令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家持・青春編(一)(6)わが恋やまめ

2010年08月13日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年6月18日】

ただに逢ひて 見てばのみこそ たまきはる
               いのちに向ふ 我が恋まめ



〈さてはて  「下はならず」と言われ
 上を求めても しょうわず
 同等通いの道しかないか〉 

夜中よなかに 友呼ぶ千鳥ちどり 物思ふと わびをる時に 鳴きつつもとな
《物思い  してる夜中に やかましに 千鳥鳴きよる よけ沈むがな》
                         ―大神女郎おおみわのいらつめ―〈巻四・六一八〉

霍公鳥ほととぎす 鳴きし登時すなはち 君がいへに 行けと追ひしは 至りけむかも
《鳴いたんで  思いを乗せて ホトトギス そっち行かした 着いたやろうか》
                         ―大神女郎おおみわのいらつめ―〈巻八・一五〇五〉

をみなへし 佐紀沢さきさわふる 花かつみ かつても知らぬ 恋もするかも
《佐紀沢に  咲いてるカツミ〔あやめ〕 かつてうち こんな思いは したことないわ》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七五〉

春日山かすがやま 朝ゐる雲の おほほしく 知らぬ人にも 恋ふるものかも
《山かる 朝雲みたい 気ィ晴れん なんであんたに 惚れたんやろか》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七七〉

ただに逢ひて 見てばのみこそ たまきはる いのちに向ふ 我が恋まめ
《命かけ 惚れた私の 恋ごころ じかに逢わんと おさまらへんわ》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七八〉

いなと言はば ひめや我が背 すがの根の 思ひ乱れて 恋ひつつもあらむ
《逢いたない  言うんやったら 無理言わん じっと我慢で 恋忍んでる》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七九〉

わたの底 奥を深めて 我が思へる 君には逢はむ 年はぬとも
《胸の奥 深うに思う あんたはん 時間掛けても きっとうたる》
                         ―中臣女郎なかとみのいらつめ―〈巻四・六七六〉

これぞとの女  妻問い
重ねての  通い
やがての  別れ

家持は  気付いていなかった
恋は 互いの心がよいあってこそ
相手品定めの前に 改めるはおのれ真実まことの無さ
心の隅に  恋は遊びの意識

天平十年〈738〉家持は内舎人うちとねりに任じられた
宮中参内さんだいの とある日
家持の胸に  衝撃が走る

ももしきの 大宮人は 多かれど こころに乗りて 思ほゆるいも
《宮仕え する女官さん いけども 心懸かるん あんただけやで》

上辺うはへなき 妹にもあるかも かくばかり 人のこころを 尽さく思へば
《このわしに  こんな思いを させるやて 罪な人やで あんた云う人》
                         ―大伴家持 ―〈巻四・六九一~二〉


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