令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂編(3)浦の浜木綿

2009年08月15日 | 人麻呂編
【掲載日:平成21年8月5日】

み熊野の 浦の浜木綿はまゆふ 百重ももへなす
          心はへど ただはぬかも

【孔島の野生浜木綿】


(なんとした ことか) 
人麻呂は 苛立いらだっていた
文机ふづくえをまえに 小半時こはんとき
(ええい 言葉が むすべぬ
 天皇すめらみことの 寿ことほぎ歌 
 身罷みまかびとへの き歌
 次々と 口をついて 出るものを 
 女人おみなへの 思い歌 それも わが思い歌 となると 結べぬ) 
人麻呂は 仰向あおむだおれに 天井を見る
目を つぶる 
閉じた目に 軽郎女かるのいらつめ

「抜くのじゃ おのが身から 思いを抜くのじゃ」
もう一人の 人麻呂が ささやきかける

み熊野の 浦の浜木綿はまゆふ 百重ももへなす 心はへど ただはぬかも
                         ―柿本人麻呂―(巻四・四九六)
浜木綿はまゆうの 葉いっぱいに 茂ってる 思いもそうやが よう逢い行かん》 
(出来たぞ 出来た 
 われにも あらぬ うぶな歌じゃ)

いにしへに ありけむ人も わがごとか いもに恋ひつつ ねかてずけむ
                         ―柿本人麻呂―(巻四・四九七)
おんなじか 昔の人も ワシみたい 焦がれ恋して 寝られへんのは》 
(なんと まあ 恥ずかしげもなく) 

(この歌を 贈るとして 返し歌は どうかな) 
今のみの 行事わざにはあらず いにしへの 人そまさりて にさへきし
                         ―柿本人麻呂―(巻四・四九八)
《今だけの こととはちごて 昔かて 恋して泣いた 今よりもっと》
百重ももへにも 来及きしかぬかもと 思へかも 君が使つかひの 見れどかざらむ
                        ―柿本人麻呂―(巻四・四九九)
何遍なんべんも 来て欲し思う あんたから 使い来るたび 見るたびずっと》

(自分で 返し歌まで むか)
人麻呂のほおは 緩(ゆる)んでいる

喪の明けやらない 人麻呂に 恋のやっこが 取り付いた




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