新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

ドナルド・トランプ大統領の考察

2018-06-23 15:26:59 | コラム
>Unpredictableとは言われているが:

トランプ大統領に対する評価があの「6.12」とまで呼ばれる時もある対金正恩との歴史的会談以来あらゆる場面というか機会を捉えて論議され、将に毀誉褒貶相半ばするかの感が濃厚だ。あの会談は「大成功だった」、「トランプ大統領は所期の目的を達し、アメリカにDPRKからICBMが飛来することがないように押さえ込んだ」、「金正恩がトランプ氏よりも熟練している外交経験を活かして予期した以上の成果をDPRKにもたらした」等々の議論が飛び交い、何れが勝者だったかの判定は下されていない。

私はたった一度の初顔合わせの会談で、非核化にせよ、ICBM等の兵器の処分案やIAEAまで動員するのだろうDPRKの核兵器の保管か在庫場所のリストを提出させ、それに従ってどのように調査し、国外に搬出するとか破壊する等の具体案が審議乃至は細部にわたって討論するはずはないと予め考えていた。両者が相互に相手側に何を求めるかを全項目にわたって机上に並べ、各個撃破的に論じ会うことは時間的にもあり得ないだろうと思っていた。故に「お見知り置きを」程度が実態になるのではとすら考えた。

あれから間もなく2週間になるが、未だに甲論乙駁でトランプ大統領も金正恩委員長も意図した通りに事が運んだのか否かという議論が続いていると思う。私は何れが優勢に有利に事を運んだかを論じるよりも、これから先に如何にして朝鮮半島の何処の非核化を図るのかの具体論や、何を以てCVIDが達成できたと決めるのか等の詳細な具体論にどのようにして入っていくかが問題だろうと思っている。

アメリカだろうとIAEAだろうとUNだろうと、如何にしてDPRKに誑かされずに事を運ぶかを慎重に検討すべきだとすら考えている。換言すれば、何処までDPRKを信じるかが重要な鍵を握るのだが、忘れてならないことは最早UN加盟の国の中でDPRKと国交を結んでいないのは19ヵ国にまで減少してしまった厳然たる事実だ。アメリカも我が国もその極少数派に入ってしまったということ。トランプ大統領は安倍総理だけが道案内役で安心していられるのかという疑問すら感じてしまう。

少しトランプ大統領と金正恩委員長の首脳会談から離れよう。トランプ大統領は最近になって大胆不敵とも思わせられるほど強気で「貿易赤字削減」、「雇用(特に彼の支持層であるプーアホワイト以下)の増加と確保」、「安全保障上」と称して従来の貿易相手国に対して高率の関税を課する保護貿易政策を大胆に講じ始めている。私は一国の大統領として貿易赤字削減を図ることに何ら不思議はないと思うし、unpredictableでも何でもないとすら見ている。しかし、トランプ方式が適切か否かは別の問題だろうとは考えている。

私はドナルド・トランプ氏が共和党の候補に名乗りを上げてきた頃から「彼は無知なのか、あるいは無知を装っているだけで実態は何もかもご承知で知らん顔で強引としか思えない公約を掲げているのかも知れない」と論じてきたし、我がW社の上司や同僚たちもほぼ同意見だった。中には「本当に知らないのか否かが解らない点が困るのだ」という意見すらあった。今になって言えることは「彼には詳細な部類に至るまでのことをご存じではない事柄の方が多いのではないのか」なのだ。

更に、私が例を挙げれば、藤井厳喜氏が指摘したように「我が国にマスメディアはアメリカの反トランプ派の(地方紙に過ぎないといっては語弊があるかも知れぬが)有力紙が垂れ流すfake news を躊躇うことなくそのまま報じているので、恰もトランプ大統領の政治手腕に問題があるが如くに見做されている」というのも真実であると思っている。換言すれば、我が国の偏向しているマスコミの報道などを安易に信じないことだとなるのだ。

現に何度か採り上げたが、アメリカで引退生活を楽しんでおられる日本人のアメリカの銀行のOBの方はトランプ大統領の経済政策は成功しており、それ故に知識階層における支持率も上昇しつつあるという現地からの報告もあると強調しておきたいのだ。即ち、私の好む表現である「全てのコインには両面がある」ということだ。一頃「現在のアメリカの好景気がオバマ大統領の置き土産だ」というまことしやかな説が流布されていたが、今やそれはトランプ政権の功績だと見るのが普通だ。

私はドナルド・トランプ氏という方は、ある意味で私がずっと言い続けてきた「人は自らの弱点を意識すればするほど、その点を隠しておこうとその弱点の反対の言動に走る傾向が強い」との説に適合すると思っている。その典型的な例として同期の石原慎太郎を挙げてきた。彼は公共の場面でも敢えてベランメー調で聞きようによっては大言壮語し、他人を真っ向から批判してみせることが多い。我々同期の間では「あれこそが彼の神経の細かい気の小さい面を補うべく(隠す為に)あのような語り口になるのだ」と理解している。

ここで言いたいことは「トランプ大統領は決して強気一点張りの方ではなく、弱みを見せまいとしてTwitterなどでは乱暴な表現を用いて「強気」を演じておられるのではないかという推理である。弱みは見せまいという自己防衛本能が常に働いていると言えば過剰な表現になるか。


貿易赤字削減に話を戻してみよう。私はトランプ大統領自身とその新たに任命されたマイク・ポンペオ(Pompeoであるから、ポンペイオという表記はおかしいと思う)国務長官もボルトン補佐官も、私にはどうしても貿易の経験者でも専門家でもないとしか思えない。そういう側近を従えて赤字削減に打って出られ、その最善(と思われたのだろう)の策として貿易摩擦が生じることを怖れずに、極論的にいえば関税の賦課で輸入を減らしていく方向に進まれたのだと解釈している。

貿易に長年携わってきていれば、この対策などは危なくておいそれと打って出ていける作戦ではないと思うだろう。だが、これらのお三方は上記の三項目の大命題があればこそ、「やろうじゃないか」と多少のの摩擦を怖れず、最大の赤字を生じさせられている中国と対峙することを敢えて辞さなかったのだと思う。私の持論は「この対策は自国が基本的に輸出に依存する国ではないことを無視している点に些か無理がある」ということなのだ。だが、トランプ大統領は「承知の上で打って出られたのか」あるいは「貿易の実務の実態を知らないから強気に出たのか」または「百も承知で強攻策に出られたのか」は外部、それも我が国のアメリカの会社の一OBには計り知れないのだ。

トランプ大統領が打って出られた国内向けの経済面の政策や、パリ協定からの脱退や、イランとの協定からに脱出や、UNの人権委員会の脱会等々に加えて横紙破りとでも形容したい保護貿易政策等を現時点で批判し、非難することには余り意味がないとすら思うことがある。それは、彼が打って出られる新機軸の政策にはほとんど前例がないので、如何なる形で決着するかの予想を禁じているからだ。トランプ大統領は飽くまでも強気を装っておられるが、案外内心では「何とか上手く行ってくれ」と祈っておられるのかも知れないと思うと気もある。それほど、私には「イチかバチか」に見える強引さが見える点が怖いのだ。

最後に私流に英語の講釈で結べば強引な政策の結果は It remains to be seen.か Let’s wait and see what will happen.辺りしかないのだと思う。まさか、トランプ大統領もそう見做しておられるのではあるまいな。何れにせよ、「アメリカファースト」に徹しておられるのは間違いないところだろうし、結果的には中間選挙も視野には入れておられるだろうが、支持層は揺らいでいないと確信しておられるのだと思う。