザの店があるので行こう」とDeEttaとWaltに誘われた。North Lake Tavernという店名だった。放課後に急いで到着してみれば既に蜿々長蛇の列。Waltが店に入って聞いてくると約1時間は待つという。彼らは「それは良かった。待とう」と1時間待ちは幸運であると説明してくれた。

そこで学んだのが「異文化」だった。彼らはジッと待っている訳ではなく、グループごとにいとも楽しく語り合っていて、場合によっては話が盛り上がって大騒ぎにすらなっているのだ。我ら3人も「何だ。アメリカ人だって同じだ」と解った、上司の品定めや悪口を言っていた。こんなことをしている間にあっという間に順番が来て中に入れた。

ピザは「如何にもアメリカだ」という感じで大きかったが、味は抜群。当時は未だ飲んで倒れなかったのでピッチャーから飲むビールも格別だった。俗説に「アメリカの食べ物は不味い」というのがある。こんなことを言う人は、地元民が1時間を厭わずに並ぶような店を探して言ってみると良いかも知れない。今となってはさすがに具体的な金額の記憶はないが、この店では$20程度しか払わなかったかも知れない。

次の行列はシカゴで、だった。Darry Showに出展者として入場するためには、ショーが始まる9時前に事務局にアルファベット順に並んで社名と氏名が記載された名札(badgeという)を貰う長蛇の列ができてしまう。実は大方の人はその列が社名か氏名に分かれているかを知らされていない。大勢の人がその長蛇の列に文句を言うこともなく並んでいる。アルファベットによっては、1時間も待たされるのはざらにあった。「アメリカ人って辛抱強いんだな」と感心した。

気が短い私には、まるで拷問のような列の長さだったので、耐えているアメリカ人の気の長さに感心したしが印象的でもあった。特に悲劇だろうなと感じたことがあった。それは個人名の列だろうと思って並んでやっと順番が巡ってきたら「社名」だったので並び直しになった人のこと。

最後もシカゴである。シカゴには1975年3月にも転入後のトレーニングという出張で1日来たことがあった。だが、81年にDairy Showで初めて1週間滞在した。その時にシカゴのノースウエスタン大学のビジネススクールでMBAを取っていて地理に明るい上司が、シカゴ最高のピザの店“UNO”に行こうと提案。因みに、unoはイタリア語で「1」のこと。この店が一番良いのかどうかは知らない。

だが、上司に連れられUNOに着けば長蛇の列。上司は地下の店に侵入して確かめると2時間待ちだった。そこで急遽同じ系列のDUE(=「2」)に向かうと3時間待ち。諦めてUNOに戻って上司が何時の間にか確保してあった行列の最後尾でないところに並んで、2時間皆で語り合って過ごしたのだった。ここのピザは深い鉄鍋に目一杯に入ってくるのだが、2時間待つだけの価値はある美味さだった。上司も鼻高々だったが、待ち時間の長さには矢張り疲れた。

何れにしても、アメリカ人という人種があれほど「長時間並んで待つ」ということを厭わないのは意外だったし、その気の長さには感心せざるを得なかった。だが、その長い待ち時間に耐える方策が皆で話し合うというか、語り合う「おしゃべり好き」が大いに役に立っていると思った。彼らには非常に多弁で誠に能弁な人が多いと思う。この点が我が国の人たちとは違うのかなと思っている。



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