【掲載日:平成23年8月23日】
大船に 真楫繁貫き
この我子を 唐国へ遣る 斎へ神たち
天平勝宝三年(751)九月
家持 帰京
都は 遣唐使送りの話題に 湧いていた
昨 二年九月任命
大使 藤原北家房前の子 藤原清河
【春日野で行われた 入唐祈願祭礼】
大船に 真楫繁貫き この我子を 唐国へ遣る 斎へ神たち
《大船に 楫多数付けて この子をば 唐へ遣わす 守らせ給え》
―光明皇后―(巻十九・四二四〇)
春日野に 斎く三諸の 梅の花栄きてあり待て 還り来るまで
《春日野で 祭る三諸の 梅花よ 咲き栄え待て わし帰るまで》
―藤原清河―(巻十九・四二四一)
【藤原仲麻呂邸 入唐使等へ餞宴】
天雲の 去き還りなむ もの故に 思ひぞ我がする 別れ悲しみ
《去く雲も また湧き戻る そや言うに 別れ悲して わし沈んどる》
―藤原仲麻呂―(巻十九・四二四二)
住吉に 斎く祝が 神言と 行くとも来とも 船は早けむ
《住吉の 神のお告げが 言うてるで 往きも帰りも 船足軽い》
―丹比土作―(巻十九・四二四三)
あらたまの 年の緒長く 我が思へる 児らに恋ふべき 月近づきぬ
《年月の 長うにわしが 愛しんだ 妻との別れ 近こなって来た》
―藤原清河―(巻十九・四二四四)
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【天平五年(733)第九次遣唐使 派遣時の歌】
そらみつ 大和の国 青丹よし 平城の都ゆ 押し照る 難波に下り 住吉の 御津に船乗り 直渡り 日の入る国に 遣はさゆ 我が背の君を
《大和国 平城都離れ 難波来て 住吉浜で 船に乗り 海を進んで 日ぃ沈む 国への遣い あんたをば》
懸けまくの ゆゆし畏き 住吉の 我が大御神 船の舳に 領き坐し 船艫に み立いまして さし寄らむ 磯の崎々 漕ぎ泊てむ 泊泊に 荒き風 波に遇はせず 平けく 率て帰りませ もとの国家に
《霊験まこと 灼かな 住吉神よ 頼みます 船の舳先に 座られて 船の艫先 お立ちなり 寄る崎々の 磯湊 荒い波風 遇わさんと 無事戻してや もとの国まで》
―作者未詳―(巻十九・四二四五)
沖つ波 辺波な越しそ 君が船 漕ぎ帰り来て 津に泊つるまで
《沖と岸 どっちの波も 立たんとき 船漕ぎ帰り 港着くまで》
―作者未詳―(巻十九・四二四六)
天雲の 退きへの極み 我が思へる 君に別れむ 日近くなりぬ
《雲の果て 限り無慕う 母上に お別れする日 近こなりました》
―阿倍老人―(巻十九・四二四七)
これらの歌 越中目高安種麻呂の手で 家持に