株に出会う

独自開発のテクニカル指標で株式市場の先行きを読む!

虚構の欲望

2009-03-14 20:57:20 | 折々の随想
今日、五十子敬子氏の「死をめぐる自己決定について」(批評社、2008年11月10日初版)という本を読んでいたら、ハリー・G・フランクファートという人が、人と他の動物を区別する決定的要因は、人には彼のいう「第二次的欲望」を形成する能力がある、と言っていることを初めて知りました。

「第一次的欲望」とは、現時点で何を望むかという欲望でのことであり、人はこの種の欲望は他の動物と共有します。人が他の動物と違う点は、人はこの時点での欲望に満足せず、「人の好みや目的において、現実の己とは違ったものになることを望むことが出来る」ということだそうです。

そこで、ふと思い出したのが、今回の金融恐慌を招く一因となった、金融テクノロジーを駆使してのデリバティブ商品などの開発・設計にかかわった人間のことです。

彼らは単に新しい金融工学商品を社から命じられるままに作り上げたのではなく、そのアウトプットとしての商品が現に世界に流通し、実際に想定した成果(この場合は金)を生むことで、極めて個人的な欲望が充足され、そしてその結果、(金融工学的)自己世界が新たな変容を遂げることに、ある種の快感を抱いていたのではないだろうかと。

その快感に浸るためにはある1つの条件がありました。それは、その金融商品の開発・設計に関するアルゴリズムは、できる限り自分だけのものにしておくことでした。

協働作業になればなるほど、個人的な欲望の充足度合いが薄れ、その分快感も低くなります。そのためには、自分以外の他のエンジニアには理解不能なほどに、複雑精緻なシステムに組み上げておくことが、必須条件であったのではないかと思います。

実際、出来上がった新しい金融デリバティブ商品は、それを作り上げたエンジニア以外はメンテナンスできないほどのものだったと言われております。

「現実の自分とは違ったものになる」欲望が、実は、金銭的な欲望よりも強く動機づけられていたという点では、形の違いはあれ、いわゆるハッカーの心理状態もそれに近いのではないでしょうか。

筆者は、これを「虚構の欲望」と呼びたいと思います。

話は変わりますが、昨日新しく届いたCDを聴いてみました。Ricercar Consortと呼ばれる演奏家集団による、バッハのBWV234、544、198、727、そして544が収録されているものです。

この中のBWV198は、昨年2月22日のブログでご紹介した曲ですが、既にガーディナーとフォソリスの盤を持っております。しかし、この演奏家集団の指揮者Philippe Pierlot(写真を見る限りまだ若い)の198番は録音状態も良く、3枚のCDの中ではもっとも気に入りました。

どこが他の盤との違いかを言い表すのは困難なのですが、冒頭に書いた「現実の己とは違ったものになる」ことをもっとも望める演奏だということは言えそうです。

この演奏の198番の例のテノールのアリアを聴いていて、しみじみと、これで「好きな湯豆腐と野菜、そしておいしいお酒があれば、もうこれ以上の人生の愉悦はなかろうに」と思う自分がありました。

つまり、この演奏は「虚構の欲望」ではなく「真性の欲望」を喚起してくれているのではないかと思いました。

同じ本に、マザー・テレサの「死を待つ人の家」も紹介されておりました。

「そこでは、コレラにかかり、汚物の中で死にかけている老人も、世間から見捨てられ、身も心もズタズタになって行き倒れている人も、体を丹念に洗い清め、清潔な衣服に着替えさせ、ウジのわいた傷口に過マンガン酸カリウムを塗り、ベットにそっと横たえてやる。手を握り、話すこともできない瀕死の人には目で語りかけ、ゆっくりと温かいスープを口に運んでやる。自らの過去を恨み、死の床にある浮浪者が、感謝しながら、にっこり、笑顔で死んでいく。そこにあるのは避けがたい運命を受け入れる人間の姿である。」

一体何が、マザー・テレサと、彼女と協働する人々を、このような行為に駆りたてているのだろうか?

