【掲載日:平成23年5月6日】
・・・海行かば 水浸く屍 山行かば 草生す屍
大君の 辺にこそ死なめ・・・
【「小田なる山に」続き】
・・・・・・此処をしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて
大伴の 遠つ神祖の その名をば 大来目主と 負ひ持ちて 仕へし官
《・・・なんと尊い 有難い そこで思うで 大伴は
遠い祖先を 大来米の 主と云う名を 自負しつつ 仕え来たった 兵で》
海行かば 水浸く屍 山行かば 草生す屍
大君の 辺にこそ死なめ 顧見は せじと言立て
《「海を征ったら 水に浸き 山を征ったら 草の中
屍なろと 大君の 足元死ぬぞ 後悔は せん」と宣言き》
大夫の 清きその名を 古よ 今の現に 流さへる 祖の子等ぞ
大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず
大君に 奉仕ふものと 言ひ継げる 言の官ぞ
《大夫の 由緒ある名を 昔から 今に伝えた 末裔ぞ
大伴佐伯 氏の子は ご先祖様の 言葉通り 氏の名前を 絶やさんと
天皇に お仕えし 奉仕一途の 家柄と 言い継がれ行く 氏族ぞよ》
梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き
朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと
《梓の弓を 手に持って 剣の大刀を 腰に佩き
朝に守護して 夜は夜で 警護固めて 大君の 御門守るは わし以外 人は居らんと》
いや立て 思ひし増る 大君の 御言の幸の 聞けば貴み
《奮い立ち 昂ぶりおるぞ 大君の 寿ぎ言葉 貴に聞いて》
―大伴家持―(巻十八・四〇九四)
大夫の 心思ほゆ 大君の 御言の幸を 聞けば貴み
《大夫の 心沸々 湧いてきた 大君尊語 貴に聞いて》
―大伴家持―(巻十八・四〇九五)
大伴の 遠つ神祖の 奥津城は 著く標立て 人の知るべく
《大伴の 遠い祖先の 存在を 立派に示せ 人知れる様に》
―大伴家持―(巻十八・四〇九六)
天皇の 御代栄えむと 東なる 陸奥山に 黄金花咲く
《天皇の 御代の栄える 兆候やな 東国山で 黄金出たんは》
―大伴家持―(巻十八・四〇九七)
【五月十二日】