【掲載日:平成21年8月13日】
妻もあらば 採みてたげまし 佐美の山
野の上のうはぎ 過ぎにけらずや
【沙弥島ナカンダの浜】

人麻呂を乗せた 赴任の船
穏やかな 内海を行く
玉藻よし 讃岐の国は
国柄か 見れど飽かぬ 神柄か ここだ貴き
《讃岐の国は ええ国や 見飽けへんほど ええ国や》
天地 日月とともに 満りゆかむ 神の御面と
《日に日に良うなる 別嬪さん》
継ぎ来たる 中の水門ゆ 船浮けて わが漕ぎ来れば 時つ風 雲居に吹くに
《そこの湊を 出た船は 突如吹き出す 風に会い》
沖見れば とゐ浪立ち 辺見れば 白浪さわく 鯨取り 海を恐み
《沖は大波 岸も白波 怖い恐ろし 荒れる海》
行く船の 楫引き折りて をちこちの 島は多けど 名くはし 狭岑の島の 荒磯面に 廬りて見れば
《船梶止めて さみね島 難避け船を 寄せたなら》
浪の音の 繁き浜辺を 敷栲の 枕になして 荒床に 自伏す君が
《波音高い 浜の陰 一人の人が 死んでいる》
家知らば 行きても告げむ 妻知らば 来も問はましを 玉桙の 道だに知らず
《知らしたいけど 家分からん どこの誰やら 知らん人》
おほほしく 待ちか恋ふらむ 愛しき妻らは
《奥さんさぞかし 待ってるやろに》
―柿本人麻呂―(巻二・二二〇)
妻もあらば 採みてたげまし 佐美の山 野の上のうはぎ 過ぎにけらずや
《妻居ると 摘んで供えて やったやろ 生えてるヨメナ 薹立ってもた》
―柿本人麻呂―(巻二・二二一)
沖つ波 来よる荒磯 敷栲の 枕と枕きて 寝せる君かも
《波寄せる 寂しい磯に 横なって 死んでる人は どこの誰やろ》
―柿本人麻呂―(巻二・二二二)
船旅での遭難
供えの花は
死人への 手向けか
明日は 我が身への 祈りなのか

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