答えは、読者の方々のそれぞれの想像にお任せしますが、この世界は、人々の欲望の持って行きどころをどこか間違えたのではないかと改めて思いました。
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トレーディングに必要不可欠のセンス

2009-03-14 09:31:49 | 折々の随想
筆者は、個人の株関連ブログはほとんど見ませんが、毎日見ているブログ3つのうちの1つが、ご存じの方も多いかと思いますが、「傷だらけのトレーダーBlog2」です。

以前、興味半分で見ておりましたが、その後見るのを止め、3ヶ月ほど前から再度見始めました。それは、彼の文章がちょっと変わった雰囲気、まあ、ある種の哀愁感とでも言うものを醸し出していたためです。

人間の心理というのは相当に嫌らしいもので、戦績を報告するだけブログが世に沢山ありますが、大負けした日の記事を読むと、何となく心のどこかで安堵するものがあったりします。逆に大勝ちした記事には、それとなく「焦り」と「嫉妬心」が混じった気分になったりします。

それが、不思議なことに、傷だらけのトレーダー氏のブログでは、読む前から、今日こそプラスであって欲しいと、願うような気持ちでブログを開いている自分がおります。

哀愁感がある文章と書きましたが、何も、このブロガーに同情をしている訳ではありません。その文章に秘められたある種の決意のようなものが、そうした雰囲気を醸し出していたのです。

その決意の一端を、3月13日の彼のブログでのコメントに対する回答で垣間見ることができました。詳しくはそちらをご覧下さい。

彼が大幅に資産を増やしたとされる、2005年8月からの1年間は、特に2006年4月末までの8ヶ月間は、日経平均がまさに怒濤の上昇トレンドを形成していた時期に符合しますが、だから勝った訳ではないのです。何故なら、売りも行う彼が、昨年秋以降の同じ1方向の下降トレンド相場では勝てていないからです。

彼が資産を増やすことが出来た大きな理由は、コメントで回答しているように、相場の方向とポジションが合っていたため、ということが出来ます。

今は、それが合っていないための負けです。

これで、彼が何故わずかな銘柄の売買しかしないのか、その理由が解けました。流動性が高く、出来高が大きければ、どんな銘柄でも結果は同じなのです。

筆者のように、200を超える銘柄を日々監視し、生来の浮気性からあちらにフラリ、こちらにフラリとしているやり方もあるでしょうが、そうでない彼のようなやり方も当然にある訳ですね。

いわば彼のやり方は、あえて抽象的に言うと、「解脱して勝つトレーディング」とも言えそうです。欲や思惑、儚い期待を排除するための解脱ですね。この解脱がある領域にまで理性的に研ぎ澄まされた時、相場のトレンドが見えてくるのかも知れません。

一旦、トレンドに乗っかってしまえば、欲得なしに、トレンドの赴くままに上空で浮遊していれば良いだけですね。後は、浮遊状態に異変を感じた時に降りるだけです。その時、まだ地上との高度差は数百メートルはあるのでしょう。

思えば、筆者がゴールドを買い始めたのが2004年7月からでした。定額積立に加えて、グラム1500円以下ならスポットで集中的に買いました。それは、種々の経済情勢への判断から、何となくゴールドを持っていたくなってのことでした。

今、改めてゴールドの月足を見てみると、ちょうどその頃は1996年初頭につけた値段を抜きにかかるタイミングでした。これは単に偶然の結果です。理性的な判断の結果ではありません。

ここまで長期のトレンドの判断はなかなか持てませんが、株の短期売買においても、このトレンドに乗るということを、目先の欲得を自制しながら、何としてもモノにしたいと改めて感じております。
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市場概況(3.13.09)

