新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

Welcome to America

2023-06-01 08:27:27 | コラム
これもアメリカなのだ:

「これがアメリカなのだ」としても良いのかと思う。私は在職中にアメリカ合衆国の50州のうち20州を訪れていた。そうだからと言う訳でもないが、普通の方よりもアメリカを現実的に見て、経験してきたと思っている。

だが、20州を回ってきたから「アメリカというお国柄」の40%を承知できた訳ではないと思う。精々20%くらい辺りになるかも知れないし、それ以下かも知れないと危惧する。また、20州の中のアラバマ州、ミシガン州、アイダホー州には滞在はしてはいなかった。

そこで、今回はその宿泊はしなかった3州での経験を基にして「アメリカにはこういう想像もしなかった意外な面もあるのだ」という辺りを振り返ってみようと思う。

アラバマ州フェニックス:
フェニックスというとMLBの球団やNPBからもスプリングキャンプを張る温暖の地を思い浮かべられる方は多いかと思う。私が39歳になって1972年8月にMeadに転進して、生まれて初めてアメリカに入った時には、先ずジョージア州のアトランタに入った。そこで何日目だったかに「明日はアラバマ州フェニックスの工場に単独で日帰りで行け」と指示された。この件は既に一寸振れてあったが、「どのようにしていくのか」と尋ねた。

すると「空港にある我が社のロッカーに航空券が用意されている。その鍵を開けるコードナンバーを教えるから、自分で開けなさい」と言われた。指定された時刻に空港に行って無事に航空券を取り出してアラバマ州のフェニックスに向かった。「空港にはSmithyが待っている」とも言われた。なるほど、Smithyがいて工場まで周囲360度見渡しても何もない草原の中のフリーウエイを1時間ほど走って工場に着いた。

工場の見学(mill tourという)の案内役は女性だった。彼女は先ず駐車場に向かって歩き出した。「何で」と尋ねると「工程の始まりになる原料部門までは約1マイル(約1.6km)ある。そこまで歩くよりも車で行こうと思った」と言うのだった。そう聞いて眺めると、その部門は遙か彼方になっていた。それに驚いていると“Everything is big and stretching in the United States.”と言うのだった。言うなれば「アメリカでは全てが広大だ」と教えてくれたのだった。日本の多くの製紙工場の規模は承知していたが、とても比較にも何にもならない桁違いの大きさというか広さだった。

そして昼食の時間が迫るとSmithyが「町一番のハンバーガーショップに行くので、肉の焼き加減を電話で予約するから指定しろ」と言うのだった。「何のことか理解不能」だった。だって、マクドナルドで焼き加減を注文するなんてあり得ないからだった。だが、当てずっぽうで「ミディアムレア」にした。そして、Smithyともう1人の3人で出かけた。到着した町一番の店は空港から来る途中で見かけたフリーウエイの脇にポツンと立っていた掘っ立て小屋だった。

屋外に設置されているテーブル席に座って待っている間、彼らは「ここで飲むビールは最高」と言って飲んでいた。と言うことは帰路が飲酒運転になるではないかと驚愕させられた。間もなく店主がハンバーガーを持ってきた。だが、それは特大のバンズの間にこれまた巨大なパテが入っているだけの代物だった。だが、店主は刻みタマネギ、ケチャップ、マスタードをそれぞれの容器に入れて持ってきた。これも「???」だった。

現地人2人は自分でパテの上に好きなだけかけて食べ始めた。呆然として眺めていた私に「何をしているのか」と尋ねた。そこで「ここで今回初めて39歳にしてアメリカに来たばかりで何が何やら解らないので」と答えて、彼らを驚かせた「日本人はこんなことを知らないのか」と言って。そこで、恐る恐る「郷に入っては郷に従う」でやってみた。その巨大なハンバーガーはマクドナルドとは全く違う圧倒的な美味さだった。感動した。

要するに「アメリカではお客様は自分の好みで味を調節して楽しめ」ということで、店側に味を「お任せする」のではなく顧客の主体性を尊重するのだった。この自分で調味料を入れる方式は何処に行っても同じで、野球場などでのhot dogも通路を挟んで反対側に設置された台の上にある調味料を好きなだけ入れて食べる方式だった。往年はシアトルのハンバーガーの人気店だったRed Robbinでも、矢張り焼き加減から指定する方式だった。

この「自分の好みの味にして食べる方式」に慣れていないと、到底食べきれないパンケーキや、膨大な量がやってくるsteamed clams(言わばハマグリの酒蒸し)と格闘せねばならないことになってしまうのだ。また、私はそれなりに噛み応えもあって美味だと評価しているビーフステーキも、黙って注文してしまうと1ポンド(453g)の肉が出てきて驚かされるのだ。

Welcome to America:
これは「アメリカに来て初めてこういう目に遭ったビックリさせられた」等と上司や同僚に泣き言を言うと、このように言って切り返されたものだった。感覚的に言えば、これは「ようこそアメリカへ」ではなく「それがアメリカというものだ」か「それが現実なのだ」と捉えていた。兎に角、ビジネスの交渉事でも何でも、自社と自分の意思と主張を明確にしておくべき国なのだ。即ち、この点も私が言い続けてきた「異文化」なのだ。



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