令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(25)筑紫や何処(いづち)

2009年10月17日 | 旅人編
【掲載日:平成21年12月11日】

ここにありて 筑紫つくし何処いづち 白雲しらくも
              たなびく山の  方にしあるらし


帰京後の  ひと月余り
旅人たびとは 旅の疲れも見せず 
しかるべき方面への 挨拶に 奔走していた
公人としての役目  
実直この上ない  旅人には 
ないがしろにできない 日々であった

私人としての  落着きを得た 旅人
今度は  友との懇親に 忙しい
〔そうそう  礼をせねば
 帰京の折 難波浜での歓待の高安王たかやすのおおきみ
 王は  この度 昇進の栄を得たにより 
 新しい束帯服そくたいふくを 送るとしよう〕
わがころも 人になせそ 網引あびきする 難波なには壮士をとこの 手には触るとも
《この衣 漁師まがいに 着さすなよ 漁師まがいの 難波壮士あんたえが》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五七七〕 

〔大宰府に  残った友からの便りが 来ておる
 みな  それぞれに
 寂しく思ってくれておるようじゃ〕  
今よりは やまみちは 不楽さぶしけむ わがかよはむと 思ひしものを
《大宰府へ  通う山道 楽し無い 今までずっと 楽しかったに》
                         ―葛井大成ふぢゐのおほなり―〔巻四・五七六〕
天地あめつちと 共に久しく 住まはむと 思ひてありし いへの庭はも
《いつまでも  いついつまでも 住みたいと 思うてたんやで あんたの庭に》
                         ―大伴三依おおとものみより―〔巻四・五七八〕
〔わしも  人を送った後 寂しい思いをした
 あれは  大宰府在任の頃
 丹比県守たじひのあがたもりとの別れであった〕
君がため みしまちざけ やすの野に ひとりや飲まむ ともしにして
《友無しで  独り飲むんか この酒を あんたのために 造ったいうに》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五五五〕 

〔おお これは 満誓まんせい殿からの便り
 忙しさにかまけてしもうた  返事をせねば〕
まそ鏡 見かぬ君に おくれてや あしたゆうへに さびつつらむ
《気心の 知れたあんたに 置いてかれ さみしいこっちゃ 朝夕ずっと》
ぬばたまの くろかみかはり 白髪しらけても 痛き恋には ふ時ありけり
《黒い髪 しろなるほどに 年齢とし取って こんな苦しい 恋するやろか〔相手男やのに〕》
                         ―沙弥満誓さみまんせい―〔巻四・五七二、五七三〕

ここにありて 筑紫つくし何処いづち 白雲しらくもの たなびく山の 方にしあるらし
《都から 筑紫何処どこやと 見てみるが 雲の棚引く 遥かかなたや》
くさの 入江に求食あさる あしたづの あなたづたづし ともしにして
《毎日を  心もとのう 暮らしてる お前さん言う 友置いてきて》
                         ―大伴旅人―〔巻四・五七四、五七五〕 
人恋しい  旅人がいた



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