【掲載日:平成24年4月13日】
敷栲の 枕は人に 言問へや その枕には 苔生しにたり
複数歌を 掛け合わせ 形を作る 問答歌
ここに挙げたる 問答は 男女の 心機微
御殿仕えの 男と女
気心知れた 仲かと見える
皇祖の 神の御門を 畏みと 侍従ふ時に 逢へる君かも
《天皇の 御殿仕えを してる時 何であんたは 口説くんやねん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇八)
真澄鏡 見とも言はめや 玉かぎる 石垣淵の 隠りたる妻
《靡いても 誰にも言わん 良えやんか 固に言わんと こっち来たどや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五〇九)
恋に夢中の 男を諭し
女待ちつつ その気を煽る
赤駒が 足掻速けば 雲居にも 隠り行かむぞ 袖枕け我妹
《わしの馬 脚速いんや すっ飛ばし すぐ着くよって 共寝支度しとき》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一〇)
隠口の 豊泊瀬道は 常滑の 恐き道ぞ 恋ふらくはゆめ
《泊瀬道 つるつる滑る 怖い道 恋呆けしたら 怪我するんやで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一一)
味酒の 三諸の山に 立つ月の 見が欲し君が 馬の音ぞする
《三諸山 出るん待つ月 あんたはん 馬の脚音 聞こえてきたで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一二)
一緒居りたい このままずっと
雨よ降れ降れ うち味方して
雷神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
《雷が 鳴って曇って 来たみたい あんた居て欲し 雨降らんかな》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一三)
雷神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば
《雷が 鳴って雨なぞ 降らんでも わしまだ居るで お前が良なら》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一四)
軽口交わす 二人の仲は
誰も入れん お熱い限り
敷栲の 枕響みて 夜も寝ず 思ふ人には 後逢ふものと
《寝られんな 動き物言う この枕 お前に後で 逢える言うたで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一五)
敷栲の 枕は人に 言問へや その枕には 苔生しにたり
《その枕 人に物言う 道理無いで 見てみ枕に 苔生えとるで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二五一六)
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