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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(二)(29)馬暫(しま)し停(と)め

2011年05月10日 | 家待・越中編(二)歌心湧出
【掲載日:平成23年8月2日】

渋谿しぶたにを 指して我が
           この浜に 月夜つくよきてむ 馬しま



部下からの たっての望みにこた
再度の みずうみへの遊覧
 花は 前にも増して 房をたわわにし
はなむらさきを 水に映している

藤波ふぢなみの 影なす海の 底清み しづいしをも たまとぞ我が見る
藤房ふじの影 うつしてる水 んどって 底にある石 たま見える》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四一九九)

多胡たこの浦の 底さへにほふ 藤波ふぢなみを 插頭かざして行かむ 見ぬ人のため
多胡たこの浦 底にる 藤房ふじふさを 髪挿かみさし帰えろ られん人に》
                         ―内蔵縄麻呂くらのつなまろ―(巻十九・四二〇〇)

いささかに 思ひてしを 多胡たこの浦に 咲ける藤見て 一夜ひとよぬべし
《まあまかと おもて見に来た 多胡たこの浦 咲く藤見たら 泊りとなった》
                         ―久米広縄くめのひろつな―(巻十九・四二〇一)

藤波ふぢなみを 仮廬かりほに作り 浦廻うらみする 人とは知らに 海人あまとか見らむ
《藤波を 船屋根やね乗せ浦巡めぐり してるのに 見たら漁師と 思うんちゃうか》
                         ―久米継麻呂くめのつぎまろ―(巻十九・四二〇二)

家に行きて 何を語らむ あしひきの 山霍公鳥ほととぎす 一声ひとこゑも鳴け
《帰ったら 土産みやげ話に するのんで 鳴けほととぎす せめて一声》
                         ―久米広縄くめのひろつな―(巻十九・四二〇三)

とある水辺みずべ
巨大 は葉を持つ ほほがしわを見つけ
驚きとともに 歌心もよお
それぞれ に 詠う

我が背子せこが ささげて持てる ほほがしは あたかも似るか 青ききぬがさ
守殿あんたはん ささげ持ってる ほほがしわ ほんにそっくり 青衣笠きぬがさに》
                         ―恵行えぎょう―(巻十九・四二〇四)
皇神祖すめるきの とほ御代みよ御代みよは いき折り 飲みきといふぞ このほほがしは
いにしへの 神代かみよ時代に 折り畳み 酒飲んだう このほほがしわ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二〇五)

初夏 の日が 暮れていく
 が 頬に心地よい
馬を駆る先 渋谿しぶたに
左手 満月間近まぢかの月が昇り
ありの海に 月影揺れる

渋谿しぶたにを 指して我がく この浜に 月夜つくよきてむ 馬しま
渋谿しぶたにを 目指めざし行く浜 月えで う味わおや 一寸ちょっとめ》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻十九・四二〇六)
                                   【四月十二日】