新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

我が国の林業の衰退を考えると

2014-08-21 17:06:18 | コラム
何処に問題があったのか:

私は(嘗ては世界最大級の紙パルプ・林産物の会社だった)W社 の紙パルプ部門の社員だった。であるが故に、業界外の方よりも森林とその育成には最低限の知識が少しだけ沢山あると思う。在職中は北海道と四国を除いて日本中を駆け回っていた。本社から来る者の中には私よりも遙かに林業に精通した者が当然のようにいたし、私自身も実際に自社林の中に入ってアメリカ式な大規模林業の実際を種苗園から伐採までを見学していた。言わば、アメリカ式の森林管理の実態を見せられた訳だ。

社内の言葉では "managed forest" 即ち「管理して育成された森林」なのだ。「間引きし下枝を払、風倒木等を始末する管理で、森林内の空気の循環を図り、伐採期が来れば "clear cut" と称して指定されていた面積の立木を全て伐り、肥料を撒いて土壌を生き返らせてから再植林する」ということ。即ち、ごく当たり前のことをやっているだけなのかも知れない。因みに、主力の米松(Douglas fir)は50年育ててから伐採すると決められてたようだ。

こういう管理をしないと日照と酸素不足で土が育たず、というか弱くなって樹木が十分に根を張らず、水分を蓄える力もなくなって崩れやすくなると聞かされた。紙の販売の本業とは間接ではあっても重要な関係がある事というか最低限の常識なので、社員は種苗園と山林から製材所まで見ておかねばならないのだ。

その門前の小僧の知識から見ても、我が国土の数十%を占めている山を覆う美しい森林(多くは広葉樹のようだが)は余りにも人の手が入っていないというか「管理」されておらず、あれでは危険が潜んでいるのではないかと、本社の者たちも感想を洩らしていた。

しかし、その放置?された森林は「我が国で林業が余りにも不採算で業者が激減し、為す術もなく放置されている」との意見も承知している。その乏しい知識から見ても、我が国を覆い尽くしている感がある美しい広葉樹と花粉をまき散らす杉の山林は、管理不行き届きではないのかと思ってしまう。また「その陰には輸入される丸太と製材品の価格に抵抗出来ず、廃業していった業者も多かった」との指摘があるのも知らないはずがない。

それでは、W社他のアメリカカナダの森林業者にも責任があるのではないかという言い方すら出来るのかと、仲間内で秘かに語り合ったことすらああった。因みに、現在ではアメリカでも東南アジアでも「丸太」は輸出が禁じられている。それは、加工しないことには地元の産業の振興に貢献出来ないからだ。木材チップの輸出を禁じるべきだとの意見が、アメリカでも出たことがあった。

この私の経験談と広島市の災害がどう関連するかを論じようというのではない。我が国の森林と林業を今日の状態にしていたことを農水省も国会議員も如何に見なしているのか等は、私の知るところではない。テレビに登場した専門家は異口同音に「広島のあの地域では『まさ土』という土質が原因だ」と指摘していた。そういう土地の開発と住宅を建てることを許可したのは誰かとの疑問もある。だが、ここは責任論を云々する時ではないと思う。

安倍内閣も与党と野党も、それこそ一丸となってこれまでに既に大きな被害が出ている西日本の各地と広島の救済に当たって貰いたいと思っている。さらにはこの際、我が国の森林管理にある程度の予算を付けてでも本腰を入れなければならないのではないかとも考えている。


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