2009-03-14 07:19:17 | 市場概況
テクニカル用語の簡単解説  赤字部は14日朝の更新

3月13日(金)の市場概況です。

◆日経先物:7510円(+420円)、OSC53%(+7%)3月9日の40%から切り返し中。
◆日経平均:7569円(+371円)、OSC54%(+5%)3月10日の42%から切り返し中。
◆日経平均指数値倍率:132(-7)数字が減るほど上昇傾向を示します。この7ポイント安というのは上げすぎ。
◆TOPIX:724.3(+23.4) OSC46%(+3%)3月10日の41%から切り返しに転じる。
◆マザーズ指数:285.43(+5.47)、OSC44%(+3%)3月9日の32%から切り返しに転じる。
◆ヘラクレス指数:436.05(+8.05)OSC44%(-1%)3月9日の34%から切り返し中。
◆国債先物:138.67円(-25銭)OSC47%(+2%)3月9日の31%に収斂中。伸び悩み継続。
◆ドル・円:98.04円(34銭の円安)OSC59%(-2%)3月10日の65%に向けて再上昇開始か?更新
◆日経先物イーブニングセッション:7610円(大証終値比+100円)
◆シカゴ日経先物:7605円(円建て、大証終値比+95円)更新
◆NYダウ:7224ドル(+54ドル)OSC56%(+3%)2月9日の58%以来の高さ。そろそろ調整か。更新

後場は結局だれることなく、ほぼ高値圏で終了しました。日経平均はSQ値も25日移動平均線も共にクリヤー。これで来週の相場が楽しみです。NYが転ければ、あえなく転落するのでしょうが、それはそれで致し方ありません。

そのNYダウはOSCを+8%も伸ばして絶好調ですから、今晩、不測の事態がない限り多少とも上げて終わる公算が高まっております。

注目すべき経済指標は、1月の貿易収支とミシガン大学消費者信頼感指数の3月度です。昨日の小売売上高の予想以上の戻しで、ミシガン大学の指数が上昇するようなことになれば、これは好材料となります。

後場は、9684スクエニや7518ネットワンで薄利を重ね苦労しましたが、前場に売ってしまった2059ユニチャペットをそのまま持っておれば良かったということになりますが、これは結果論。この株は押されたところからの反転に乗るのがいい結果を生むようですね。

これもそれぞれの個別株の特性ですから、ある程度覚えておく必要があります。

持ち越しはなしです。心機一転、来週も着実に利益を積み上げていきたいと思っております。

-------14日朝の更新-------

NYダウは続伸。GMが上昇率トップになったことに現れているように、これまでの売られすぎからの買い戻しの流れが続いているようです。

ところで、中国の温家宝首相が、米国債保有に不安を抱いていると表明し、長期債が売られております。この発言は、じわりと米国債の今後の入札に効いてきますね。それに対して、日本が何らメッセージを発しないのは、世界に向けてアメリカ様と心中しますよと言っているのと同じです。国民が巻き添えを食うのは真っ平です。少しは中国を見習って欲しいものですね。

昨日景気のよいラッパを吹いたバンカメのルイスCEOに退陣要求です。メリルを買収してリスクを取りすぎたというもの。これはHBOSを買収して実質国有化になったイギリスのロイズも同様ですね。

あの段階で、果敢に千載一遇のチャンスとばかりに買収した、その判断が今のところは裏目に出ているのです。やはりこの世界も、買収される側は実態をきちんと先方へは報告しないようです。

結婚する際の身元調査と同じですね。探偵がやれることはたかが知れております。公表された資料を見ることと、近所の口が達者で軽いおばちゃんを掴まえて、それとなく日頃の行いを聞くこと位しか出来ません。

今回は、両社の内情を知っているおばちゃんがいなかったことが災いしたのでしょう。いや、もっと手が込んでいて、おばちゃんを偽装した人間が社内にメリルやHBOSと通じた隠れスパイとしていて、好都合な情報を流したに違いありません。

世の中、裸の王様がいかに多いことか。その点、筆者などいつも裸で、おばちゃんに代わって隣の犬ぐらいしかいませんから、身元調査をするまでもなく、隣の犬のあの脳天気な顔写真を見られただけで一発で不合格でしょう。そこを拾ってくれた家人には(理不尽に罵倒されても、隣の犬を見習って何喰わぬ顔をして)感謝せねば。。。
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