犬養万葉今昔―犬養孝先生著「万葉の旅」を訪ねて

犬養孝先生名著「万葉の旅」記載の万葉故地309箇所を訪ね、先生が撮られれたのと同じ場所に立った写真撮影を目指す紀行。

■日めくり万葉集Vol・2(156)冬ごもり

2012年11月03日 | 日めくり万葉集
NHK教育TVで「日めくり万葉集」第2弾が始まりました。
平日の午前中ということで 勤めの方は 見る機会に恵まれません。
また 見落とされた方も 居られるやも知れません。
そこで ここで取り上げて 訳し・「みじかものがたり」を 掲載したく思います。
ご覧下さい。

【十一月一日】放映分
冬こもり 春さりれば 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど
山をしげみ 入りても取らず 草ふかみ 取りても見ず
秋山の の葉を見ては 黄葉もみちをば 取りてぞしのふ 青きをば 置きてぞなげく 
そこしうらめし秋山我れは

                            ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻一・一六)


【万葉歌みじかものがたり】秋山 われは》

 は 色めきたった
中大兄皇子なかのおおえのおうじが 額田王ぬかたのおおきみを呼べ と命じたのだ

先刻から 続けられている 「歌競うたきそい」
一方が 春をはやせば
他方が 秋をてる
春組が 花のはなやぎをでれば
秋組が 黄葉もみじいろどりたたええる

集うは 「漢詩」読みの上手じょうずばかり
勝ち負けの いずれは さすがに つけがた
判定は 額田王おおきみの「やまとうた」でとの
皇太子の いきな はからいである

ざわめきの おさまりを待ち 額田王が ゆっくりとうたいだす

冬こもり 春さりれば 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ 咲かざりし 花も咲け・・・
春組は みのうなずきをかさねる

・・・咲けれど 山をしげみ 入りても取らず 草ふかみ 取りても見ず・・・
肩落とす春組 秋組「たり」と手を打つ

秋山の の葉を見ては 黄葉もみちをば 取りてぞしのふ・・・ 
秋組 から「おおっ」の声

・・・青きをば 置きてぞなげく そこしうらめし
一転  天仰ぐ秋組 「やった」と叫ぶ春組

息を詰め 固唾かたずを飲む うたげの場
場のしずまりを 静かに待った 額田王おおきみ
おもむろ 
・・・・・・秋山我れは 
                            ―額田王ぬかたのおおきみ―(巻一・一六)

一瞬静まり返った 宴席は やがて 万雷ばんらいの拍手に包まれた

《冬って仕舞て 春来たら
   鳴けへんかった 鳥も鳴く 
    咲かへんかった 花も咲く 
そや けども
 山茂ってて はいられん
  草深いから 取られへん

秋山はいって 葉ぁ見たら
 黄葉いろづきした葉 え思う
けど青いは も一つや
そこが かなんな

 うう~ん・・・)秋やな うちは》



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