■垂仁天皇 危難を逃れ
崇神天皇 そのお子の
伊久米伊理日子命 即位して
垂仁天皇 お成りなる
皇后となりし 沙本比売の
兄の沙本比古 沙本比売に問う
「何れ愛しや 夫兄」
「兄愛しや」と 沙本比売が
「されば二人で 天下をば
小刀託すに 寝首を」と
皇后の膝を 枕して
眠る垂仁天皇 首元に
光る刃が 二度三度
沙本比売は胸湧く 愛しさに
握る柄元 手が震え
落ちる涙は 垂仁天皇の頬
「夢を見たぞよ 顔に雨
錦の小蛇 我が首に」
謀り聞きて 垂仁天皇
軍を興して 攻め掛かる
守るに稲城 隠れ居る
沙本比古哀れ 思いしか
沙本比売抜けて 稲城中へ
長引く陣に 沙本比売は
身籠もるお子を お産みなる
産まれたる子を 陣の外
「皇子と思さば お育てを」
言うに垂仁天皇 沙本比売恋いて
母子共々 拉致をとの
策を講じて 「母出せ」と
見抜く沙本比売 髪を剃り
鬘となして 腕輪・紐
衣服腐らせて 城の外
得たりと兵士 髪掴み
紐・衣服捕るに 空腕
悲嘆垂仁天皇 「子に名を」と
叫ぶに応え 声届く
「戦い放火中 生まれしに
本牟智別王 名付けませ」
火=「ほ」→ほむちわけ)
やがての下知の 総攻めに
火は稲城覆い 兄妹
共の出立 黄泉世界
――――――――――
本牟智別王 育ちしも
言葉は無しに 顎髭伸びる
「ああ」と初めて 発せしは
飛ぶ白鳥を 聞きし時
「治る兆しの 鳥なれば
捕えお側に 置くべし」と
白鳥後を 追い廻る
紀伊国播磨国 因幡国
丹波国但馬国に 近江国
美濃国尾張国 信濃国
越国に捕うも 声は無し
甲斐なし気落ち 垂仁天皇に
「我宮の修復 為すなれば
願叶える」と夢お告げ
何処神やと 占えば
出雲大神 祟りとや
夢告げ真実 試しにと
鷺よ池落ち 死ぬべしと
死して忽ち 生き戻れ
葉広白樫の木 枯れ果てよ
枯れて直ぐさま 繁れよと
鷺の生き死に 白樫の木の
枯れて繁るを 目にしたは
真実試しの 顕れと
出雲向けての 旅が発つ
本牟智別王連れ 出雲着き
出雲大神 参拝み為し
帰参仮宮 お膳時
ふと立ち上がる 本牟智別王
「あの青葉山 模造品かや
大国主神祀る 祭祀場か」
突如お声に 喜びて
早馬を都へ 駆け遣りて
出雲大神 霊験を
伝え申すに 垂仁天皇
再度の使者 出雲遣り
宮殿高く 修造りなす
――――――――――
常世国成育る 香りの実
垂仁天皇 耳なされ
求め見たしと 仰せなる
多遅摩毛理をば 遣わすに
行きて長きに 戻らずて
日月が経ちて 年過ぎる
苦労苦心に 多遅摩毛理
さぞやお待ちと 持ち帰る
冠と連なる 八つの実と
串と連なる 八つの実を
献げ奉らん 思いしに
悔しきことに 垂仁天皇ぞ亡き
「垂仁天皇これぞ 時じくの
(季節変わらずの)
香の木の実ぞ 橘ぞ」
叫び泣き伏す 多遅摩毛理
泣き伏し死にき 多遅摩毛理
崇神天皇 そのお子の
伊久米伊理日子命 即位して
垂仁天皇 お成りなる
皇后となりし 沙本比売の
兄の沙本比古 沙本比売に問う
「何れ愛しや 夫兄」
「兄愛しや」と 沙本比売が
「されば二人で 天下をば
小刀託すに 寝首を」と
皇后の膝を 枕して
眠る垂仁天皇 首元に
光る刃が 二度三度
沙本比売は胸湧く 愛しさに
握る柄元 手が震え
落ちる涙は 垂仁天皇の頬
「夢を見たぞよ 顔に雨
錦の小蛇 我が首に」
謀り聞きて 垂仁天皇
軍を興して 攻め掛かる
守るに稲城 隠れ居る
沙本比古哀れ 思いしか
沙本比売抜けて 稲城中へ
長引く陣に 沙本比売は
身籠もるお子を お産みなる
産まれたる子を 陣の外
「皇子と思さば お育てを」
言うに垂仁天皇 沙本比売恋いて
母子共々 拉致をとの
策を講じて 「母出せ」と
見抜く沙本比売 髪を剃り
鬘となして 腕輪・紐
衣服腐らせて 城の外
得たりと兵士 髪掴み
紐・衣服捕るに 空腕
悲嘆垂仁天皇 「子に名を」と
叫ぶに応え 声届く
「戦い放火中 生まれしに
本牟智別王 名付けませ」
火=「ほ」→ほむちわけ)
やがての下知の 総攻めに
火は稲城覆い 兄妹
共の出立 黄泉世界
――――――――――
本牟智別王 育ちしも
言葉は無しに 顎髭伸びる
「ああ」と初めて 発せしは
飛ぶ白鳥を 聞きし時
「治る兆しの 鳥なれば
捕えお側に 置くべし」と
白鳥後を 追い廻る
紀伊国播磨国 因幡国
丹波国但馬国に 近江国
美濃国尾張国 信濃国
越国に捕うも 声は無し
甲斐なし気落ち 垂仁天皇に
「我宮の修復 為すなれば
願叶える」と夢お告げ
何処神やと 占えば
出雲大神 祟りとや
夢告げ真実 試しにと
鷺よ池落ち 死ぬべしと
死して忽ち 生き戻れ
葉広白樫の木 枯れ果てよ
枯れて直ぐさま 繁れよと
鷺の生き死に 白樫の木の
枯れて繁るを 目にしたは
真実試しの 顕れと
出雲向けての 旅が発つ
本牟智別王連れ 出雲着き
出雲大神 参拝み為し
帰参仮宮 お膳時
ふと立ち上がる 本牟智別王
「あの青葉山 模造品かや
大国主神祀る 祭祀場か」
突如お声に 喜びて
早馬を都へ 駆け遣りて
出雲大神 霊験を
伝え申すに 垂仁天皇
再度の使者 出雲遣り
宮殿高く 修造りなす
――――――――――
常世国成育る 香りの実
垂仁天皇 耳なされ
求め見たしと 仰せなる
多遅摩毛理をば 遣わすに
行きて長きに 戻らずて
日月が経ちて 年過ぎる
苦労苦心に 多遅摩毛理
さぞやお待ちと 持ち帰る
冠と連なる 八つの実と
串と連なる 八つの実を
献げ奉らん 思いしに
悔しきことに 垂仁天皇ぞ亡き
「垂仁天皇これぞ 時じくの
(季節変わらずの)
香の木の実ぞ 橘ぞ」
叫び泣き伏す 多遅摩毛理
泣き伏し死にき 多遅摩毛理