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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(20)我(あ)が大黒(おほぐろ)に

2011年02月04日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年2月15日】

鷹はしも 数多あまたあれども 矢形やかたの 大黒おほぐろに・・・

都より戻り かみの任務に戻った 家持
黙りこくり  不機嫌であった
自分でも  判っていた
上京この方  半年
あれほど 心捉えていた 歌がうたえない
都の風が  解けた封を 又もや閉じたのだ

以来半年の  歌なし
晴れぬ心の  泣き面に 蜂が刺す

大君おほきみの とほ朝廷みかどぞ み雪降る 越と名にへる 天離あまざかる ひなにしあれば 山高み 川雄大とほしろし 野を広み 草こそしげ 
《国の役所の この越国こしくには み雪降る越 言われる様に 遠く離れた くにではあるが 山は高いし 川幅広い 野原広うて 草多数よけ茂る》
鮎走る 夏の盛りと 島つ鳥 鵜養うがひともは 行く川の 清き瀬ごとに かがりさし なづさひのぼ 
《鮎が跳ね飛ぶ 夏が来たら 手綱たづなあやつる 鵜飼の漁師 清い瀬毎に かがりいて 流れさお差し 川さかのぼる》
つゆしもの 秋に至れば 野もさはに 鳥多巣すだけりと 大夫ますらをの ともいざなひひて 
しも置く秋の 季節になると 野原いっぱい 鳥つどうので 仲間誘うて 鷹狩りに出る》
鷹はしも 数多あまたあれども 矢形やかたの 大黒おほぐろに 白塗しらぬりの 鈴取り付けて 朝狩りに 五百いほつ鳥立て ゆふ狩りに 千鳥踏み立て 追ふ毎に 許すこと無く 手放たばれも をちもかやすき 
《鷹とうても いろいろあるが 矢形やかたの尾持つ 我が大黒は 銀の鈴付け ばしてみると 朝追い立てた 五百の鳥も 夕にりだす 千もの鳥も 狙いたがわず とめて捕って 放ち舞い降り 自在じざいの鳥や》
これをきて またはあり難し さ並べる 鷹は無けむと こころには 思ひ誇りて ゑまひつつ 渡るあひだ 
《この鷹いて おなじの鷹は 滅多めったに無いと 心で思い ほくそみして 誇っていたが》
たぶれたる しこつ翁の ことだにも 我れには告げず との曇り 雨の降る日を 鷹狩とがりすと 名のみをりて
《間抜けじじいの 大馬鹿者が わしに一言 断りなしに 雲立ち込める 雨降る日ィに 鷹狩り行くと 出かけた挙句あげく
三島野みしまのを 背向そがひに見つつ 二上ふたがみの 山飛び越えて 雲がくり かけにきと 帰り来て しはぶぐれ・・・・・・ 
《「大黒鷲は 三島野みしまのあとに 二上山ふたがみやまの 山飛び越えて 雲に隠れて って仕舞た」と 息せき切って 告げ言う始末・・・》
                              【「彼面此面をてもこのもに」へ続く】

松反まつがへり しひにてあれかも さ山田の をぢがその日に 求め逢はずけむ
《老いぼれの あの山田じじ けたんか その日のうちに よう探せんと》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・四〇一四〕