【掲載日:平成23年2月1日】
朝日さし 背向に見ゆる
神ながら 御名に帯ばせる
白雲の 千重を押し別け
天そそり 高き立山・・・
〔なになに 今度は 立山か
さすが 守殿
目の付けどころ とても敵わぬ
しかし 引く訳には まいらぬ〕
朝日さし 背向に見ゆる 神ながら 御名に帯ばせる
白雲の 千重を押し別け 天そそり 高き立山
冬夏と 分くことも無く 白栲に 雪は降り置きて 古ゆ あり来にければ
《朝来たら 朝日背にして 輝いて 神山言われるん 尤もで
白雲押し分けて 大空に そそり立つ山 立山は
冬夏問わず 真っ白に 雪降り積もり 昔から 此処に控えて おわします》
こごしかも 巌の神さび たまきはる 幾代経にけむ 立ちて居て 見れどもあやし
峰高み 谷を深みと 落ち激つ 清き河内に 朝去らず 霧立ちわたり 夕されば 雲居たなびき
《岩険しいて 神々して 何千年も 経ったやろ 何処から見ても 有難い
峰は高うて 谷深て 激し流れる 川淵に 毎朝の様に 霧立って 夕方なると 雲靡く》
雲居なす 心もしのに 立つ霧の 思ひ過さず 行く水の 音も清けく
万代に 言ひ継ぎ行かむ 川し絶えずは
《雲さながらに 心掛け 霧さながらに 思い込め 清い流れの 水音に
乗せて末長ご 語り継ご 絶えること無う ずううっと》
―大伴池主―〔巻十七・四〇〇三〕
立山に 降り置ける雪の 常夏に 消ずてわたるは 神ながらとそ
《立山に 降り積もる雪 真夏でも ずっと消えんで 神さんやから》
―大伴池主―〔巻十七・四〇〇四〕
落ち激つ 片貝川の 絶えぬ如 今見る人も 止まず通はむ
《流れ落つ 片貝川の 水絶えん 守殿も絶えず 見に来るやろな》
―大伴池主―〔巻十七・四〇〇五〕
【四月二十八日】