【掲載日:平成22年6月18日】
直に逢ひて 見てばのみこそ たまきはる
命に向ふ 我が恋止まめ
〈さてはて 「下はならず」と言われ
上を求めても 性に合わず
同等通いの道しかないか〉
さ夜中に 友呼ぶ千鳥 物思ふと わびをる時に 鳴きつつもとな
《物思い してる夜中に やかましに 千鳥鳴きよる よけ沈むがな》
―大神女郎―〈巻四・六一八〉
霍公鳥 鳴きし登時 君が家に 行けと追ひしは 至りけむかも
《鳴いたんで 思いを乗せて ホトトギス そっち行かした 着いたやろうか》
―大神女郎―〈巻八・一五〇五〉
をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかも
《佐紀沢に 咲いてるカツミ〔あやめ〕 かつてうち こんな思いは したことないわ》
―中臣女郎―〈巻四・六七五〉
春日山 朝ゐる雲の おほほしく 知らぬ人にも 恋ふるものかも
《山懸かる 朝雲みたい 気ィ晴れん なんであんたに 惚れたんやろか》
―中臣女郎―〈巻四・六七七〉
直に逢ひて 見てばのみこそ たまきはる 命に向ふ 我が恋止まめ
《命かけ 惚れた私の 恋ごころ 直に逢わんと 治まらへんわ》
―中臣女郎―〈巻四・六七八〉
否と言はば 強ひめや我が背 菅の根の 思ひ乱れて 恋ひつつもあらむ
《逢いたない 言うんやったら 無理言わん じっと我慢で 恋忍んでる》
―中臣女郎―〈巻四・六七九〉
海の底 奥を深めて 我が思へる 君には逢はむ 年は経ぬとも
《胸の奥 深うに思う あんたはん 時間掛けても きっと逢うたる》
―中臣女郎―〈巻四・六七六〉
これぞとの女 妻問い
重ねての 通い
やがての 別れ
家持は 気付いていなかった
恋は 互いの心通いあってこそ
相手品定めの前に 改めるは己真実の無さ
心の隅に 恋は遊びの意識
天平十年〈738〉家持は内舎人に任じられた
宮中参内の とある日
家持の胸に 衝撃が走る
ももしきの 大宮人は 多かれど 情に乗りて 思ほゆる妹
《宮仕え する女官さん 多いけども 心懸かるん あんただけやで》
上辺なき 妹にもあるかも かくばかり 人の情を 尽さく思へば
《このわしに こんな思いを させるやて 罪な人やで あんた云う人》
―大伴家持―〈巻四・六九一~二〉
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