新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

電力供給不足を何としても解消せよ

2023-12-06 08:13:18 | コラム
「節電を」などと言うのは行政の失態ではないのか:

冬場に向かって、またもや電力が綱渡りになると報道され始めた。何を言っているのかと腹立たしい思いで聞いている。一方では、岸田総理はCOPに赴かれて「もう火力発電所は新設しない」と言われたとか。良くも恥ずかしくもなく、そんな事を総理大臣として言えたものだと寧ろその勇気に感心した。

当方はこの電力不足はあの3.11の際に菅直人氏が首相で慌てふためいて原子力発電所を止めさせたことが、未だに悪影響を残しているのだと、固く信じて疑わない。能力不足の人物を選んで国会議員にして、さらに総理大臣にしてしまった責任は我々国民の側にもあると考えている。しかも三条委員会なる原子力規制委員会の縛りから未だに逃れられていないのは、行政も責められるべきだが、「地元」にも問題なしとは思えない。

話を大きく変えてみよう。ここ3ヶ月ほどの間に2度、東海道線の在来線で東京と熱海の間を往復した。現在は湘南電車となっているこの線は、昭和26年(1951年)から11年もの間、藤沢から東京間を通学・通勤して馴染んでいた路線だ。懐かしくもあった。その間に車窓から見えた目立った現象は、東京から平塚辺りまでに恰も谷底を走っているかのような、両側に高層建築物が林立していた有様だった。

その往年と比較して大きく変貌した景色には圧倒された。言わば、再開発が猛烈な勢いで進んでいる、渋谷周辺の様子にも似ていた。ここで私が痛感したことは「あれほど多くの高層建築、即ちオフィスビルとマンション(カタカナ語であり、言葉の誤用だが)が急増すれば、消費される電力も増加の一途をたどるだろう」という点だ。その点では都内に続々と開業する「何とかヒルズ」も同様に大口の電力の需要家ではないのか。

「いや、そうではあるまい。それらに移転してくる住民も企業も既にその場での電力の需要家だったのだから、消費する場が変わっただけではないか」という考え方も成り立つのだそうだ。だが、全部の家庭や企業が都内からだけ移動してくる訳でもないだろうし、高層ビルに設置されているような高速エレベーターを利用していた訳ではないだろう。言うなれば「巨大なオール電化」建築物が増えたのだ。

あれほど多くの大口の電力に需要者を増やすことを、何処の官庁が認可しているのだろうか。申請書類の書式が整っていれば建築許可を与えるのだろうか。その際に経産省や環境省と何らかの打ち合わせなり、検討の場でも設けないのだろうか。都内は今や何処に行っても再開発ばかりだ。銀杏並木を切るか切らないかも重要な問題だろうが、電力事情は考えないのだろうか。

問題はこれだけには限るまい。マスコミはしきりに「我が国はEVで大いに後手を踏んでいる」と厳しいようなことを言っては行政と自動車会社を批判している。EVが発展途上でもないような時点で、既に電力供給が危なっかしいのだ。総理大臣は「火力発電所は新設しない」と言いきった。一方では豊田章男会長は社長当時に「本格的にEVの時代にするのならば、原発を10箇所新設の必要がある」と指摘された。

私が思うには「何処かに誰かが高い場所に立って全体を俯瞰して(と言うか、フットボールのスポッターのように)どこにこういう問題や欠陥があるので修正せよ、ここをさらに改善して伸ばすべきだ、世界の傾向はこういう方向にあるのだから」のように、適切な情報を適切な時期に供給して、全体にとって何が良いか、何処を目指すべきかの指示をする必要があると思う。現在は縦割りでバラバラではないのか。

また、国会議員たちは地元の為にも動く必要があると承知しているが、現在のような電力の供給が危機的な状態にある時には、身を捨てても地元に「電力供給が如何に大切か。供給が出来なければ地元に有力な産業を招致できなくなるから、原発に反対するのは得策ではないし、お国の為にもならない」くらいの説得をする気概を持って欲しいと思う。

車窓から景色を眺めていて、こんなことを考えていた。要するに「政治家には全体を俯瞰して物事を考えて欲しい」のだし「我々国民も『国家百年の計』を意識する必要がある」と言いたいのだ。