新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月30日 その2 自動車産業界の話題を

2020-08-30 11:47:35 | コラム
EVでの立ち後れが目立つ日本:

運転免許を取ろうとしたことすらない私が自動車を論じるのも我ながら奇異な感があるが、兎に角採り上げてみようと思う。ご記憶の方がおられれば有り難いが、我が家では父は昭和12年に貰い事故で亡くなっていたし、免許を取ったこともない実弟は昭和39年に矢張り貰い事故で社会復帰まで2年を要し、かく申す私は昭和60年にアメリカで社用中に貰い事故に遭って、会社復帰まで半年かかっていたという、凄い一家なのである。

毎度引用している紙業タイムス社の週刊誌版“Future”誌には、紙パルプ業界の専門出版社の雑誌でありながら、広く社会どころか世界全般の話題を採り上げているという特徴がある。それは編集長のH氏の個性が反映されていると思っている。その20年9月7日号の巻頭の「時評」は言わば社説なのだが、私は編集長の主張が表れていると思っている。因みに、私と編集長との付き合いは1990年の春からであって、彼が何ら執筆の経験がない私に突如としてFutureではなく、看板の「紙業タイムス誌」にエッセイの連載を依頼してきたことから始まっている。

H編集長は9月7日号の「時評」では何と自動車業界を採り上げて、見出しは「HVで首位、PHVでも2位だが、EVでの立ち後れが目立つ日本」となっていた。彼は日本貿易会の資料を引用して「2019年の自動車輸出額は約12兆円(前年比3%減)で、輸出総額76.9兆円の15.6%を占める。一方、ジェトロの統計によると、自動車を中心とした世界の輸送機器貿易は2019年に1兆8,361億ドルを記録(輸出ベース)。これは前年を1.9%下回っている。

日本も世界もマイナス基調だった訳だが、そうした中にあってもハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)などの新エネルギー車については状況が異なる。2019年の貿易額は848億ドルと未だ小さいものの、前年比56.5%増と高い伸び率を維持した。新エネ車の内訳はHVが443億ドル(49.9%増)、PHVが149億ドル(13.4%増)、EVが256億ドル(122.3%増)。新エネ車の過半を占めるHV輸出では日本が強く3年連続でトップを維持している」と論じていた。

私はここまで読んで直ちに思い浮かべたのが、トランプ大統領の我が国のアメリカ向け自動車輸出に対する誤解としか言えない厳しい批判である。大統領は毎年“millions of cars”、即ち数百万台も輸出されていると言われたのだ。実態は17年度の実績で少し古いが、輸出は168万台で、アメリカでの現地生産は671万台だ。確かに、アメリカで街中に立って見ていれば「アメリカでも4ドアのセダンを作っていたのか」と思わせられるほどドイツ車と日本車ばかり走っているのが実態だ。新エネ車でも我が国が首位では、またまたトランプ大統領に厳しく追及されそうだと感じた次第だ。

その我が国のEVでの立ち後れだが、先月辺り話題になったのがトヨタ自動車が時価総額でアメリカのEV製造のテスラに抜かれたということだった。即ち、年間1,000万台以上を生産するトヨタが22兆円で、19年の実績が36万台のテスラが30兆円だったのだ。そこにはEVだけではなくクルードラゴンを打ち上げるとか、ロボットタクシーの開発を手がけているイーロン・マスク氏率いるテスラ社の方が評価されていたという意味だ。

私にはEVが急速に何処まで普及していくのかなどを語る材料の持ち合わせも知識もないが、世の中は確かに変わりつつあるようで、日産自動車などはEVに注力しているし、EV車には航続距離に問題があるとは言いながら、将来にはガソリン車を禁止してしまう国まで現れているとも聞いている。私はトヨタがこのままムザムザとテスラに後れを取った形でいるとは思わない。だが、何も自動車産業界だけに限ったことではないが、現代社会の変化の度合いは大規模で急速だと痛感させられたことだった。



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