新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

7月23日 その2 包装容器と包装材料の変遷

2016-07-23 13:08:57 | コラム
リサイクルとリユース:

畏友・尾形氏と佐藤氏が交換された議論を拝読して、一寸本筋から離れた議論を思い付きました。それは牛乳の容器の変遷でした。牛乳は「乳等省令」(だったか?)という厚生省(現厚労省)の条例があり、牛乳瓶、ガラスです、に充填されるものと決まっていました。そこに50年代にアメリカから先ず蝋漬けにした紙パックが入ってきました。ご記憶の方は少ないと思いますが、”Blue Seal”という飲料で進駐軍専用でしたが、一部が横流しされて市場に出ていたと記憶します。

その紙パックを蝋漬けした容器を採用しようとした乳業会社は、厚生省に「例外容器」としての紙で作ったパックの採用の申請をして審査を経て「例外」が認められました。即ち、現在では当たり前の紙パックは例外だったのです。そして、例外容器を採用する乳業会社は、その都度厚生省に「例外容器申請」を、そのアメリカ製の紙の見本等を申請書に添付して、厚生省の審査とテストを経て許可されました。

その後、蝋漬けではなくポリエチレンフィルムを両面にラミネートした紙パックが導入されると、その例外だった容器が「例内」を遙かに超える比率となったのですが、それでも入牢省令は変わらず、例外申請が続きました。すると、今度は紙だけではなくアメリカ製のPEのレジンもアメリカからその都度取り寄せて、書類とともに提出して安全性の検査を受けねばならなくなりました。安全に決まっていますが、そこがそれお役所仕事でした。

ガラス瓶が使われなくなった理由を説明すると長くなりますが、ガラス瓶は全部回収して洗瓶の機械にかけて洗うのですが、その牛乳も混じった廃液が下水を汚染するという事態になって忌避されたのです。即ち、ここでは古くから「リユース」はされていました。それに、ガラス瓶は割れたらおしまいですが、紙パック綺麗な印刷も出来るし、一回きりの使用ですが回収の手間がなくその合理性が評価されました。アメリカの紙パックメーカーは”single service division”などと称していたとこもあって、一度使えば終わりを表していました。時代の流れと環境問題があって徐々に且つ急速に紙パックに取って代わられ今日に至ったのです。

次は段ボール箱です。その昔は包装材料は主に木箱でしたが、その容器というか包装材料としての使命を果たした後の処理が非常に手間と費用がかかることで、徐々に段ボール箱に置き換えられました。段ボール箱の紙は古紙として回収された後でリサイクルが可能なので経済性が高くまた環境に優しいのですが、合理的だということで評価され木箱が消えていく運命になったのだそうです。「なったそうです」と言うのは、私はこの分野には関係したことがなく、大筋で受け売りなのです。

既にお解りの方はおられると思いますが、段ボール箱は典型的な「リサイクル」可能製品なのです。牛乳パックだって1980年代には使用後に回収してリサイクルしようという運動が始まっていました。牛乳パックパックの使われている木材繊維は極めて品質が高く、一回で捨てるのは勿体ないと、我が国の主婦の方が起こした運動がありました。

何を言いたいのか解りにくいのでしょうが、時代の流れで環境保護が重要視され、使用後は廃棄される包装容器と包材の合理化が進められ、包装の形態が変化したというお話です。今、段ボール業界が最も恐れているのは、あの箱は一回使ったら終わりという(古紙になるだけ)という経済性に乏しいことと、本来はタダにしたい容器に金を払いたくない需要家が増えて来たので、何時他の包装形態に切り替えられるかと戦々恐々なのです。

事実、市況次第でコストが変動しやすい段ボール箱を嫌う需要家の中にはプラスティックの熱収縮フィルムを採用するところもあるなど、パッケージングのコスト削減は始まっています。また、パレットの上に紙で包装したパックを積み上げてシュリンク・ラップするソフトウエアもずっと以前に開発され実用化の段階にあり、時代の変化の先行きは私のような門外漢にはとても読めません。



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