【掲載日:平成24年6月26日】
玉垂の 小簾の間通し ひとり居て 見る験なき 夕月夜かも
満ちは嬉しや 欠けるは悲し
遅う出る月 待つのは焦れる
雲霧隠す 恨めし限り
暫し顔出せ あの児を偲ぶ
山の端に いさよふ月を 出でむかと 待ちつつ居るに 夜ぞ更けにける
《山陰に 隠れとる月 何時出るか 待ってるうちに 夜更けて仕舞た》
―作者未詳―(巻七・一〇七一)
海原の 道遠みかも 月読の 光少き 夜は更けにつつ
《海の道 遠おに辿って 来るのんで 夜更けなったに 月ぼんやりや》
―作者未詳―(巻七・一〇七五)
真澄鏡 照るべき月を 白栲の 雲か隠せる 天つ霧かも
《良え月が 照るはずやのに 見えへんの 雲が隠すか 霧隠すんか》
―作者未詳―(巻七・一〇七九)
霜曇り 為とにかあるらむ 久方の 夜渡る月の 見えなく思へば
《渡る月 良う見えへんの なんでやろ 霜降る空が 曇るからかな》
―作者未詳―(巻七・一〇八三)
山の端に いさよふ月を何時とかも 我は待ち居らむ 夜は更けにつつ
《山陰に 隠れとる月 何時出るか わし待ってるに 更けて来たがな》
―作者未詳―(巻七・一〇八四)
玉垂の 小簾の間通し ひとり居て 見る験なき 夕月夜かも
《吊下げた 簾通して 月見ても 一人見るのん 甲斐あらへんな》
―作者未詳―(巻七・一〇七三)
春日山 おして照らせる この月は 妹が庭にも 清けくありけり
《春日山 広ろ照らす月 清らかや あの児の庭の 月そやったな》
―作者未詳―(巻七・一〇七四)
この月の 此処に来れば 今とかも 妹が出で立ち 待ちつつあるらむ
《月こんな 高こなったんで もう来ると あの児このわし 待っとんやろな》
―作者未詳―(巻七・一〇七八)
妹があたり 我が袖振らむ 木の間より 出で来る月に 雲なたなびき
《あの児の方 向こて袖振ろ 思うんで 木陰出る月 雲懸かりなや》
―作者未詳―(巻七・一〇八五)
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