新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

剛速球勝負か駆け引きか

2018-05-29 08:08:36 | コラム
トランプ大統領対金正恩委員長:

一旦は流れたかに思わせたこの歴史的な「トランプ大統領と金正恩委員長の首脳会談」は、金正恩委員長の何処まで本気かと思いたくなる譲歩かとも思える歩み寄りに、韓国の文在寅大統領の尽力もあって、当初の予定通りの6月12日にシンガポールで開催の方向に進んでいるようである。その限りでは結構なことだろ思う。

私には大方の報道機関は「トランプ大統領はビジネスマンである」との大前提で報道しているように思える。確かに不動産業を中核に多くの事業に進出しておられたのは間違いないと思う。ではビジネスマンであれば駆け引きをするのかということだ。この会談は文在寅大統領と金正恩委員長の南北首脳会談の結果を受けて韓国の使節がトランプ大統領に「金正恩委員長が会談を望んでいる」と報告したのに対して、トランプ大統領が即断・即決したものだった。

そして開催日と場所が決まるまでにアメリカとDPRKの事務方が何度も会談して詳細且つ綿密な打ち合わせをしていたと理解している。だが、事が進むにつれて金正恩委員長は持ち前の駆け引きというか独特の交渉術がトランプ大統領にも通用するとでも思い込んだのか、素人の私が見ていても粗雑というか乱暴だなと思ってしまうような罵詈雑言を浴びせるなど無用としか思えない戦術に出ていった。あれでは「会いたかったら会っても良いが」と切り出して反応を見るつもりかと思わせた。

ところがトランプ大統領も強かで、「そういう戦術に出るならば、貴方の本気度と真剣さの度合いを確かめるぞ」と言わんばかりに、単純明快な手法で「残念ながらキャンセル」と野球用語を借りれば「直球勝負」に出て行かれた。それでなくとも、アメリカは過去にDPRKの駆け引きというか前言を翻す不誠実さというか虚言癖に手を焼いてきたのであるから、トランプ大統領は「それならば止めるか」と打って出られたのかと思って眺めていた。私には駆け引きとは見えず、真っ向からの「これを言うことで何か失うか」と「論争と対立」を怖れない手法と解釈した。

そこから先はより一層興味深かった。金正恩委員長は文在寅大統領に「形式は問わないから至急会談を」と訴え出て、文在寅大統領のトランプ大統領への仲介を依頼したようだった。その様子を見れば如何にもトランプ大統領の真っ向からの剛速球に恭順の意を表したとも採れるだろう。だが、私は如何なる手段を弄しても会談が実現しさえすれば、トランプ大統領に直接に非核化の過程や体制の維持を訴え出られるのであるのでそこを活かすべしと思ったと考えた。もっと言えば、会談が出来れば、そこでまた更なる駆け引きにも出られるのだ。一見下手に出たようだが、名を捨てて実を取る作戦のようにも思えなくもない。

私は未だ実際に6月12日に会談が実行されるか否かは解らないという見方を採りたい。だが、金正恩委員長としては会談は色々な意味で実現せねばならない点が多々あるので、暫くは低姿勢で臨んでいくだろうと見ている。トランプ大統領も駆け引きでも何でもなく、金正恩委員長の本気度を確認し続けて行かれると思っている。それは「全てのオプションがテーブルの上に」とは言われても、私は本気で軍事力行使をお考えとは思っておられないと見ている。

何れにせよ、残された2週間足らずの間にトランプ大統領が更なる剛速球を投じても金正恩委員長を抑えきられるか、または金正恩委員長が如何なる駆け引きのような手段に打って出るかは大いなる見物と言えば失礼だろう。だが、両首脳が如何にして会談を実現させる努力乃至は歩み寄りを見せられるかに私は大いなる興味と関心があるのだ。私は事 unpredictable という点では、金正恩委員長の方が読みやすいようで、そうでもない駆け引きをするか虚言を用いるような気がするのだが。何分にもDPRKには過去の忌まわしき実績があるのだから。


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